表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/44

7

ウォルバートン先生の家につくと、村人達が数人集まっていた。中にはベンジャミンさんもいる。この時間は畑に出ている人達だった。

 「おお、クレイとメーラか。どうも、また、吸血鬼が来たみたいだ」

 「この村も変わったなあ。吸血鬼に好かれる村になるとは」

 「あんた達がうちの野菜食べてくれるとありがたいんだけどねえ。吸血鬼じゃそうはいかないねえ」

 おっちゃんとおばちゃんがそう言って笑う。

 家の中に入るとメイヤーさんが手招きしてくれた。病室のベッドがある部屋だ。

 消毒液の匂いに鼻がつんとなる。

 病室に入ると、見知った顔がベッドに横になっていた。

 「あ、アカーリア!」

 クレイとメーラは同時に叫ぶ。

 「しい!大きな声ださないの」

 「ご、ごめんなさい、びっくりして」

 「何でここにいるんだ?こいつの家とは別方向なのに」

 「メーラ、この子の家知ってるの?どこ?」

 メーラがメイヤーさんにアカーリアの家について話している間に、クレイはアカーリアの顔を覗き込んだ。ちょっと顔色が悪い気がするが、吸血鬼ならば問題ない程度だ。

 「あの、倒れていたって聞きましたけど・・・?」

 「そうなの、ベンジャミンさんが朝早くに村の入り口で見つけたんですって。すぐにウォルバートン先生を呼んで、ここに運び込んでくださったみたい」

 「・・・ってことは、アカーリアは昨日パッパース村に着いたのか?でも、なんで?」

 メーラが首をかしげる。

 そこへ、ウォルバートン先生が来た。

 「ああ、クレイ、メーラ、来てくれたんだね。ケビンのところにいけなくて済まなかったね。朝からバタバタしてたんだよ。それで?この子は君たちの友達かい?」

 「はい、アカーリアです。吸血鬼の」

 「先生、アカーリアはどこか怪我しているんですか?」

 「いいや、足が大分汚れていたけれど、どこにも怪我はなかったよ。倒れていたってのはおそらく疲労じゃないかと見ている。それか、お腹が空いているか」

 「・・・・・・」

 クレイ達が黙りこむと、先生が笑った。

 「そんな心配しなくても、お腹が空いているのなら私の血をあげるよ。ステアさんで慣れているしね」

 「ありがとうございます」

 メイヤーさんが深々と頭を下げた。

 「それよりも、心配なのはどうして倒れるまで無茶をしたかってことだね。たぶん、このアカーリアちゃんは森の中を歩き続けたんだ。靴があんなにボロボロになるほどに」

 そう言って、先生はベッドの下におかれているアカーリアの靴を見た。確かに靴はボロボロだった。土と草がひっついて、中まで汚れている。かなりの悪路を歩いてきたらしい。

 「なんで、飛んでこなかったんだ?蝙蝠になればいいだけなのに・・・」

 メーラが呟く。

 「まあ、その辺りはこの子が起きてから聞くとしよう。ひとまず、この子の素性がわかってよかった。この辺りじゃ見かけない子供が倒れていたって聞いて、村中が大騒ぎになるところだったよ。遠くの町で誘拐された子供が逃げてきたんじゃないかってね。誘拐犯が隠れているかもしれないって、森の中を探索するところだった」

 先生はほっとした顔をした。

 「さて、それじゃあケビンの様子を見に行こうかな。どうだい?ケビンは起きたかい?まだ寝ているかい?」

 「あ、さっきまた、寝ちゃいました。でも、ご飯は食べました。半分くらい」

 「あ、そうなのかい。それじゃあ、お昼過ぎくらいに行こうかな」

 ウォルバートン先生は持ちかけた黒い鞄を、手放した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ