コーヒー味の紅茶
私の朝は毎日決まったルーティーンで過ぎていく。
6時に起床、7時には身支度を済ませ、それから朝食を食べる。
朝食のメニューに決まりはないが、
私は毎朝、1杯コーヒーを飲む。
豆や淹れ方にこだわりはない。
市販のコーヒーだ。
今日も、同じようにコーヒーを飲んでいた。
「…今日は何の日だっけ。」
遠目から見たカレンダーには赤い文字で何かが書いてあった。
『紅茶記念日』
カレンダー書かれたその文字は私と彼との思い出を物語っていた。
私には6年付き合った彼氏がいた。
大学が同じで、彼は私のひとつ下の後輩だった。
なんで付き合ったのかも、なんで別れたのかも、もう覚えていない。
彼が初めて私の部屋に来た時の事だった。
私の中で、何かが崩れた気がした。
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「先輩、毎朝コーヒー飲んでるんですか?」
「うん、もう癖でね。」
「俺は朝は紅茶派です。」
「…紅茶、入れよっか。」
私はコーヒーの瓶の隣のティーパックを取り出した。
まだ封もあいていなかった。
その日初めて、お揃いのマグカップに、紅茶をいれた。
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「思えばあの日以来、紅茶、飲んでなかったっけ。」
私は埃のかぶったティーポットを手に取り、紅茶をいれた。
それから、飲みかけのコーヒーにそれを注いだ。
「…まっず。」
1口飲むと、キッチンに向かい、棚から新品のようなマグカップを取り出した。
そして、まだ重みのあるティーポットと一緒に地面に投げつけた。
口の中のコーヒー味の紅茶は未だに消えてくれなかった。