表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/73

現状の確認

 オレ達は馬車を手に入れ街を後にした。

 手に入れた馬車は、当然ながら幌馬車。


 雨風を凌げるし、積載量も多いからね。

 冒険と言えば、やっぱこれだよね!


 しかも、本来なら体格の良い馬が二頭で引く馬車。

 その広さも中々の物である。


 更に当然ながら、御者はアン・ズーだ。

 むしろ、アン・ズーしか手綱を引けない。


 黒王号が、アン・ズーの言う事しか聞かない為である……。


「ふふふ、素晴らしい。実に素晴らしいですよ、黒王号」


 まあ、アン・ズーはご機嫌だし問題ないか。

 御者は彼女に任せておこう。


 そして、オレとラザーちゃんは荷台部分に乗車している。


 本来なら乗り心地は最悪らしい。

 しかし、アン・ズーの魔法が効いている。


 『浮遊フロート』の魔法で重力が緩和され、揺れもかなり軽減されているのだ。

 これなら、長時間の移動でも、酔ったり、体が痛くなったりしにくいだろう。


「そういえば、この先の予定を伝えておりませんでしたね。少し話しておきましょうか」


 アン・ズーは黒王号を堪能し終えたらしい。

 ようやく意識が帰って来てくれた。


 一本道を真っ直ぐだからだろう。

 アン・ズーは、こちらに振り向き説明を始める。


「途中の村や町で補給は行いますが、基本的には野宿中心で先を急ぎます。魔女狩りが横行しており、何が切っ掛けで事故が起きるかわからない為です」


「魔女狩り、ですか……」


 ラザーちゃんは、青い顔で呟く。

 彼女にとっては、馴染みが無い言葉だろう。


 オレとしても、知識として知ってるだけ。

 実際に見た事は無い訳だけどね。


「そして、この道中は魔法の使用を控えます。少なくとも、人前では隠す様にする必要があります。――まあ、この馬車の様に、見分けにく魔法は使いますが」


 うん、『浮遊フロート』は絶対に必要。

 これ無しの旅は洒落にならない。


 隣のラザーちゃんも、激しく首を振って同意している。


「ただ、自衛の為には使用します。この国の魔物は、スイスの傭兵団が対処しています。良い顔はされませんが、傭兵が魔法を使う事自体は黙認されていますので」


 ん? スイスの傭兵団が?

 自国の兵や傭兵は戦わないのかな?


 オレの疑問を読み取ったらしい。

 アン・ズーは自然な形で説明を続ける。


「ああ、ちなみにフランスは欧州の食糧庫。自国の戦力は殆ど持たず、経済力で周囲との関係を築いています。実質の所、ローマの属国と言えなくもない状況ですが……」


 ローマの属国?

 ローマって教会のある方? それとも帝国の方かな?


 その疑問にも、アン・ズーは説明を繋げてくれた。


「そして、ワタクシ達が向かう先がローマ帝国です。この国は、ローマ皇帝、ローマ教皇、元老院の三つが睨み合っている状態。そして、天使教の総本山があり、欧州に絶大な影響力を持つ国です」


 天使教か……。

 この世界には天使が存在する。その為に、発展した宗教だろうな。


 なら、この世界にはキリスト教が存在しない?

 世界の宗教も大きく異なるのかな?


『補足すると、この世界には神という概念が存在しないですね』


 ……ん? んんん?

 神という概念が存在しない?


 アン・ズーの補足に混乱する。

 そうすると、世界の宗教はどうなってるんだ?


『その辺りは、別の機会に詳しく説明しましょう』


 うん、今はラザーちゃんもいるしね。

 アン・ズーも説明しずらい状況だろう。


 ラザーちゃんが寝ている時とか、二人でゆっくり話せる時に確認しよう。


「ワタクシ達はフランスを抜け、ローマ帝国を目指します。その後、更にローマ帝国を抜けて、海の先のアフリカへと渡ります」


「そんな遠くまで……。まったく、想像出来ないです……」


 ラザーちゃんが、完全に呆けている。

 理解が追い付かない状況みたいだ。


 国の移動も大変みたいだし。

 普通はそんな長旅、行わないだろうからね。


「まあ、その先もあるのですが、一旦の目標はその辺りでしょうか。アフリカに辿り着くだけでも、数か月は掛かるでしょうしね」


 やっぱ、その位の時間は掛かってしまうのか。

 飛行機も無いし仕方がないね。


 となると、仲間を集めてからの魔王討伐。

 達成するのに数年は掛かるのかな?


「まあ、ゆっくり前へ進みましょう。焦っても良い事など、ありませんからね」


 確かにアン・ズーの言う通りだな。

 ゆっくり確実に進めば良いのだ。


 どうせ、オレの目的は急ぐ物じゃない。

 元の世界に戻りたい訳でも無い。


 一応、両親の事は少し気になる。

 けど、両親は共働きで放任主義だった。


 オレが居ないなら居ないで、すぐに慣れてくれるだろう。


『…………』


 ……ん? 何だろう?

 アン・ズーの視線を感じた気がしたけど?


 アン・ズーを見るが、彼女の顔は前を向いている。

 こちらを見てはいない。


 恐らくは気のせいだろうな。

 オレは頭を振って、馬車からの景色を楽しむ。


 こうしてオレ達は、のんびりと前へと進み続けた。

<蛇足な補足>

・本来、馬車は整備された道を走る物です。

 そうでないと、車輪がは溝にはまったり、

 最悪は壊れたりしてしまいます。


・ラノベの主人公が良くやるスプリング式の馬車。

 あれが無いと揺れが酷くて馬車の乗り心地は最悪だとか。

 それを魔法が解消してくれるアン・ズーさんなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on
cont_access.php?citi_cont_id=614561884&size=300
― 新着の感想 ―
[良い点] ローマ帝国があるんですね。 それと神という概念がない世界。 この辺の世界設定が面白いですね。 良い意味で現実の歴史をちゃんぽんにした感じですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ