121
水樹達を探しに非常階段へ行った明人がドアを静かに開けると、案の定水樹が5年生の女子に絡まれているのを直ぐに発見した。
明人は、ほとんどの女が嫌いだった。
中学生の時に、何も考えずに店でたまたま貰った知らないアニメのキャラクターの下敷きを学校で使用した時に、クラスの女子にからかわれて笑いものにされた事がある。そしてそういう行動は一人がやると周りに伝染するもので、明人は女子に無視された。
それは一過性の出来事だったけれど思い出したいものでもない。だから明人は女子の少ないこの学校を選んだのだ。それからは明人は人の性格が良いのか悪いのか、その人がどんなに愛想良く振る舞っていても顔や態度を見ればわかるようになったのだ。
そして今、その明人が水樹を助けに入ろうか考えている。でも駄目なのだ。変にかばうと今度はいじめに発展してまた誰もいない時に水樹がもっと酷い目に合うかもしれないからだ。
それになるべくならば女同士のゴタゴタには関わりたくないし、それは誰でもそうだろう。だからもう少し様子を見て、そして手が出始めたら止めに入るのがベターだと明人は判断した。ただ、水樹は体は大きいけれど気は弱そうで、明人は心配しながら様子を伺った。
「うちらと勇利君はただの仲間だし。好きとか嫌いでしか考えられないなんて立花さん子供だね。ばっかみたい。」
「馬鹿じゃないです。先輩達に私の気持ちがわかりますかっ?」
「は?」
「どんなに想ってもずっと後輩で、誕生日もバレンタインも渡すだけでお返しはないし、クラブに来てくれなければ会えない日もあるし、勇利さんに何かあっても大体事後報告で私は何も知らなくて、それに時々彼女が出来てもただ見てるだけで・・・。」
間を開けてまた続ける。
「それでも何年も片思いなんです大好きなんですっ。先輩達は毎日同じ教室にいて、遊びに行って、簡単に勇利さんの視界に入って、贅沢で羨ましいですっ。あのっ、どうしたら両思いになれるのか、教えてくれませんかっ・・・。」
「え・・・。」
「立花さん何言ってんの?うちらに聞く事じゃないし、なんかやばくなーい?きもいんだけど。」
「勇利君変なのにつきまとわれてまじでかわいそうー。」
殴ったり手が出たわけではないけれど、酷過ぎて聞いていた明人の胸がムカついた。
ガン、ガンガン・・・。
明人はポケットに入れていた自分の財布をわざと大きな音がするように階段へ落として、そして覚悟した。




