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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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「水樹ちゃんどうかした?」


水樹は笑顔になる。


「こんにちは勇利さん。はい。これ電池です。勇利さんの担任の先生に頼まれました。」


「おー。時計止まってんだよね。サンキュ。預かるわ。」


「どういたしまして。ではまたグランドでっ。」


「あー、俺ね、今日はクラブ休むわ。」


「どうかしたんですか?怪我ですか?」


「んー。普通にレポート間に合わないんだよね。」


その時勇利の友人が数名通り掛かった。


「勇利ー。先図書館行ってるね。」


「待ってよ俺も行くから。てかお前なんでもかんでも知ろうとしなくていーの。わかった?じゃそういう事だからまたな。」


皆と喋りながら去っていく勇利と、クラスメートというその構図が水樹には羨ましかった。それに突き放された感じがここ最近では少し落ち込んだ。


片思いでは立ち入る限界があり、こればかりは仕方がない。それでもいつまで経ってもいつまで待っても縮まらない距離に水樹はシュンとなる。


その水樹と勇利の様子を、教室内から明人はなんとなく眺め、それからなんとなくだが水樹に対して感情を持った。


水樹はいつも笑っていて、単純そうだし悩みなんて何もないんだろうな、と思えた。


「ちょっと話してあげた方がよくない?」


その時、明人はクラスの女子の水樹への視線を捉えた。


明人は計算的で損得勘定で動くこのクラスの半分程の女子が嫌いだった。特に仁美やその周りは入学当初から馴れ馴れしくて苦手だった。


仁美達は明人が見ているのも気が付かずに、勇利と別れた後の水樹を捕まえると、廊下の奥、非常階段のある方へ誘導して連れて行った。


この年でリンチとか・・・?それはないか。


でも水樹は戻って来ない。


何面倒臭そうな事に巻き込まれてんだよ。たくっ、なんで俺が。勇利の後輩だろ。と、はあ、と息を吐いてから堀田に告げた。


「煙草行ってくる。」


「は?吸ってないだろ?」


始業式の日、水樹が明人に付いた春色の嘘より簡単な嘘を堀田に付いて、明人は非常階段へと様子を見に行った。

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