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歓迎の宴

 馬車の旅も今日で五日目。

 そんな道中にイベントが発生したよ!


 魔狼に襲われてる村人がいた。

 町まで野菜を売りに行こうとしてたみたい。


 で、当然助けるわけじゃん?

 村人達に感謝されるわけじゃん?


 そしたら、流れで村で立ち寄ってくれってなるよね?

 いや、なった訳だよ。


 そして、現在は宴の最中。

 肉は迎撃した狼肉。その他素材は売る予定だった野菜。


 しかも、その野菜も何故かこちらの買い取り。

 アン・ズーさん、良くキレなかったね……。


「いやはや、皆さまは我が村の救世主ですな! これで我々も冬を越せそうです!」


「ふふふ、ワタクシ達も補給を考えておりました。安く購入出来て助かりましたわ」


 テーブルを囲むのは、オレ達三人とこの村の村長。

 四人だけは席に座っている。


 そして、周囲には村人達が集まっていた。

 手にはそれぞれ皿やコップを持って。


 そう、彼等はおこぼれに与る者達。

 別テーブルの料理に集まって来ているのだ。


「ア、アルフ様! お料理を取って参りました!」


 気が付くと、オレの前に料理が盛られている。

 ラザーちゃんが運んでくれたらしい。


 キリっとした表情のラザーちゃん。

 全身から仕事をやり切った感を醸し出している。


 オレは無言で頭を撫でる。

 そして、ふにゃっと表情が崩れるラザーちゃん。


 うん、ありがとね。

 でも、こんな力士が食べそうな量は必要無いけどね……。


「それにしても、護衛も無く町までの移動は、些か無謀では無いでしょうか?」


「ええ、仰られる通りです。ただ、最近は村に、商人が立ち寄らなくなりましてな……」


 アン・ズーの質問に、村長が言いよどむ。

 何やら、言いにくい事情なのかな?


 すると、アン・ズーが村長のコップに酒を注ぐ。

 話の続きを促しているみたいだ。


 村長も満更では無い表情を浮かべる。

 美人にお酌されたら仕方ないよね……。


「スイスの傭兵が吹っ掛けておるんですよ。それで、商人達も行商を渋りよって、うちの様な小さな村には、来るだけ赤字だって吹っ掛けてきよる訳です……」


「まあまあ、それは大変な状況ですわね。皆様、さぞお困りでしょう……」


 村長の言葉に同情を示すアン・ズー。

 その返しに、村長も大きく頷いてみせた。


「領主の納税も厳しいものです。その上で、冬超し用の資金まで絞られては、たまったものではありません。せめて、魔王が倒されでもすれば、戦費名目の重税も減り、スイスの傭兵に頼る事も無くなるのでしょうがね……」


「そうですわね。欧州のどの国でも、対魔王用の戦費は大きな物です。魔王さえ居無くなれば、皆さまの生活も楽になるのでしょうけどね……」


 ほうほう、こういう所にも魔王の影響が。

 重い税金が国民に圧し掛かるんですね。


 やはり、魔王を倒すと人々の為になるんだね。

 多くの人に感謝される訳ですね!


『まあ、一時は感謝されるでしょうね。税金に関しては、別の名目に変わるだけでしょうが』


 アン・ズーさんからの冷たい一言。

 やっぱ、世の中って世知辛いんだね……。


 村長さん達には同情する。

 けど、国の事情はどうしようもないからね……。


 ――と、話が途切れたタイミングで、アン・ズーが視線を動かす。


 視線を追うと、そこは村の奥の民家。

 普通の民家だけど何かあるのかな?


「ど、どうかされましたか……?」


 やや、焦った様子を見せる村長さん。

 やはり、あの民家に何かあるのか?


 オレの興味が沸き上がるも、アン・ズーが首を振って流れを断ち切る。


「……いえ。ただ、ワタクシ達も明日は早くに発つ予定です。お先に休ませて頂ければと」


「ああ、なるほど。それでは、我が家の客室をご利用下さい。残りの料理は、村人達と処分させて頂きますので」


 村長は指を指して、家の位置を示す。

 勝手に戻れと言う事らしい。


 まあ、村長さんはアン・ズーと話してて、料理を殆ど食べれてないからね。


 わかりますよ。

 やはりご馳走だから、自分も食べたいんですね?


「では、お先に失礼させて頂きます」


 席を立つアン・ズー。

 それに合わせて、オレも席を立つ。


 しかし、ラザーちゃんが涙目になる。

 オレの世話役で、食べれてないからね……。


「ふふふ、行きますよ?」


 アン・ズーは陰になる様に右手を示す。

 その中には、桃色の果実が握られていた。


 それを目にしたラザーちゃん。

 果実に釣られて、ふらふらと誘導されていく。


 いや、それで良いのか、ラザーちゃん?

 まだ、子供だしそんなものか?


 色々と不安を感じながらも、オレは二人に続いて村長宅へと向かう。


 ――と、そこでアン・ズーからの声が届く。


『ご主人様、後ほどお話が御座います』


 おやおや、何やら真剣な声色。

 どうやら、真面目な話が待っているみたいだ。


 話の内容は気になるが、取り合えず了解だ。

 きっと、重要な話だろうしね。


 オレは気持ちを切り替え歩き続ける。

 アン・ズーの話をゆっくり聞く為に。

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