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エルミナ

 アフリカ大陸の西部。

 ガーナという国にエルミナという港町が存在する。


 そこはポルトガル人により建てられた街。

 そして、拠点であり城でもある。


 この地域からは金、ダイヤモンド、象牙、胡椒、木材等が輸出されている。

 そして、裏ルートでは非合法な黒人奴隷達もね……。


「ライラさん、ここで仲間を集めるんですか?」


 商人向けの宿屋。

 その酒場でオレ達は夕食を取っていた。


 そして、ラザーちゃんは周囲を見回しながら、不思議そうに首を傾げる。


 それと言うのも、周囲は白人だらけなのだ。

 アラブ人すら存在していない。


 そもそも、この街で見かける黒人は、一部の肉体労働者しか存在していない。


「ふふふ、探しはしますが、この街の住人ではありませんね」


「なら、明日にはすぐ違う街へと移動ですか?」


 エルミナまではかなりの長旅だった。

 ラザーちゃんの表情も曇ってしまう。


 この国はサハラ砂漠を抜け、サバンナの草原地帯に存在している。

 砂漠よりマシとは言え、この酷暑の長旅は流石にしんどいよね……。


「さて、どうでしょう? 目的の人物がいつ来るか次第ですが……」


「目的の人物? それって、この街で待つって事ですか?」


 ラザーちゃんの表情が晴れる。

 街への滞在と考え、嬉しさが滲み出ていた。


 そんなラザーちゃんに、アン・ズーはくすりと笑みを浮かべる。


「目的の人物が現れるまでは滞在します。とはいえ、それ程の長期滞在にはならないでしょう」


 その答えに、ラザーちゃんは萎れる。

 期待した答えでは無かったご様子だ。


 ラザーちゃんは手元の果実ジュースに口を付け、アン・ズーへと尋ねる。


「それで目的の人物とは、どなたなんでしょうか?」


 その問いにより、アン・ズーは視線を巡らす。

 周囲への警戒を示していた。


 そして、周囲に聞こえない様に、小さな声で囁いた。


「アシャンティ族の戦士……。白人と敵対する、この地の先住民です……」


 その言葉で、ラザーちゃんは口を紡ぐ。

 口を手で押さえて驚きを隠した。


 そして、オレも驚きに硬直する。

 話の流れからすると、その戦士とは……。


「はい、想像された通りです……。奴隷狩りに対抗する勢力……。エルミナの民からすれば、非常に面倒な勢力となります……」


 そのアシャンティ族を仲間にするんだよね?

 彼等に加勢するって事だよね?


 ……一気に話がヤバくなってきた。

 この街の人々と敵対する訳だしね。


 てか、ラザーちゃんが涙目だ。

 怖くなって周囲を警戒し続けている。


「ふふふ、自然にして下さいね? その様に警戒しては、逆に怪しまれますので」


「――っ?!」


 ラザーちゃんは慌てて手を下ろす。

 そして、ビシッと姿勢良く座りなおした。


 うん、気持ちは良くわかるよ。

 今はオレも『偽装』スキルに感謝してるしさ。


 ラザーちゃんの様子に満足し、アン・ズーは微笑みながら説明を続ける。


「彼等の支援を行う為にも、ワタクシはしばらくは情報集めを行います。この先の作戦も考えねばなりませんからね」


 小さく頷くラザーちゃん。

 冷や汗ダラダラだけど大丈夫かな……。


 それと、目的の人物はやって来るのか?

 ここは敵地で城もあるのにさ……。


「ふふふ、彼等もこの地を探っています……。商品・・が積み込まれる前に、何とか奪い返そうとね……」


 なるほど、ここは港町。

 違法奴隷も商品として、欧州へ輸出されるという事か。


 そして、アシャンティ族は仲間を取り戻したい。

 その為の手掛かりを探していると。


「まずは彼等の先兵と接触します……。そして、彼等の仲間となり、この地の奪還を手伝うのです……」


 うーん、やりたい事は理解出来た。

 その難易度についてもだけどね。


 これって魔物退治の非じゃないよね?

 本当に何とかなるんだよね?


「詳しい説明はまた明日にでも。今夜中には大まかな作戦を纏めますので」


 アン・ズーは自信満々な笑みだった。

 それ程までに、自信があるのだろう。


 ならば、アン・ズーを信用するしかない。

 新しい仲間を得る為にもね。


「では、夕食を食べたら、本日は早めに就寝としましょう」


「は、はい……。わかりました……」


 ラザーちゃんは真剣に頷く。

 そして、口一杯に食事を詰め込みだした。


 ああ、そんなに急いだら喉が詰まるよ?

 ゆっくり食べて良いんだよ?


 ラザーちゃんの頭を撫でて落ち着かせる。

 そして、オレも夕食に手を付ける。


 そんなこんなで、オレ達は活動開始のタイミングを待つ。


 ――そして、事態が動いたのは三日後だった

<蛇足な補足>

・エルミナ

 ガーナの都市。2013年の人口は約34,000人。漁業が盛ん。


 1471年当時ギニアと呼んだこの地をポルトガルが訪れ、

 内陸で採れる金を入手したことからミナ・デ・オロ (金鉱の意)

 という港町が興り、1482年、スペインとの交易競争を意識した

 ポルトガルはギニア湾の防衛基地とするサン・ジョルジェ・ダ・

 ミナ城(エルミナ城)をつくった。


 1637年、オランダ東インド会社に受け継がれ、奴隷貿易の拠点となった。

 1872年よりイギリスの統治下におかれた。

 1957年、ガーナ独立にともないガーナの都市となった。

 金の産出により、この地域はコスタ・デ・オロ(黄金海岸)と呼ばれ、

 その後統治国が変わってもガーナ独立前のイギリス領までその呼称が続いた。

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