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 「・・・星。夜空に浮かぶ満点の星」

 ケビンは、水晶玉に目を凝らしながら呟く。

 「ほう?」

 「ふむ・・・」

 ステアとタロルが意味深な声をあげた。

 「見せて」

 「あ、俺も見たい!」

 クレイを筆頭に、子供たちが水晶玉を覗き込もうと押し合い圧し合いする。

 そこに見えたのは、黒を背景に、キラキラした光の粒だった。

 たしかに、夜空に浮かぶ星だ。

 「星?砂粒に見える」

 メーラが言った。

 「ん?そう言われれば・・・」

 ケビンも首をかしげて、そう呟く。

 「え?そうかな?星空じゃない?」

 「私は銀色のビーズに見えるわ」

 「粉砂糖に見える」

 「いいや、砂粒だ。夜の砂漠。月明かりに照らされて、キラキラと輝いてる」

 メーラが自信を持って断言する。

 夜の砂漠を見たことがないクレイにはわからない。ケビンは「たしかになあ」と頷いている。

 ステアがケビンの手から水晶玉を取り上げた。

 「そう、そこが水晶占いの困ったところなのだ。見ていろ」

 ステアはそう言って、ケビンから水晶玉を取り上げ、両手で持ち、魔力を込める。

 ごおっという音と共に、ステアの周りに風が吹いた。ジェナの長い髪が一瞬浮き上がる。

 水晶玉は青く光り、玉の中に何かが動いていた。

 「玉の中に何が見える?」

 ステアに言われ、玉の中を見ると、嵐の空が見えた。風が吹き荒れ、雨が横殴りに降っている。

 「虫がぶんぶん飛び回ってる」

 「え!?嵐でしょう?風と雨だよ」

 「なんか、よくわかんない。黒い点がいっぱいあるように見える」

 「うう、なんかそれ嫌だ。虫みたい」

 子供たちの意見は、いくつかに別れた。

 ステアは頷く。

 「私には、何かの文字の羅列に見える。初めて見たときは、細かくかかれた文章だと思った」

 「ああ、なるほど・・・見る人によって解釈が変わるのか」

 ケビンが呟くと、ステアとタロルは大きく頷いた。

 「そう、まさに占いなのだ。占う人物の主観によって、その結果が変わる。大きく変わることもあれば、若干の差異がでることもある。最初に風が吹いたのに気づいたか?あれも水晶占いの結果なのだ。私は風の魔法が得意であるということになる。しかし・・・」

 ステアがもう一度水晶を持ち、魔法を使うと、今度は熱風が吹いた。

 「あ、熱い!」

 「熱魔法が加わった。私は風と火の魔法に強いという結果だ。しかし・・・」

 そのあと、ステアは冷たい風、湿った風を出して見せた。

 「この通り、魔法のこめかたによって結果もまた変わってくる。つまり、水晶占いとは、占われる側の体調と精神状態、そして、占いを判断する方のものの見方で結果が大きく左右されるのだ。一定の結果と客観的な判断が出されない、全くもって信頼のないものなのだ」

 「・・・これ、何に使われてたんだ?」

 「大昔は自分に合った魔法を判断し、それを重点的に伸ばしていくために使われていた。魔法を覚えたての子供で試し、結果を見て勉強していく魔法の種類を決めていたのだ。ただ、さっきも見た通り、結果は変化する。成長期の子供なんて変化満載の時期だ。そんな時期に学ぶ魔法の種類を限定されてしまっては、伸びるものも伸びない。一握りの魔法使いには有益だったが、それ以外には役に立たないどころか、害があった。100年たたずに、この方法は使われなくなった」

 「へえ・・・それで、オレは何がわかったんだ?星か虫か結果はよくわかんないけど」

 ケビンが困った様子で頭をかく。

 クレイもよくわからなくなっていた。師匠が言うように全くの信頼のない方法なのだとしたら、どうして茶太郎はこれをやってみろと言ったのだろう?

 「水晶占いにも、一つだけ信頼が高そうなやり方があるのだ。それは、占われる側が、水晶占いについて知識がない状態でやること。小細工ができないからな。そして、占う側もまた、知識がないこと。水晶の中に浮かんできたものを、見たまま口にして、それを結果とすること」

 「ああ、なるほど、それで条件が揃っていると言ったのか」

 ケビンは子供たちを見て呟いた。

 ステアは頷く。

 「さっきお前と子供たちが口にしたものが、水晶占いの結果だ。それを、文献と照らし合わせてみて、お前とにたような魔法使いの情報を探してみよう。お前の魔法はよくわからないからな。使い方が私やクレイたちとはまるで違う。似た魔法使いがいれば、なにかしら参考になるだろう」

 ステアはそう言って、水晶玉を懐にしまった。

 「そうか、それじゃあ、頼むよ」

 ケビンはソファーに身を沈めるようにして、そう呟いた。

 「ん?疲れたか?」

 ケビンの様子を見て、ステアがケビンの顔を覗き込む。

 「うーん、ちょっとね・・・」

 ケビンはそう言うと、大きくあくびした。

 「よし、寝てこい。ウォルバートン先生には、昼過ぎに来てもらうようにしよう」

 ケビンは少し迷ったようだが、眠気に勝てなかったようで、素直に頷いた。



 眠気でふらつくケビンをジェナとステアが支えながら、部屋へと連れていった。

 クレイは自分も手伝おうと立ち上がったが、マーテルに止められた。

 「ジェナにお世話させてあげて。ずっとケビンと会いたがってたから」

 そう言われ、クレイは三人を見送った。

 ケビンは相当眠いらしく、首がぐらぐらと揺れている。

 「クレイ、新しい水差しを持ってきてくれ」

 ステアにそう言われ、クレイは立ち上がる。

 マーテルは「んもう!」と不満そうな声をあげたが、「じゃあ、私も」と言ってケビンの部屋へ駆けていった。

 クレイはミック達と一緒に、新しい水と果物とパンを少し皿に盛り、持っていった。

 部屋につくとケビンはうつ伏せになって、寝息をたてていた。

 「早ええ、もう寝たのかよ」

 「ケビンは飲み会でも父ちゃん達を介抱する側なのに・・・」

 「なんでこんなに疲れてるんだろうなあ・・・やっぱり、魔法のせい?」

 ケビンの寝顔を見ながら、ミック達が首をかしげる。

 「魔法じゃない。俺たちがピンピンしているのに、ケビンが倒れるほど疲れるなんてありえない。もっと別の理由があるんだ」

 メーラもやってきてそう言った。

 ジェナが不安そうな顔で、ケビンに布団をかける。

 クレイは仲間達の表情を見ながら、申し訳ない気持ちになった。

 「あ、あのさ・・・、ケビンは元気になるよ。絶対。昨日よりも元気になってるもん!ちゃんと休めば絶対にいつものケビンになる!」

 クレイの言葉に、皆の顔が少しだけ明るくなる。

 「それに、もう、こんなことにはならない」

 「?どういう意味だ?」

 メーラが首をかしげて聞いた。

 クレイがそれに答えようとしたとき、部屋の窓がひとりでに開き、一匹の蝙蝠が飛び込んできた。

 「大変!大変!クレイとメーラ、今すぐウォルバートン先生の家まで来て。あなた達の友達が来ているの。村の前で倒れていたみたい!」

 蝙蝠はメイヤーさんの声でそう言うと、すぐに窓からでていった。

 クレイとメーラは顔を見合わせ、慌てて城を飛び出した。 


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