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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
16/263

16

勇利の壮大な使命など知らぬ水樹は、第一志望に合格し高専1年A組になっていた。


けれどこの学校は制服着用ではない為、真新しい衣装に包まれ身が引き締まる思い、というような表現は当てはまらない。


ただもちろんスタートする新しい生活に対しては期待と不安、というより期待だらけで誰もが胸はいっぱいなわけで、特に水樹のクラスは最も女子が多く、やはり共学に近いこのクラス特有の雰囲気には皆浮足立ってしまうし華やかさがあった。


そして入学式の翌日、水樹は皆の自己紹介を心躍らせて聞いていた。


「前田礼です。趣味はスキーです。いつかクラスの皆ともスキーしたいです。男女とも素直でかわいい人が好きです。5年間仲良くして下さい。」


クラス内が少しざわざわした。


前田君てほんとにきれいだな・・・。


絵本の中から飛び出してきたような中性的な美しさの前田礼に対して、水樹は感情を抱いた。


保育園、小、中学校から同じであり、まさに腐れ縁になりつつあったが、今まで特段濃い接点もなかったのでほぼ話した事は無い。


「ねえ、また同じクラスだね。よろしくね。立花水樹さん。」


柔らかい声に眼差し。


礼とは通路は挟むが席は隣で、そして着席した礼に不意に話しかけられた水樹は気が動転してしまった。


「あ、うんっ、よろしくお願いしますねっ。」


「ぷっ。何でそんな変な敬語なの?今日初めて会うんだっけ?普通に話していいよ?」


「あ、はい、あ、うんっ、これからは気をつけるねごめんねっ。」


礼は笑った。


「立花さんてなんか面白いね。それに髪も伸びてちょっと雰囲気変わったよね。焼けてもっと黒かったし。」


そうかな?と水樹は思ったけれど、恥ずかしくなってきたのでそれ以上は礼とは話さなかった。


まだ二日目の学校生活では午前中は授業はなく、先生の話やレクリエーションが主で、そして昼休みを迎えた新入生達は教室内でお弁当を広げる。確かにまだ食堂に向かう勇気はないのが一般的なものだろう。


そんな時、教室の端のドアからそっと中を確認している男子学生がいた。


「あっ!」


男子学生は何かを発見すると恐れながらもこの1年A組になんと突入してきた。なかなか肝が座っている。


「良かった。合格してた!やっと見つけたよ。あの時は本当にどうもありがとうっ。」


「何?ごめん、なんだっけ?」


礼は不思議そうに尋ねた。この男子学生は礼を探していたのだ。

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