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チュニス

 ローマ帝国の南端から船に乗り、渡った先はアフリカである。


 しかし、辿り着いた港は白人が多い。

 この地域はローマの属国らしいのだ。


 とはいえ、割り合いは半分程度。

 残りは黒人とアラブ系の商人達である。


 そう、ここは流通の拠点。

 欧州と中東の交易都市として栄えているのだ。


 ちなみに、黒人達は出稼ぎの労働者。

 奴隷では無いので間違えないでね?


「ふわあ、大きな街ですね!」


 ラザーちゃんは馬車の荷台から身を乗り出す。

 街を興味深そうに観察している。


 そして、その体は白いマントに包まれている。

 厚手のマントで熱を防いでいた。


「ふふふ、アフリカで五本の指に入る都市ですからね。折角ですし、少しこの街を見て回るとしましょうか?」


「いいですね! 私も見て回りたいです!」


 キラキラと目を輝かせるラザーちゃん。

 暑さにも負けず元気一杯だね。


 そういうオレも興味はあるんだけどさ。

 暑さ対策もバッチリ出来ているしね!


 ……というのも、黄金の腕輪が魔法の道具だったのだ。

 しかも、暑さ対策用の。


 具体的には、内側の熱を吸い外側に排出する魔法。

 放熱板みたいな機能なのだ。


 これにより体感温度がぐっと下がる。

 汗は掻くが、へばる程では無いのである。


 お陰様で馬車の中では完全に余裕の態度。

 ただし、直射日光は勘弁だけどね!


 そんな事を考えていると、ラザーちゃんがビックリした声を上げる。


「ライラさん! 見た事無い生き物がいます! あれって何ですか!」


「あれは、ラクダという生き物です。アラブの商人が良く利用しますね。暑さに強いので、砂漠での荷運びに重宝するのですよ」


 アン・ズーの説明に、ラザーちゃんはへーっと感心していた。


 うんうん、砂漠と言えばラクダだよね。

 アラブの商人と良く似合う。


 ……うん?

  そういや、砂漠を進むのに、オレ達の馬車って大丈夫なの?


 オレは馬車を引く黒王号に目を向ける。

 真っ黒な毛並みの彼は悠然と歩いていた。


『黒王号は魔法で空気のベールに覆われています。それにより、砂塵を防ぎ、熱を遮断する事が出来るのです』


 なるほどねー。

 やっぱり、魔法の力は偉大だね!


 ただ、旅の間ずっと魔法使うんだよね?

  オレの魔力は大丈夫なの?


『いえ、黒王号は自分で魔法を使っていますよ。教えてみたら覚えました』


 ……いや、覚えましたって、さらっと言うね。

 そんな簡単に覚えれる物なの?


『ふふふ、黒王号は素晴らしい名馬ですからね。彼が特別な存在のですよ』


 アン・ズーが胸を張って自慢している。

 本当に黒王号が大好きだよね。


 まあ、有能なのは事実なのだろう。

 魔物が襲って来ても平然と撃退するし。


「そういえば、アフリカに到着しましたが、この後はどこに向かうんですか?」


 ラザーちゃんが思い出した様に尋ねる。

 そういや、ちゃんと聞いて無かったね。


 祖国に向かうって言ってたし、このまま東のアラビアへ向かうのかな?


「最終的には東へ向かうのですが、その前に仲間集めです。まずは南西に位置する国、ガーナへと向かいます」


「ガーナですか? ここにも人は沢山いますよ?」


 ラザーちゃんの言う通り、周囲には黒人の姿が見える。

 屈強な体の男達である。


 肉体労働をしてるし、それなりに強そう。

 ただ、戦士って感じじゃないけどね。


「ガーナはサバンナに面した国で、狩猟を行う戦士も多いのです。交易都市よりも、強い仲間が期待出来るでしょう」


「なるほど! 強い仲間を見つけるんですね!」


 ニコニコと笑みを浮かべるラザーちゃん。

 君の笑顔は本当に天使みたいだ。


 ただ、それだけじゃないんですよね?

 アン・ズーさんの事だからさ……。


『はい、現在のガーナは、ポルトガルから侵略を受けています。非合法な奴隷狩りもです。――ですので、少しばかり介入を行います』


 ……ちょっ?!

 それって、国を相手にするってこと!


 いきなり相手がデカくなったね……。

 それって、本当に大丈夫なの……?


『なに、国を落とす訳ではありません。少しばかり、嫌がらせをするだけですので』


 いやいや、嫌がらせをするだけって……。

 嫌な予感しかしないんですが……。


 オレは内心で不安を抱える。

 それと同時に、諦めて息を吐く。


 アン・ズーがやる気満々なのだ。

 きっと、止めるだけ無駄なんだろうね。


 オレは先の事を考えない様にし、今は街の風景を楽しむ事にした……。

<蛇足な補足>

・チュニス

 チュニジア共和国の首都であり、同国のチュニス県の県都でもある。

 また同国の商業・工業の中心地で、アフリカ有数の世界都市である。


 2019年の経営コンサルティング会社A.T.カーニーの発表によると、

 世界第102位の世界都市と評価されている。

 北アフリカではカイロ、カサブランカに次ぐ第3位である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 黒王号……お前、魔法戦士やったんか。
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