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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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「お前先輩風吹かせすぎ!超うける。」


「そんなつもりないですって。」


「スミレちゃん。この人まじで鈍臭い先輩だから気をつけなね。」


え・・・名前・・・?と気になった自分が小さいように感じて水樹は気持ちを立て直した。


「ス、スミレちゃんて言うの?凄くかわいい名前だね。私のお姉ちゃんもお花の名前なんだよ。」


「田丸スミレって言います。先輩はなんて言う名前ですか?」


「立花水樹です・・・。それでこの人が羽柴瞬介君で、この人が・・・。」


「宇野勇利さんですよね。さっき教えてもらいました。」


「じゃ後はお前説明しとけよ。俺達練習するから。」


そもそも勇利は人見知りをしない性格な事は水樹も承知している。勇利は話すのも聞くのも上手で、スミレと直ぐに話せたとしても極自然で違和感を持つ必要はない。でも、だからこそ、水樹は自分がその他大勢である事をまたまた思い知らされてしまう。


今日出会っても、3年前に出会っても、肩書は同じ ‘後輩マネージャー’でしかなかった。


それから勇利と瞬介は部員の輪に溶け込み埋もれていった。


「喋りやすくて気安い人ですね。」


「そうなのっ。それに面白いし格好良いよねっ。」


「そうですか?立花さんは濃い目の顔の人が好きなんですね。私は彼氏以外は良くわからないんで。」


「彼氏がいるの!?凄い。いいなあ。どれくらい付き合ってるの?」


「2年くらいです。立花さんはいないんですか?」


「あは。いないし、恥ずかしながら今までだって1回ほんの少しいただけなんだよ。」


「まじですか。」


「だから色々教えてくれたら嬉しいな。恋愛はスミレちゃんが先輩だね。」


「立花さん可愛すぎですね。やばいです。」


「えっ!?3つも年離れてるのに変な事言わないのっ。」


「他にもクラブ見学行くんでもう失礼しますね。」


「そっか。わかった。」


「次に付き合った人が・・・、めちゃくちゃ大事にしてくれますよきっと。あ、生意気言ってすみません。また来ますさよなら。」


スミレは行った。そして無い物ねだりとでも言うのだろうか。スミレのストレートな話し方に水樹は好感を持った。


そして、スミレが明日もクラブに来てくれますように、と願いを込めて、今日も当たり前の場所で当たり前のお茶を水樹は作るだけだった。

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