表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

第1話

久しぶりの新連載です。

相変わらずの駄文及び過去作品と同様のマイペース更新になりそうですがどうぞよろしくお願いします。

ぱらり、ぱらり。ただ、ページをめくる音だけが響く図書室の一角。

瞳の色は澄んだ泉のような青色で、肩までかかっているであろうきれいな金髪をひとまとめにしている少女はひたすらに魔物の絵が描かれた本を読んでいた。

真剣な顔で本を読んでいた彼女だが、ふと顔を上げると壁に掛かっている時計を見つめる。時計の針はもう夕方の六時を指している。

そろそろ戻らないとと思った少女は、本を閉じ棚に戻す。

そして、いつもの様に顔なじみの司書さんに軽く会釈をして外に出た。

不気味なほど真っ赤に染まっている空を見ると心がざわつき、なんだか昔を思い出してしまう様で息が詰まりそうになる。

少女は小さく息を吐くと町外れにある教会の方に向かって歩いて行った。 



「それじゃあ行ってくるわね、サリア。お土産買ってくるからいい子でお留守番していてね」 

「うん! 分かった!」

 

とてもきれいな金髪を持った女性がしゃがみこみ、彼女にそっくりな少女に向かって話しかけていた。そしてその少女もまた女性に対し、元気に答えていた。


「おい、リズリー。荷車の準備できたから出発するぞ」 


そう声をかけた男性は少女の元に歩み寄ると抱き上げた。


「サリア、少しのあいだ父さんと母さんは王都の友達の所に行ってくるけどいい子で待ってるんだぞ!」

「うん、パパ分かってるよ。私、さっきママとも約束したから大丈夫。それに私、もう8歳になったんだから。」 

「そうか! サリアは良い子だな!もし、困った事になったら教会の神父様かギルドのおじさんに言うんだぞ」 


そう言うと男性は少女を優しく抱きしめ、地面にそっと下ろすと、リズリーと呼ばれた女性と共に荷車の方に向かった。

そして男性は前の所に座ると細長い小さな鍵を取り出しハンドルの近くにあるくぼみに差し込んだ。

すると荷車はがたがたと小さく振動を始め、準備万端と言わんばかりにうなるような音出しはじめる。

男性は片手でハンドルを持ち、見送る少女に小さくもう片方の手をあげ微笑みかけると、足下にあるペダルを踏み、荷車を進ませた。

少女は両親を乗せた荷車が見えなくなるまで必死に手を振り続けていた。


次の日の夕方、それはとても空が赤く不気味に染まってる日。

少女の元に知らせが届いた。

少女の両親が使っていた荷車がぼろぼろに壊されていた事。

恐らく魔物にやられたんだろうという事。

そして、死体は見つかってはいないが、恐らく彼女の両親が帰らぬ人となってしまったという事だった。

その後何度かこの町の近くでここら辺では見ないような凶暴な魔物が確認されるようになり、恐らく少女の両親はそれに襲われたのであろうと言われた。

両親以外にも、隣町などに行くために、町の外に出た人、討伐に向かった冒険者や自警団がそれの犠牲となり、町の戦力だけでは対処しきれないと判断された。

そのため王都から騎士団が派遣される事になり、無事に驚異は払われる事となった。

しかし、少女の心の苦しみは当時と比べればだいぶ薄れてきたものの、ふとした瞬間に思い出され少女の心を苦しめていた。 



「あ、サリア! お帰り」 


不意に声がかかり少女がそちらを見ると、茶色のショートヘアをした修道服を着た少女が笑顔で手を振っていた。 


「ただいま。コレット」 


サリアと呼ばれた少女はふわりと優しく微笑みながら、返事をした。気がつけばもう教会の近くまで帰ってきていた。考えごとをしながら歩いていたせいか全然気がつかなかった。 


「ちょっとサリア大丈夫? なんか顔色悪い気がするけど?」 

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。そういえば、コレットはこんな時間に表に出てどうしたの?」 

「サリアがもうすぐ帰ってくると思って外に迎えに来たのよ。 そしたらちょうどのタイミングで帰ってくるんだもん。 我ながらさすがだと思ったわ」 


そう言ってエヘンと胸を張るコレットがなんだかおかしく見え、サリアは小さく 「ふふふ」 と微笑んだ。

それは、先ほどの暗い姿からは想像もつかないほど可愛らしく、薄暗い夕闇の中、彼女の所だけが優しく照らされている様だった。


「とても嬉しいわ。 ありがとう」とコレットにお礼を言うと、それを満足そうにコレットは見つめ、「よし、じゃあ早く食堂に行きましょう。 私お腹すいちゃった」とおどけた調子でそう言って自分のお腹をさすった。


サリアは笑顔で小さくうなずくとコレットと共に教会の食堂へと向かった。

それから他の孤児やシスター達と団らんの時間を過ごし時計の針は夜の九時を指し示す。

先ほどお風呂からでてきたサリアは、部屋に戻ると少しだけ本を読んでから今日は休もうと思い、以前図書館で借りた本を鞄から取り出しベットに寝そべると本を開いた。

しばらくの間本を読んでいるとドアが開き中にコレットが入ってきた。 


「あれ? サリアまだ起きてたの?」 


そう言いながらコレットは自分のベッドに腰をおろした。 


「うん。図書館で本を借りてきててそれを読んでいたの」 


サリアはそう答えるとコレットの方に顔を向けた。彼女はお風呂から出てきたばかりなのか、髪はまだ濡れていた。


「えー、教会に帰ってきてからも勉強してるの? ちょっとがんばりすぎじゃ無い?」 

「大丈夫よ、そんな事無いわ。 それに、これ物語だから。私の楽しみの一つよ」 


そう言ってサリアは微笑んだ。 


「なら、まあいいけど。 それにしてもサリア、あんたよく毎日飽きずに本ばかり読めるわよね。私なら三日でやめちゃう自信があるわ。」 


コレットはあきれたように笑いながらそう言った。


「そんな大した事じゃ無いよ。 それになんだか楽しいしね」

「そんなこと言って・・・・・。あんた色々詰めすぎよ。 先月からオーゼさんの所でアルバイトだって始めてるでしょ。 アルバイトが休みの日だって図書館でずっと本ばかり読んでるし。あんた、朝起きるの苦手なんだから本ばっか読んでないでさっさと寝なさいよ」


コレットにそう言われ「はーい」とサリアが答え本をベットサイドの机に本を置いた。

コレットはそれを見ると「お休み」と言って明かりを緩めた。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ