プリン争奪戦①
今日は20××年5月6日長いようで短かったゴールデンウィークが過ぎ、
僕は学校へ行く準備をしていた。
「よし!今日はアレの日だ絶対負けない」
僕は冷蔵庫に貼られてある、献立表
を見ながら、やる気とテンションを
上げてる中、ピンポーンという気の抜けたチャイムの音が鳴る。
そのチャイムの音を聞いた母さんが
玄関の扉を開けに行った。
「おはよう、あやちゃん今日もお迎えありがとね、ゆう!あやちゃんが迎えに来たんだから、いつまでも冷蔵庫の前にいないで学校に行きなさい!」
僕はその言葉を聞き、自分の部屋にある胸ポケットに赤いワッペンのついている学ランを着た後、玄関に行く。そこには僕のクラスメイトであり、隣の家に住んでる幼馴染みの綾がいた。
「おはよう、悠」
「なんだ、綾またお前は僕の迎えに来た…」
ペチン
僕の言葉が言い終わる前に頭を叩かれる。
「あんたね!いつも遅刻しそうなあんたが遅れないのはあやちゃんのお陰でしょうが!それを挨拶もしないでベラベラと〜」
母さんの、説教は長い事を知っている僕は急いで靴を履き綾の手を引っ張り玄関を飛び出す!
「あ、コラ待ちなさい、ゆう!まだ説教は……」
「母さんの説教は、長いから帰ってから聞くよ〜」
そう言って僕は、綾の手を握ったまま走って学校へ向かった。
☆
ー通学路ー
うるさい説教から逃げ、暫く走ってると、見たことある3人組を見つけたが
無視して横をすり抜けた
「うわっ朝から手なんか繋いで」
「お熱いでヤンスね〜」
「羨ましい」
そんな声が聞こえてきた……が
僕はそのまま走り去った。
「待てよ!そこは立ち止まってキャラ説明するとこだろうがよ〜」
「そうでヤンスよ!せっかく変な口調で話しかけてるんだから」
「扱いが雑」
「うるせぇー幼馴染みだから一緒に登校してるだけなのに、毎日絡んで来るんじゃねーよ」
今僕たちを追いかけてる赤いワッペンを付けた3人も僕が在学している清潭中学校2年2組のクラスメイトである。因みに青いワッペンが1年生、黄色いワッペンが3年生である。
「悠、ごめん…私疲れてきた」
走り始めてから約10分ほどが経ち
後ろにいた3人が見えなくなったのを確認して僕は走るのを止めた。
「まだ、10分くらいしか走ってないのにもう疲れたの」
「悠は男の子だけど、私は女の子なんだから少しは優しくしてよ」
「でも、ペースは遅かったから、まだ大丈夫だと思って」
「もういいよ、前に秋ちゃんがいるから秋ちゃんと学校に行く」
そう言って僕から50メートルほど前方にいた女の子の元へ綾は走っていった。
「チェ!まだ走れるじゃんかよ」
そう言って近くに落ちてあった空き缶を蹴り飛ばすと同時に、走っていたせいか、靴紐の緩くなった靴も空き缶と一緒に空中へ飛んでいく。それがまた漫画のように飛んでいき僕より少し前にいた女の子の頭の上に靴が着地した。
「あっすみません、その靴僕のです」
僕は、笑いを堪えながらもケンケンしながら近づくと頭に着地した靴を
手に取り女の子は後ろを振り返った。
「あなた、高畑悠平君って言うのね」
「えっ」
ボゴッ
そう呼んだ矢先、彼女は僕と少しあった間合いを一瞬で詰め、僕の肝臓付近を目標としたパンチ、リバーブローを見事にクリンヒットさせた。
勿論片足立ちの僕に耐えれる訳はなく、見事に崩れ落ちた。
「ごめんね高畑君、名前はこの靴に書かれてあったから解っただけなの、それとね、やられたらやり返すそれが私の美学なの」
そう言って持っていた靴を僕の頭の上にのせる。
(えっどゆこと?僕の頭の上に靴をのせる事は理解できても、なぜにリバーブロー?あれだよねやられたらやり返すって、同じ事をやり返すって事だよね、違います?担任の福塚先生、もう先生に日光の光りを定規で反射させて遊ぶの止めますから教えて下さい)
「高畑君何か言いたそうだけど何か?」
「いやぁ見ず知らずの人にいきなりリバーブローって言うのは流石にあんまりじゃないかと…」
「ごめんなさい、最近はじめの◯歩
にハマってて、ついリバーブローをしたくなっちゃったの」
「そんな最近ハマった漫画の影響だけで人を実験台扱いするな!」
「勘違いしないでね高畑君、たまたま私がゴールデンウイークにハマっただけで、使うきっかけを作ったのはあなたなのよ」
「僕か!僕が悪いのか!」
「そうよ、全面的にね」
「待て!罪を全て僕に擦りつけるな!百歩譲ってきっかけを作った僕が悪いとしてもやりすぎだ!」
「そう、高畑君は百歩譲ってくれるのね、でも私は譲る気はないわ」
「くっ、しまった言葉の綾にやられた!」
(だめだこいつは理屈が通じない奴だ)
すると僕の前に手が差し出された
「まぁ、冗談はこの位にしてそろそろ立ち上がったらどう?痛みもなくなってきたんじゃない?」
言われた通り痛みは和らいでおり僕は彼女の手を借り立ち上がる。
「そうね、流石にリバーブローはやり過ぎたわね、ボディーブローにするべきだったわ」
「僕が怒ってるのは殴った部位の話しじゃないからな」
「そうね、代わりと言ってはなんだけど何か一つお願いをきいてあげようか」
「どうせお前の事だ、お願いを聞くだけか、きいてもやり返してくるんだろ」
「あら以外、あなたにも、考えられる脳みそがあるのね?」
「そんな、純粋に驚いてんじゃんねーよ……そうだな、ならお前の美学の通りにいこうか」
「私の美学…」
そして僕は彼女に近づいた
「お前の名前はなんて言うんだよ」
そうだ僕は彼女を知らない、彼女も僕と同じ赤いワッペンが付けられており、同学年である事は間違いないが、名前も知らなければ顔にも見覚えがない…勿論同じ学年といえど100名ほど入れば顔に見覚えがない事もあるだろう、だが彼女は正直美人で、あり性格も捻くれてる、こんな奴を知らない事はほぼありえないと思った。
「何か今失礼な事を言われた気がしたけどまぁいいわ、確かに私だけ高畑君の名前を知っているって言うのは不公平ね」
そう言って彼女は1度前髪を整えて改まって名乗った。
「今日からこの清潭中学校に転入してきました、柊昴と申します。まだクラスは解りませんがこれからもよろしくお願い致します。」
さっきまで、リバーブローを放ってきた女の子とは思えない律儀で丁寧な挨拶をした。
「僕は清潭中学校2年2組高畑悠平だこれからよろしく」
そして互いに挨拶を済ませた後、彼女は僕らの登校時間よりも早く職員室に行かなければならないと言い小走りで学校に向かったが踵を返しもう一度僕の近くに来た。
「そうだ、高畑君私の事は下の名前で昴って呼んでいいわ」
「そうか、なら僕の事も下の名前で悠って呼んでくれ」
「わかった…またね悠」
ズキン
彼女は笑顔でそう言うと学校の方へ向かった。
(痛みが和らいだと思ったのにまだリバーブローの痛みが残ってたのか?)
そして僕も先ほど抜き去った3人組が
追い付いて来たので一緒に学校へ向かった。