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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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「わあ。凄くかわいい。嬉しいありがとう。あのね、実は私も。はいっ。」


差し出すと、水樹もまた、地方大会で明人に犬のキーホルダーを買ってきていたのだった。


微笑み合い、そして初めてのプレゼントがニアミスで面白くて、何よりその気持ちだけでも明人は十分に幸せだった。離れていたのに、それぞれの場所で、明人も水樹もちゃんとお互いの事を想い合っていたのだ。


「離れていてもこれでいつも一緒だね。」


「あ・・・。あ、あの、長谷川さん・・・。」


「ん?」


「会いたかったです・・・。」


それは、初めて教えた水樹の明人への恋愛感情だった。


どうして自分より先にそんな事言うんだよ。自分の頼りなさに胸が締め付けられるだろ・・・。と明人はたまらなくなって、でも今度はキスをするのではなくて、案外柔らかい水樹を強く抱き締めた。しばらく抱き締め、そして少し経ってから明人は伝えた。


「俺好きだから・・・。」


「えっ・・・。」


水樹の言葉は声にはなってはいなかったけれど、明人から漏れたその言葉に水樹は頷いて、それから明人の背中に手を回し、明人の気持ちに答えるように力強く抱き締め返した。


そして二人は今までの不安を打ち消すように長く抱き締め合った。


ああ大変だ。責任重大だ。だって俺は神様の前で、君に好きだと宣言してしまったんだから。


抱き締めなら、明人は水樹にはわからないように取り乱す。そして恋愛初心者の明人は、今日は ‘好き。’ と伝えるだけで限界だった。


「明日も同じ時間にここで待っていてもいいですか?」


いつになく水樹が積極的なのは、明日が明人の誕生日だと知っての事だった。そして水樹は明人と別れた後買い物をして自宅で明人を想いながらお菓子を作った。


初めて好きと、やっと好きと言ってくれました。嬉しい。幸せ。私も好きです。


とうとう気持ちを通じ合わせられたのだ。でもどちらからもそれ以上の言葉は出なかった。


やっぱり付き合うのは嫌なの?と疑問も抱きつつ、水樹は綺麗にラッピングした。特に他のプレゼントは用意していない。付き合ってもいないのに、そこまでは迷惑と言われるかもしれないからだ。水樹にとっては本当に難しい関係だ。


そして自室にこもると、宝物入れを開けて勇利から貰った入部届けの切れ端を取り出し、小瓶と一緒に鞄に詰めた。

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