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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
109/263

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3月。


聖也は受験と練習との掛け持ちと、夏の地方大会の敗退と、そして水樹と別れた影響が長引き機嫌の悪い日が多い1年だった。


元々が年齢の離れた先輩後輩であった為、もし聖也と水樹の二人の関係を知らなければ、意識し合う二人の違和感は誰も気付かない。それでも水樹と聖也の春から夏にかけての約3ヶ月間は本当に酷いいびつさで、特に水樹が聖也を物凄く避けていた。そこで二人の事情を知っている勇利が変わらずに、聖也とも水樹とも明るく接する事を心掛けたのだった。


一つのものを目指し追い掛けた者達には、恋愛以外の強い絆がある。だからきっといつかまた聖也と水樹も良い雰囲気に戻れるだろうし、そしてその橋渡しを勇利が担っているのだろう。


その勇利に関しては、特に胸踊るような事件も起こらず1年が過ぎ、単位も順調に取れまもなく4年生になろうとしていた。同じクラスの別れた間宮仁美とは特に用事が無い限りは目も合わさなければ、会話もない1年で、仁美は次に付き合った男と数ヶ月で別れたが、勇利にとっては無関心な案件で、もう消えてしまった存在だった。


そして今日の土曜練習は聖也がOBとして最後の練習を見に来る事になっていた。勇利は聖也との思い出が多すぎて胸が熱い。初めて廊下で睨まれながら声を掛けられ勧誘されたあの日の事を本当に昨日の事のように覚えている。それにこの3年間で何度睨まれたか。聖也の不器用なイケメンさが可笑しかった。


「ちわーっす。」


「おーっす。」


聖也がコートに近づくと皆が一斉に振り向いた。


「こんにちは。」


遠くの方から水樹も挨拶をし会釈をした。聖也は軽く片手を挙げて応える。そしていつもと同じメニューで基礎練をした後、聖也も混じえてミニゲームをした。


パスを回して切り込み、シュート、速攻、ロングシュート、引退して鈍っているはずなのに、何をしても聖也は相変わらず絵になった。


勇利が思い出すのは生まれて初めて間近で見たハンドボールのシュート、それは聖也の放ったシュートであり勇利の憧れで、勇利は忘れない。


そんな事を考えながらゲームをしていた矢先、勇利は強烈にブロックされてひっくり返り床に肘をこすりつけた。それは誰かが気付くような程度ではなく、そして勇利は血が少し滲む肘を見てまた直ぐにゲームに参加した。


「ちょっと休憩ねー。」


勇利がコートから出ると、水樹がテテテと寄った。


「勇利さんっ。怪我大丈夫ですか!?絆創膏貼りますか!?」


「へー、お前よくわかったね。」


「はい!だって、それは・・・。」


勇利は笑った。


「絆創膏はいらないよ。」


そしてお茶を飲みに廊下に出ると聖也も現れ、勇利と聖也は少し離れた場所でお茶を飲んだ。

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