表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/73

情報交換会

 全員揃ってのランチです。

 周囲には修道院の皆さんもちらほら。


 ユリアさん、ルキウス兄様は貴族だけど、ここでは身分とか気にしないらしい。

 他では違うという事を、こっそりアン・ズーが教えてくれたよ。


「さあ、兄弟よ肉を喰え。戦士ならば、もっと筋肉を付けねばな」


「お兄様? アルフさんは、ローマの戦士ではありませんわよ?」


 オレの両隣に座る兄妹。

 さっきから、めっちゃ話し掛けて来る。


 なお、今のユリアさんは聖女モード。

 今日はルキウス兄様がグイグイ来る。


「ああ、それと本来のローマ戦士は、先ほどの様に綺麗な戦い方はしない。拳や足も使う実践向きな戦い方を好む。イギリスの騎士みたいに戦い方に拘らず、勝ちに拘るので勘違いするなよ?」


 別に負け惜しみという訳ではないらしい。

 軽い口調で忠告をくれる。


 悔しさは感じないので、先ほどの戦いは本気では無かったのかもね。

 とりあえず、オレが頷くと楽しそうに肩を叩いて来る。


「だが、ユリアから聞いた話では、実践は数か月前からだそうだな。それを考えれば、凄まじい才能だと言える。このまま努力を重ねて励むと良いだろう」


 うん、そこはオレの才能では無い。

 けど、言わない方が良いんだろうね。


 アン・ズーも、オレが口を滑らさない様にじっと様子を伺ってるし……。

 てか、ルキウス兄様には返事が出来ないんだけどさ!


「それと、オレの実力はローマ貴族では平均程度。魔王軍の将とは本気で戦っても、単騎で勝つのは難しいだろう。実力が付くまでは、出会っても戦いを挑んだりするなよ?」


「お父様かユリウス兄様なら、単騎でも勝てるかもしれませんけど……。まあ、魔人の方々とは、一対一で戦うべきでは無いでしょうね」


 時々、話に出て来る魔王軍か。

 その将ってのは魔人ってことだね。


 強さはやはり、イギリスの殺人鬼よりも強いくらいなのかな?


『いえ、あれは成り損ないです。本物と比べれば、足元にも及ばないかと』


 アン・ズーからの声が頭に届く。

 オレの考え違いを指摘してくれる。


 てか、アレでも弱いってこと?

 初めの方とか、動きが見えなかったんだけど?


「そう言えば、貴殿等はイングランド王国から来たのだろう? あちらの騎士団について、何かしらの情報は持っておらぬか?」


「噂程度であれば聞いております。騎士団長の虎の子である、円卓の騎士が北欧で活躍していると。その助力が無ければ、欧州はより厳しい状況になっていたでしょうね」


 ……ん? 円卓の騎士?

 それって、アーサー王物語の?


 てか、あれって史実では無くて、作り話って聞いた事がある様な……。


『はい、国王は別の人物です。しかし、騎士団長の名はアーサー。この人物は、ご主人様と同郷の可能性が御座います』


 マジかー。

 異世界転生してアーサーを名乗っちゃうかー。


 でも気持ちはわかる。

 イギリスで騎士の家なら、オレでもやっちゃう。


 同郷の人間に出会う事なんて、その時には考えもしないだろうし……。


「北欧の心配はしていたが、それならしばらくは大丈夫か? とはいえ、そこが崩れるとアルビオンに後が無い訳だが……」


「ええ、北欧およびイングランド王国が落ちれば、その勢いで欧州は飲まれるでしょう。やはり、ローマ皇帝に働きかけて、欧州連合を結成するべきだと思うのです」


 ユリアさんの強い口調に、ルキウス兄様が難しい表情を浮かべる。


 ……てかさ、けっこうヤバい話してない?

 欧州ってそんな危険な状況なの?


 オレが内心で焦っていると、アン・ズーがくすりと笑う。


「イングランド王国では少々伝手が出来ております。我々が祖国へ戻った後には、少しばかり動きがあるやもしれませんね」


「何だと? 其方の祖国とはもしや……」


 ルキウス兄様が狼狽える。

 アン・ズーの顔をまじまじと見つめる。


 そして、ユリアさんも考えこむ。

 眉を寄せて難しい顔をしていた。


 ……うん、アン・ズーさん。

 前から気になってたけど、祖国って何処なの?


『時が来たらお伝えします。もうしばらく、お待ち頂ければと……』


 おうふ、またお預けかー。

 ただ、トーンからすると友人関係かな?


 ナイーブな話しっぽいから、あまり深くも踏み込めないんだよな……。


 オレがモヤモヤしていると、急にユリアさんがハッと顔を上げる。

 そして、オレとアン・ズーを交互に見ながら、擦れる声で呟いた。


「ライラさん、もしや貴女は……?」


 ユリアさんの問いかけに、アン・ズーはただ静かな微笑みで返す。


 否定も肯定もしない。

 しかし、それでユリアさんは納得したらしい。


「……わかりました。我々は我々で、環境を整えておきましょう」


 二人だけで何やら通じ合ったご様子。

 ルキウス兄様も困り顔を浮かべている。


 いつも通り、オレは置いてけぼり。

 寂しくなって、そっと視線を隣に逸らす。


「……え? どうかしまたか、アルフ様?」


 もきゅもきゅとパンを食べていたラザーちゃん。

 首を傾げて問い掛けて来る。


 その姿に癒される。

 オレの寂しい気持ちが、すっきりと消え去ってしまう。


 オレはゆっくり首を振り。

 そっと手元の料理に手を伸ばすのだった。

<蛇足な補足>

・この先、数名程度の転生者が出て来る予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on
cont_access.php?citi_cont_id=614561884&size=300
― 新着の感想 ―
[良い点] 転生してアーサーを騙ったのか。 でもやる気持ちも分からなくはない(笑) これから先も何人か転生者出るんですね。 どんなキャラが出るか楽しみです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ