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ユウとユウ  作者: 山家
3/9

「お母さん、同じプロダクションの先輩なの。ユウという読み方は同じなのだけど、この人は男で勇ましいの勇という漢字なの」

「はじめまして。ややこしいかもしれませんが、ユウといいます」

「はじめまして」


 母が玄関で勇の顔を見た瞬間、さっと顔に陰がはしったように見えたのは私の気のせいだろうか。母はお茶の準備をすぐにするわね、と声をあげて、台所に行った。私は勇を自分の部屋に招き入れた。すぐにすると母は言ったのに、母はなかなか来なかった。

「失礼だけど、あのお母さんと君とは似てないね。性格も顔も」勇は言った。

「まあね。プロダクションでも大抵、そう言われる。入った後で調べたら、よく入れたと思ったもの」私はそう言った。でも、性格は実は似ている。いつも、私は猫を被っているだけだ。時々、激情を発して見境が付かなくなる。母も同様だった。そのために母はいろいろとトラブルを起こしたし、芸能界から引退してしまった。


 母は二分の一成人式で、児童代表として発表をした際に、父(私から言えば母方の祖父)の虐待を告発した。自分や妹、母に言葉による暴力を加え、従わねば体罰を加えて、まともにしようとしている自分に感謝しろと強制しているといった。私はその現場に当然いなかったので、祖母からの又聞きだが、市長が親に感謝するようにと祝辞を述べた後で、事前に準備していたあいさつ文を変えて、二分の一成人式で読み上げた後、父のこのような行為にも心から感謝するように市長は言っておられます、市長は子供に対するこのような行為は虐待ではなく親の愛情だと言われています、私も父に心から感謝します、と最後に付け加えて述べ終えたそうだ。市長は慌てて登壇し、そのような行為は虐待です、断じて許されません、それは愛情ではありません、と述べる羽目になった。当時、祖母は祖父に半分マインドコントロールされていて、自分を責めてばかりいたそうだが、このことがきっかけになって市が介入して祖母の相談に乗り、祖母は子どもを引き取って、祖父と離婚することになった。


 母は中学に入った後、芸能界入りした。それなりに売れるようになり、テレビにも出るようになった。その頃、祖父は体を壊して別の市に引っ越していた。離婚の際に祖母に慰謝料や財産分与、子どもの養育費として祖父は預貯金をほぼ譲り渡していた(といっても本当はスズメの涙で全部かき集めても100万どころか、10万も無かったらしい。)。それで、母に援助してもらおうとしたのだが、さっきいった事情から母は当然、拒否した。そのために祖父は生活保護を受けようとしたが、売れっ子芸能人の娘の支援があるのではと、当時、祖父が住んでいた市の生活保護の窓口担当者は考えたために、祖父の申請を拒否した。そのためもあって、祖父は孤独死することになったのだが、ネットで祖父の死が餓死であり、母が援助を拒否したためだ、と事実が捻じ曲げられたことから話がややこしくなった。母は激怒して、事実は異なるとして記者会見までしたそうだが、それで却ってネットの話が広まってしまい、芸能界から干されて引退する羽目になった。私が生まれたのはその直後だ。私の妊娠も母の引退の一因だろうが、記者会見等で母が激情を発して、ある意味で世間に喧嘩を売ったのが、芸能界引退の最大の原因とあっては、私でも母をかばえない。母を反面教師として、私は芸能界では猫を被りまくって頑張っている。


 いろいろ勇と話をして時間を潰しているうちに、母がお茶を持ってきた。気が付くと30分以上経っていた。

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