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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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昨日絡まれていた水樹の事が気になったわけでは決してなく、明人はまた学校へ登校した。


明人の人生は表現するといつも小雨か曇り、そして時々その気分屋の雲が薄くなる時がありそんな日は明人なりに調子が良い。太陽が顔を覗かせる事はなく、それを明人は願ってもいないしこの先もないと思っている。


明人は1時間目が始まる直前に教師よりも遅れて教室の中に入った。ガラガラッ。歴史と文化を感じろと言わんばかりの古いドアはありがちな音を撒き散らし明人を招き入れた。その音のせいで一斉に視線が集まった。そして音の原因が明人だと確認すると各々意識を離した。


少し慣れたとはいえ、明人は昨日までと同じように誰とも目を合わさないままムスッとした態度で席に着き、そして肘をついて窓から外を眺めた。明人が着席した時に、前の席の水樹が少し体をひねり明人を視界に入れた事がわかったけれど、お互いに用事なんて何もない。だから明人はそのままの姿勢を崩さず水樹には応えなかった。


授業は終わり、でも教室移動は無い為、明人は席に留まりまた窓の外を見ていた。そうしていると水樹が立ち上がったので、明人が無意識に水樹の姿を追うと、水樹は黙って黒板を消し始めた。


周りから声がする。


「手伝おっか?」


「大丈夫。」


黒板には上の方まで字が書いてあり、女の子には届かないかもしれない。でも、サッサッサッ、と背の高い水樹は誰の助けを借りるわけでもなく黒板の上の方もスマートに拭き上げた。


このクラスについて少し分かった事がある。掃除やごみ捨て提出物、今は水樹を中心にやっているけれど、押し付けられている感じが全くしなく、誰かが必ず声を掛け、構い始めて仲良くする。


そうやってこのクラスはうまく回っていた。


ただ、明人にとってはそんな事はどうでもいい事だった。

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