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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

草木も眠る深夜1時。

作者: park_1254

 草木も眠る深夜1時。蛍光灯も目を閉じた月明かりで、時計の針と冷蔵庫だけが静寂を揺らしている。

 そっと開けたはずの窓の音が、それでも大きいような気がした。

「しいちゃん?」

 きりちゃんの声がする。

「月、すごいよ。雲が見えるくらい」

 開け放たれた窓から、冷えた空気が流れ込んできた。

 二人でしゃがみこんだまま空を見て、ちょっと体をくっつけたらきりちゃんも寄りかかってくれた。

 お風呂の熱とシャンプーの香り。髪はちゃんと拭けてるかな? 風邪引いたら大変だもんね。

「…バイト、受かってよかったね」

「うん、長時間はほんとありがたいって」

「そっか」

「でもきりちゃんのお弁当はちゃんと作るから!」

「はは、ありがと。……」

 下を向いて髪をいじりだしたから、私は黙って待つことにした。

「……その、怒らないで聞いてほしい…」

「うん」

「…おじさんにあんなかっこいいこと言ったけど…」


 私、しいちゃんを幸せにできるのかなって。


「おじさんのところから連れ出して、こんな狭いアパートでさ。…あ、わ、私はすごい幸せなの! しいちゃん来てくれて、残業も平気になったし! …私の一生で使えるお金とか時間とか、全部しいちゃんにあげちゃってもいいし! …でも、それでも足りないのかなって。私のせいで、しいちゃん大学も中退にされて、進路も全然変わっちゃって、私ご飯作るのもあんまりだし、…もやし多いし」

 どんどん声が小さくなるはとこ。かわいい。

「…そうだね。最初なんにもなかったよねここ」

「う…」

「埃っぽくて、お鍋なくて。フライパンでうどん茹でたよね」

「うう…」

「…でも私、きりちゃんが好きだよ? …きりちゃんは私のこと」

「好きだよ」

 まっすぐ私を見てくれた。

「ないものばっかりだけど、私が…、私がしいちゃんを好きなのは、それだけは絶対本当だから」

「うん、じゃあ私ここにいる。…きりちゃんと一緒がいい」

 ぎゅっと包んであげた。伝わるかな、私が幸せなこと。

「…ありがとう…」

「…それに、お母さん最初から大学は嫌だったみたい。それでお見合いって」

「そうなの?」

「うん。『めかけの子はよそにやれ』だって」

「目欠け? しいちゃん目が悪いの?」

「ん? 目はいいよ? …なんで急に目の話?」

「…目の話じゃないの?」

「……ぷっ! あはは…やっぱりきりちゃん大好き」

「ん? え? え…? …やったぁ」

「……ね、きりちゃん」

 目を閉じて、少しだけ上を向く。

「…しいちゃん…」

 まだ少しだけ緊張する両手が頬を包んで、唇が優しく触れ合った。

今回の着想を得た曲は椎名林檎

「アンコンディショナル・ラブ(無条件の愛)」です

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