ゾラとの付き合い方(恋愛編)
明けましておめでとう御座います。
拙い作品ですが、今年もよろしくお願いします。m(__)m
……精魂尽き果てたオレとゾラ。
青空の元で大の字で寝転がる事になる。
そんなオレ達を、離れた所で見つめるアン・ズー。
どこかその表情は楽し気だった。
オレは息を切らせ、アン・ズーに視線を送る。
すると、アン・ズーの声が頭に届く。
『この先は更に過酷な戦いが待っています。そろそろ、互いの実力を知るべきでした』
この全力の戦いを始めた意味かな?
確かにゾラの実力は心底理解出来たよ……。
しかし、それだけでは無いらしい。
アン・ズーの言葉がオレに届く。
『それと、ゾラも何やら不満を溜めている様子。発散させる必要もありましたしね』
ゾラが不満を溜めている?
それが何なのかは、アン・ズーもわからないの?
アン・ズーは人の心が読めるんだよね?
これまでも、そうしてたでしょ?
『そういう能力は持っています。しかし、強い魔力や法力を持つ者には通じないのです』
へえ、そういう物なんだね。
ゾラは魔力が強いから、心が読めないって事か。
そいうえば、ラダメスさんの心も読んでる感じがしなかった様な……。
『ええ、彼は軍の中でもかなりの強者です。相当な法力の使い手の様ですね』
なるほど、アン・ズーも万能じゃないって事か。
ここらで能力が知れて良かった。
……けど、ゾラの事はこれで良いのかな?
不満は完全に解消した感じ?
『いえ、それはどうでしょう? 丁度良いので、本人に直接聞いてみますか』
そう言うと、アン・ズーはゾラの元へと進む。
そして、寝転がる彼女を見下ろし微笑んだ。
「何かアルフ様に、言いたい事があるのではないですか?」
「――っな、それは……」
ゾラは気まずそうに視線を逸らす。
何やら、オレに言いにくい事があるのかな?
いつもは黙秘権を行使するゾラ。
しかし、今日のアン・ズーはそれで許してくれない。
「仲の良い夫婦は隠し事をしないものです。それでも、アルフ様へは言えませんか?」
「い、いえ……。そんな事はありません!」
ゾラは慌てた様子で身を起こす。
そして、オレの元へとノロノロやって来る。
ゾラは顔を赤くし、倒れたオレを覗き込む。
そして、目を泳がせながら、そっと小さく呟いた。
「その、私は婚約者なのだろう? どうして、ラザーにばかり触れるんだ?」
……ん? ラザーちゃんに触れる?
それって、いつもの頭を撫でている事かな?
そりゃ、ラザーちゃんは小動物系だしね。
撫でるのは当然という感じだけど……。
オレは戸惑ってアン・ズーを見る。
すると、わざとらしい呆れ顔で、はあっと息を吐いていた。
「つまり、アルフ様はゾラに、恋人らしい事をしていないと?」
アン・ズーの冷たい視線がオレ達に向く。
どうも、オレに問いかけているみたいだ。
オレは腕を組んで考えてみる。
そもそも、恋人らしい事って何なのだろうか?
そして、ゾラは顔を真っ赤にし、オレを睨んでいる。
おや、これはもしかして、オレが悪い感じの流れですか?
その予感はどうも的中していたらしい。
アン・ズーは微笑みながら、オレへと問い掛ける。
「それで、ご主人様……。どうされるのですか?」
アン・ズーがオレへと判断をぶん投げた。
これはもう、助けてくれる感じじゃないね。
そして、ゾラもじっとオレを見つめている。
何やら、期待した視線に感じられるんだけど……。
うん、この状況だから仕方ないね。
オレに出来る事なんて一つしかないよね?
オレはゆっくりと上半身を起こす。
そして、ゾラと真っ直ぐ向かい合った。
オレはゆっくりと右手を伸ばす。
当然の如く、そっとその頭をなでなでした。
「な、あ……。これ、は……?」
ますます顔を赤くし、ゾラは固まってしまう。
だが、オレは気にせず、無心で頭を撫で続けた。
だって、オレって喋れない訳じゃん?
ここで抱きしめるとかは、流石に怖くて出来ないし……。
ならばここは、いつも通りに撫でるだけ。
オレには他の手なんて無いのだからね!
……と、固まっていたゾラの頭がゆっくり動く。
視線をアン・ズーへゆっくりと向けた。
そして、にこりと微笑むアン・ズー。
何故かゾラは、何も言わずに視線を戻した。
「お、おい……。アルフ……」
ゾラはギクシャクと両手を上げる。
そして、オレの襟を掴んで睨みつけて来た。
いや、普通に怖いんだけど……。
ヤンキーに睨まれてる気分なんですけど……?
内心で泣きが入るオレに、ゾラは顔を近づけて囁いた。
「つ、次の機会は、二人っきりの時で頼む……」
ゾラはそれだけ言うとバッと立ち上がる。
そして、そのまま勢い良く駆けだして行った。
「……え?」
方角的には街に戻ったっぽい。
まあ、ゾラなら一人でも危険は無いんだろうけど……。
オレは戸惑いつつも立ち上がる。
すると、アン・ズーがオレに声を掛けてきた。
「ふ、ふふふ……。グッジョブです、ご主人様……」
親指を立てるアン・ズー。
いつもの笑みだが、その肩は小刻みに震えていた。
何やら、アン・ズー的にはツボったらしい。
オレにはさっぱり意味がわからないが……。
「……ってか、次の機会なんてあるの?」
ゾラはラザーちゃんはと違う。
小動物感覚で、普段から何気なく撫でたり出来ない。
それ以前に、二人っきりになるのが無理だしね。
旅の道中は、寝る時すらみんなで雑魚寝な状況だし。
うん、次の機会があるとは思えないかな?
オレは重たい体を引き摺り、街へ向かって歩き出す。
今日は本当に疲れたし、宿のベッドでゆっくり休もう。
後ろから付いて来る、アン・ズーの気配を感じる。
何故だか、背後からはとてもご機嫌な雰囲気が感じられた。