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ユウとユウ  作者: 山家
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「悠、あなたの名前はね、パパとママが一緒に考えたものなの。パパがユウという名前を考えて、私が悠という漢字を考えたの。あなたが産まれる前にパパは亡くなったの。あなたの名前は結果的にあなたに唯一、パパから遺されたものになったの。だから、自分の名前をパパの大事な贈り物として大事にしないといけないのよ」


 生活科での両親への感謝の言葉とか、二分の一成人式でのこととか、小学校時代の私には、単に苦痛に過ぎなかった。なぜなら、私にはパパの記憶が無い。パパは私が生まれる前に亡くなっている。それなのに、学校の先生は両親に感謝の気持ちを持って、それを授業できちんと発表しなさい、というのだ。だから、母親の話をそのまましてきた。そうすると、自分が発表した後で、周囲の雰囲気、特に参加している親の雰囲気が微妙な感じになるのを子ども心にもいつも感じてしまった。私は悪い子なのだろうか。でも、仕方ないじゃない、パパが死んだのは私のせいじゃないのに。私は内心でつぶやいてきていた。そのためだろうか、私は自分の名前に強いこだわりを持つようになった。自分の名前が原因でからかわれたりすると、敵わないと分かっていても立ち向かうようになった。気が付くと、私の名前をからかう人は誰もいなくなっていた。私はそんなふうに育って、小学校を無事に卒業した。


 中学校に入学してすぐに、私はあるプロダクションのアイドル候補生に応募してスカウトされた。もっとも、私はスカウトされた後で、そのプロダクションから半分丁重ではあったがお断りの連絡がすぐに届いてしまった。スカウトする前に調べるべきでは、と私は思うが、私をスカウトした後で、私の母の名前がプロダクションに分かったらしい。そして、私の母の名前は、そのプロダクションにとって大昔の恐怖を思い起こさせたらしい(らしいが続くけど、私には詳細が分からないので推測で、らしいとしか書けない。)。だが、私の母が猛抗議すると途端にそのプロダクションは腰砕けになってしまい、私をアイドル候補生に迎え入れてくれた。でも、私にとっては、それが良かったのかどうか。ともかくプロダクション内の多くの人にとって、私は腫物扱いになってしまった。


 そんな中でも、私のことを分け隔てなく付き合ってくれる人は、プロダクション内に少ないながらも何人かはいた。特に同じ名前の呼び名で2歳年上のユウという人は、私にとっては大事な人になった。向こうは勇という男の人で、私は悠という名の女だけど。同じ呼び名同士と言うことで、お互いに妙に気になってしまった。気が付くと私にとっては気になる大事な人で、単なる異性の友達では無くなっていた。まだ、私が中学生だから気が早すぎるけど、自分が高校生になったら、きちんとユウに告白して恋人になれたらいいな、と思うようになった。そうだ、今度、自分の家に案内して、母に紹介しよう、私はそんなことを思いついた。

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