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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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そして明人は長めの休みはこの教室にいないのが習慣だった。昼食は食堂へ行ったり外で食べたり買ったものを適当な場所で食べたりしている。


そして午後の授業が始まると、先生がプリントを配り、前の席の水樹から順にプリントを回した。水樹はプリントを明人に渡すと、お辞儀をしてからまた前を向いた。今日の水樹はいつにも増してポワンとしている。それからほんの少しの横顔を観察した。


水樹はまつ毛が長い。


観察が終わり、先生のお経のような朗読が眠りの呪文となりだんだんと眠くなる中、もちろん明人は目を閉じた。


「寝てる人が多いね。そうだね、今日は15日だから、15番の人、プリントの3つ目読んで。」


誰が当てたれたのかわからず明人は目を少し開いた。すると、クラスの皆が水樹を見ていた。水樹が朗読を当てられたのだった。明人は、水樹の声、朗読が気になるわけじゃないけれど、寝るのはもう少し後にする事にした。


「・・・くにやぶれてさんがあり・・・。」


あれ?と明人はプリントを見た。水樹は読む箇所を間違えているのだ。本気で寝ていて飛んでいたらしい。そしてクラスの皆が笑い始め、同じように水樹も笑い出した。でも先生が水樹と皆に嫌味を言い始めたので、面倒臭い空気になってしまった。


はあ、と一つ息を吐き、明人は自分の机の一番上にあったノート、それは新品のレポート用紙だったけれど、それを開いてこう書いた。


‘3つ目、春暁’


そして水樹の左側からそっと差し出した。


「シュ、シュンミンアカツキヲオボエズ、ショショテイチョウヲキク、ヤライフウウノコエ、ハナオツルコトシルタショウ・・・春の世の眠りは・・・。」


今更漢詩とは、先生の趣味でしかない。


水樹の朗読は上手いのか棒読みなのか芝居掛かっているのか、やはり声が引っ掛かって明人にまとわりついた。明人は思わずクスッと笑みを浮かべた。


嫌いじゃない。そして水樹の朗読を聞き終えると、長谷川暁を覚えず、今度こそ固く目を閉じた。

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