神無き世界
こんばんわ。現在は就寝時間です。
馬車の荷台で川の字になってます。
ラザーちゃんを挟んで寝る形だ。
ラザーちゃんはスヤスヤ眠っているよ。
……という訳で、そろそろ質問タイムと行こうじゃないか!
『ふふふ、それでは何からお話しましょうか?』
一番気になってるのは、今日のアレだ。
この世界に神という概念が無いというやつ。
それだと、宗教という概念も無いのでは?
しかし、天使教があると言うんだよね。
『恐らくですが、この世界では天使と悪魔が実在する為です。それも、人が歴史を得る過程で発生しました。或いは、神に似た概念は生まれたかもしれません。しかし、歴史の中に消えていったのでしょう』
……だから、天使が神にとって代わったと?
宗教ってそういう物なの?
いや、そもそも天使って神の使いじゃないの?
神が居ないのに存在するの?
『宗教とは人類を超越した存在を崇拝すること。天使とは天空に住まう超常の存在が、人類の為に派遣されて来た救世主。……まあ、そういう設定になっていますね』
おやおや?
アン・ズーさんの声に、嘲笑の色が含まれてますよ?
その言い草からすると、天使教の教えって正しい物では無いのかな?
『人類は平等に生きなさい。人々が手を取り合って生きなさい。この辺りは、素晴らしい考えといえるでしょう。しかし、全ての人類は天使の下で平等。その考えは、ワタクシとは相容れないものとなりますね』
マジかー。
天使の下では、全ての人類が平等って考えなんだね……。
でも、そんな宗教が流行するの?
反発する人間だって多いんじゃない?
『ええ、天使教が普及しているのは欧州のみです。その他の国々では、天使教の考えは受け入れられておりませんね』
ほうほう、他の国々って言うと、例えばどんなのがあります?
『秦は皇帝、エジプトは王が絶対の存在です。そこに天使が介入する余地はありません。また、インドや中東では魔法使いが絶対視されています。ここにも天使が介入する余地が無いのです』
インドって神様が多いイメージだけど?
天使じゃない神様っていないの?
『インドではバラモン教の司祭が、絶対者として君臨しています。しかも、こちらの世界では魔法という強大な力を有しているのです。その為、神の権威を借りる必要が無く、ヒンドゥー教へと変貌する事も無かったのです』
なるほどね。
魔法の存在によって、こっちでは歴史の流れが違ってるって事か。
そうなると、日本はどうなってるの?
天皇って言う神の子孫が居るんだけど?
『大和国の情報は、殆ど伝わっていないのです……。ただ、神を祭ってはおらず、独自の文化体系を築いているとだけ伝わっていますね』
うーん、全然わからない。
調べられるなら、どこかで調べてみたいな。
自分の生まれ故郷だし。
どうなってるかは、やっぱ気になるよね?
『ふふふ、では機会があれば情報を集めましょう。アフリカへ渡った後は、東へ進むつもりです。そうすれば、少しは情報も入って来るでしょう』
アフリカからって事は、エジプト、アラビア、インド、中国とかかな?
歴史の授業で習ったシルクロードだね。
エキゾチックな香りがするね!
『ルートは概ねその通りですね。それで、他に質問は御座いますか?』
そうだね……。
あ、前の戦いで使った、『疑似・魔人化』ってのを知りたいかな。
あれってどんな力なの?
めっちゃ強くなれたけど、その後に力尽きたんだけど?
『あれは、ある種の魔法の奥義です。本来ならば、魔法を極めた者のみが使える力。ご主人様でも、心の力が高まり、ワタクシの補助があって、初めて使えるという代物となります』
そんな凄いものだったんだ。
いや、使用後の力の抜け具合は凄かったけどさ!
という事は、切り札的な感じ?
頻繁には使えないんだよね?
『今のご主人様では、まだ自由に使えませんね。とはいえ、いずれは使える様にしたい所です。あれが補助無しで使えて、初めて魔王の前に立つ資格を得るのですから』
マジかー。
あれが使えて、初めてスタートラインに立った的な?
魔王って半端なく強いんだね。
仲間を集めないと、倒すのは無理そうだ。
『まあ、そちらは追々で良いでしょう。旅はまだまだ長く続くのですから』
確かに焦ってもしょうがないか。
気長に考えるしか無いよね。
強い仲間が増えると良いね。
信頼出来る仲間なら嬉しい所だね。
『ふふふ、明日も御座いますので、今日の所は御終いと致しましょう。質問が御座いましたら、明日以降でも時間は十分に御座いますので』
うん、そうだね。
オレもそろそろ眠くなって来た所だし。
それじゃあ、お休み。
また、明日ね……。
『ええ、お休みなさいませ。良い夢を、ご主人様……』
アン・ズーの声と共に、オレの意識はゆっくりと落ちて行く。
アン・ズーの言う通り、良い夢を見れると良いなと思いながら。