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勝利で得た物

 あれから十日後にアン・ズーが復活した。

 いや、本当に復活まできつかった……。


 ラダメスさん達から、アン・ズーの事とか精霊の加護とか聞かれていたのだろう。


 けど、何を質問されているかわからない。

 相手もオレが聞こえないとわからない。


 そんな中、いつも通り世話してくれる、ラザーちゃんだけが救いだったよ……。


 そして、アン・ズーは復活してすぐ、ラダメスさん達から情報を収集してくれた。

 ラダメスさんも火傷が酷かったが、ミイラの様に包帯巻いて頑張ってたよ!


 まあ、それはさておき。

 今はアン・ズーと王宮の客間で密談中である。


「……という訳で、クシュ王国は予定通りアイーダ王女が治める事となりました」


「……それは良いとして、オレがアン・ズーの翻訳を必要とする事は説明した?」


 ラダメスさんもアイーダ王女も、オレを腫れ物に触れる様な態度だったんだよね。

 もしかしたら、気が狂ったと思われたのかと、個人的には泣きたい気分だったよ。


 けれど、アン・ズーはニコリと微笑み、オレの言葉を一刀両断する。


「その様な些細な事はお忘れ下さい。――ああ、精霊の加護の事は説明しておきました」


「いや、些細な事って……」


 それは確かに、皆が一番聞きたい事だろう。

 けど、些細な事って……。


 傷心中のオレに対し、アン・ズーはいつもの微笑みをオレに向ける。


「この国の民が不幸にならず済みました。それに比べれば、些細な事ではないですか?」


「あ、はい。その通りですね……」


 そう言われては返す言葉が無い。

 戦争は回避され、実質的な死者は少数で済んだ。


 うん、これは開き直って、良かったと思うしかないね!


「ふふふ、その通りです。それに、謝礼もたっぷりと頂けましたしね」


 そして、すっと差し出される革袋。

 ジャラリと音がしたけど、もしや金貨ですか?


 アン・ズーは満足そうに微笑みながら、その革袋を大事そうに抱きかかえた。


「さて、何を購入しましょうかね? それとも、エジプトまで保留にしますかね?」


「ははは、アン・ズーに任せるよ。皆が喜ぶ物をよろしくね?」


 貰った報酬よりも、アン・ズーが楽しそうなのが、何よりも嬉しいと思った。

 勿論、アイーダ王女やクシュ王国の皆さんが助かった事も嬉しいと思うけどね。


 うん、皆に喜んで貰えたんだよな。

 オレ達のやった事は役立ったんだよな……。


 ゲームの様と言うと、ちょっと不謹慎かもしれないけれど……。



 ――それでもオレは、この冒険を楽しいと感じたんだ。



 胸に熱い物が宿った気がした。

 不思議な気持ちが、オレの心を満たしていた。


 アン・ズーはそんなオレを見つめながら、くすりと微笑み口を開いた。


「さて、あの二人も痺れを切らしている頃でしょう。そろそろ、説明しに向かいますか」


「ラザーちゃんとゾラのこと? もしかして、二人への説明は後回しにしてたの?」


 クスクスと笑いながら扉に向かうアン・ズー。

 笑うだけで答えてはくれなかった。


 まあ、優先順位としては仕方ないのか?

 情報収集の後に、オレへの説明だったし……。


 オレはやれやれと肩を竦める。

 そして、アン・ズーと共に仲間達の元へと向かう。


 次はどんな冒険が待っているかと、胸を躍らせながら。

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