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【幕間】ユリアの物語

 私の名前はユリア。

 大貴族であるテレンティウス家の生まれだ。


 上にはユリウス兄様とルキウス兄様がいる。

 私に対し優しく接してくれる。


 両親の仲も良い。特別な力も持っている。

 皇太子からの求婚も受けている。


 まさに、理想通りの聖女転生と言えるだろう……。


 そう、私の生前は日本人。

 三十歳OLの中川なかがわ 明子あきこだったのだ。


 オタク趣味。ドラマや恋愛小説も大好き。

 そして、彼氏が居た事無し……。



 ――そんな私の妄想が、願望が、今まさに全て揃う事となった!



 全てが順調で物足りなかった訳よ。

 アイデア出せば周りがチヤホヤしてくれる。


 貧しい子供が可哀想って言えば、聖女様として周囲から尊敬されてしまうしさ。


 けど、そうじゃない!

 私が欲しいのはドラマな訳よ!


 お兄様達も、皇太子も好きだけど、私からしたら子供に見えるんだよね。


 微笑ましいけど、私に恋愛感情は無い。

 これは私が望む物ではないのよ。



 ――そこへやって来たイチカ君! 歳の差カップルの真剣な純愛!



 これよ! 私が求めていたのはこれだった!

 これがずっと見たかった!


 私の満足感がわかる?

 十五年間求めていた物がやっと手に入ったのだ!


 思い出すだけでニヤニヤが止まらない。

 人には見せられない状態だろう。


 もう、絶対にジャンヌさんを手放さない。

 その結末を最後まで見届ける。


 それが、この世界に生まれ変わった、私の天命なのだから!




 ……と、少しばかり興奮しました。

 今のは全て忘れて下さい。


 私の趣味は横に置きます。

 それとは別に、大切な話がありますからね。


 その大切な話しとはライラさんの存在。

 彼女が成そうとしている目的です。


 ルキウス兄様にも話した欧州連合。

 その先駆けを行った人が別にいます。


 その人物が、かの宝珠を所持していた。

 恐らくは同郷の人間のはずです。


 同じ宝珠を持つ彼らが旅をしている。

 欧州を旅して回っているのです。


 ならば、ライラさんはその継承者。

 彼の国からの使者ではなかろうか?


 ……恐らく、イチカ君はそれを知らない。

 だが、神輿にはされるだろう。


 知らせていないのは何故?

 それはイチカ君の身を守る為なのだろうか?


 今の私にはわからない。

 情報が足りな過ぎて、判断する事が出来ない。


 けど、いずれその時が来る。

 それまでに、ローマを纏める必要がある。


 きっと、それが私が聖女に転生した、本当の使命だと思うから……。




 魔王軍は日に日に強くなっている。

 このままでは欧州は押しつぶされる。


 このままでは、大切な日々が奪われる。

 大切な人達が殺されてしまうのだ。


 そうならぬ様に動かねばならない。

 皇太子やお兄様達と手を取り合って。


 そして、欧州が一つになる下地を作る。

 周囲の国へと呼びかけるのだ。


 私の代で魔王を滅ぼす。

 それが出来ねば、きっと世界は滅ぶから……。



 ――彼等はその鍵になるのだろうか?



 イチカ君はお兄様に一矢報いた。

 実力が劣りながら、勝ちを捥ぎ取った。


 逆境からの逆転劇。勝ちを諦めぬ意思。

 それはローマ戦士の誉れらしい。


 ルキウス兄様はイチカ君を気に入った。

 ローマの気高い戦士と認めたのだ


 しかし、あの程度では魔王軍に歯が立たない。

 隊長格には届かないだろう。


 ……今のイチカ君では、圧倒的に実力が足りていないのだ。


 数か月前まではただの高校生。

 特別な能力を持たず、努力で実力を付けた。


 そう考えれば大した物だ。

 この先も努力次第で化ける可能性はあるだろう。


 しかし、イチカ君は間に合うのか?

 欧州が持ち堪えていられる内に……。




 せめて、東の情報がもう少しあれば、先の展望も読み易いのだけれど。


 モンゴルや中国は奮闘していると聞く。

 しかし、詳しい情報が入らないのだ。


 先が見えず、流動的な状況。

 それでも未来に向けて、動く必要がある状況。


 不安が多い状況の中で、イチカ君達が一縷の希望である事は間違いなかった……。

「第四章 ローマの聖女」が終了しました。

引き続き、第五章もお楽しみ下さい!


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挿絵(By みてみん)

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