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水樹を抱き締めたままでいると、水樹の鞄が振動した。そして聖也は我に返り水樹を自分から離した。
「お、大きくてきれいなお家ですね。」
「そっか?こっちがリビング。入んなよ。」
聖也はリビングのソファーに腰掛け、それから水樹の方はジャケットを脱いで畳んで床に置き、聖也の座っているソファーには座らずテーブルを挟んだ対面の床に正座した。
「家族の皆さんに、お土産を持ってきました。」
「そんないいのに。でもサンキュ。」
「それから一緒に食べようと思ってここの駅のパン屋さんで色々買って来たんです。」
無駄によく喋る水樹は荷物をテーブルに並べ出した。
「お客様に床は変だよね。水樹おいで。」
聖也が右腕を広げて水樹を招き入れるそぶりをすると、水樹はその行為を素直に受け入れ聖也の横にやってきた。
今日の水樹は聖也の予想と反する動きをする。でもまだ二人の体は遠慮がちに距離を保っていて、そして案の定の沈黙が起こった。
「さっき電話来てたろ?」
「電話ではないと思います。また後で確認しておきますね。」
「急用だと駄目じゃん。今返信しなよ。」
「そうですか。わかりました。」
水樹は携帯電話の操作をし終えると、自分から聖也の横に座った。
「誰だったの?なんて?」
「あ、同じクラスの友達です。旅行に行っていたみたいで、お土産を渡したいって書いてありました。」
「んでなんて返したの?」
「今日はデートだから遊べないよって・・・。」
「へえ。俺達の事って友達に隠してないんだ。」
「えっ?どうしてですか?」
「あ、いや、別に・・・。それよりなんか食う?」
「いえ、まだお腹が減っていなくて・・・。た、退屈なら何かして遊びますか?トランプとか?」
「それしないのわかってて言ってるでしょ。なあ、さっきの続きがしたい。もう一回触っていい・・・?」
「あ・・・はい・・・。」
聖也は水樹の方を向くと水樹に近寄り、そしてもう一度抱き寄せ自分の胸にうずめて強く思った。
水樹が好きだよ、心から。でもさ、好き過ぎるからこそ、だからどうしても聞かなきゃいけない事がある。聖也は水樹の言う、ちゃんとをやっておきたかった。ただ、聖也自身もどちらなのかはわかっていない。
「あの電話くれた日、あの日勇利となんかあったんだろ・・・?」
ビクッと水樹の肩が固まった。
「なんかって・・・なんですか?」
低くて抑揚の全くない声で水樹は答えた。




