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ユウとユウ  作者: 山家
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「ユウ、あなたの名前はね、本当はイサミと呼ばれるはずだったの。でもね、お父さんが反対したの。幾らなんでもそこまでしなくても、それに古めかしい気がするって。それで、お父さんがユウと呼ぼうと言いだして、お母さんも賛成したの」


 母が今でいうところの歴女、新選組ファンなのは、僕が物心ついた頃から知っていた。それにしても息子の名前まで、近藤勇から決めたとは。僕はそれを母から聞いた時、父に感謝した。イサミと呼ばれていたら、自分と名前が余りにも合わなくなっていた気がする。僕はどちらかというと優男タイプで、ユウという漢字は優しいの優ですか、と聞かれるのがいつものことだ。勇ましいの勇です、というと優に改名した方がいいのに、という人までいるくらいである。ちなみに母は、次男には総司、三男には歳三と名付けたかったという(歳三を次男に名付けるべきだろうと思うが、三と言う数字から三男に名付けるつもりだったとか。それにしてもどれだけ新選組ファンなのか。)。


 僕が2歳の頃に、父は自損の交通事故で亡くなった。だから、僕は父の顔を直接は覚えていない。父の姿は写真と映像で見て覚えた。父は子役時代から演技力もルックスもある役者として、それなりに売れており、映画や連続ドラマにまで出ていた。母は父が出ている映画のDVDやテレビドラマの録画を全て保存しており、折に触れて僕に見せてくれたが、20歳で亡くなったにしては大量にあった。よく父は役者活動をしながら、高校を卒業できたものだ。高校生の頃は、さぞ学校ではもてたのではと思うが、実際には小さい頃(それこそ保育園の乳児クラス)からの知り合いでもある母が、ずっと高校では恋人として父に張り付いていたので、大抵の女性が父には手を出さなかったという。それでも、母は不安だったのだろう。高校の卒業式には僕を妊娠していて、卒業後すぐに父と結婚してしまった。


 父が亡くなった後、母は再婚せずに僕を育ててくれた。成長していく僕を見ると、お父さんによく似てきたというのが、母の口癖になった。母にとって、父は亡くなったことから永遠の恋人になり、僕はその形代になったのだろう。だが、僕は内心でそんな母に違和感を少しずつ覚えだした。母は、僕を息子として愛しているのではなく、父の形代として愛しているのではないか。それが、小学校高学年の頃には母への違和感から反感に僕の中で少しずつ変わりだした。


 中学生になり、母の反対を強引に押し切って、僕は父と同じように役者の世界に飛び込んだ。むしろ母が反対するから、役者になったと言ってもよいかもしれない。父のことを覚えている人は、大抵、僕に好意を持ってくれた。父は人当たりがよく、敵がほとんどいなかったらしい。そして、父の七光りのおかげもあり、役者の世界で僕は少しずつ地歩を固めていった。


 そして、2年が経ち、ユウという女の子と知り合った。ユウは同じプロダクションの後輩として入ってきた。マネージャーは、気を付けた方がいい、あの引退したアイドルの娘だ、とこっそり言った。だが、僕は何となく魅かれ、分け隔てなく付き合うことにした。彼女も僕に懐いた。しばらくたってから、男友達として、家に来ないと彼女に誘われ、僕はそれを受けた。

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