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密やかに想う  作者: 水城雪見
本編
90/109

70.妖精経由

短いので、朝に一度投稿。いつもの時間に、後一話投稿します。



 母屋の3階の一室に、結花さんと二人で閉じ込められて、1日が経った。

 手足の拘束は解かれたけれど、逃げ出せないようにか、外から鍵が掛けられ、見張りも立っている。

 でも、中には浴室もトイレも備わっているので、地下とは比べ物にならないほどに環境がいい。

 何より、暖かいのは助かっている。

 レベルが上がって体が強くなっているとはいえ、さすがに寒い2の月に、地下にずっといたら、風邪を引いていたと思う。

 拘束がなくなったのと、地下から出たことで、アイテムボックスを使えるようになったのも助かった。

 食事は出されたけれど、少しだけ食べたように見えるように細工して、アイテムボックスに片付けて、念のために手持ちの食料を食べるようにした。

 鑑定で毒が入っていないのはわかっていたけれど、もう眠らされたりするのは嫌だった。

 幸いな事に、私も結花さんも、材料だけじゃなくて、出来上がった料理もたくさんアイテムボックスにしまいこんでいる。

 1~2ヶ月分はあるから、食事に関しては何の心配もなかった。

 一人きりなら鬱々としていたのだろうけれど、結花さんもいるし、桔梗とも話ができて、みんなに状況を伝えられているというのがわかっているので、心強かった。

 外部との連絡を取ろうと必死にならなくても、桔梗がいる。

 私達が大人しくしている事で、今のところ、ここの当主も安心しているようだ。

 逃げ出そうとするどころか、外部と連絡を取ろうと怪しい動きをすることもないとなれば、諦めたものと勘違いしていそうだ。

 もしかしたら、私が後宮に入りたいから大人しくしていると思われている可能性もある。

 この世界には魔道具があるし、話を聞かれているといけないから、結花さんとは筆談、桔梗とも思念で話していた。

 ずっと黙ったままだとおかしいと思われそうなので、当たり障りのない会話だけは、結花さんと交わすようにしている。


 明日の午前に仕立て屋が来ると、夕食を運んできた侍女に伝えられた。

 あの時、すぐに呼びに行ったとして、明日の午前に仕立て屋が到着するのだとしたら、王都までは、馬車で1日ほどの距離なのではないかと思う。

 基本的に、馬は馬車の半分くらいの時間で移動するようなので、多分、間違いないだろう。



『主様、和成様達は、その街の近くについたって! 今、尊様の妖精から連絡が来たって尊様が言ってるの』



 桔梗からその情報が飛んできたとき、みんなが近くまで来ているとわかってホッとした。

 いくら、あまり賢くなさそうな誘拐犯とはいえ、囚われている事に不安がないわけではない。

 みんながすぐにも逢えるような場所に来てくれたとわかっただけで、心が軽くなった。

 本来は馬で急いで6日ほどの距離を、4日で移動したことになる。

 きっと、みぃちゃんが怒り狂って、急いでいるんだと思う。

 みぃちゃん達が育てていたコテージで、一つだけ妖精を召喚できるレベルのものがあったので、有効活用できているみたいだ。

 みぃちゃんがそのコテージを持って移動して、尊君は大迷宮の私のコテージで待機しているので、桔梗を通じての会話は尊君のものが一番多い。

 何度も何度も、私を励ますようなメッセージをくれる。

 尊君も、大迷宮の中で私たちを助ける為に頑張ってくれている。


 私のコテージは譲渡不可だから、私にしか出せないけれど、普通のコテージは誰でも出せる。

 だから、妖精の召喚主以外でもコテージを出せる事を利用して、今回は逐一連絡をとるための通信手段にしたそうだ。

 私のコテージで桔梗と話して、私と連絡を取りつつ、自分の妖精を使って、みぃちゃん達とも同時に連絡が取れる状況にするとか、この緊急時によくそこまで思いつくものだと感心した。

 どうやら、鳴君が、コテージの特性を最大に利用できるように、桔梗と話をしたりして、以前から緊急時の利用方法を模索していたらしい。

 もしも、馬車になれるレベルになっていたら、大迷宮で馬を守ってくれる人がいさえすれば、私がいなくても桔梗はコテージを馬車に変えて、王都に向かえたらしい。

 レベルアップが間に合わなかったのが、残念で仕方ない。

 みぃちゃんは、回数制限があるコテージなのに、尊君と連絡を取るためだけに、何度もコテージを出してくれている。

 おかげで、主犯の名前や私たちのいる場所、今のところは危険がないことなどは、こまめに伝えられた。

 まだ出せる回数に余裕はあるみたいだけど、召喚した妖精が消える事がないように、少しでも多く使用回数が残るように出来るといいと思う。

 せっかく育てたコテージなのにごめんねと謝ったら、尊君には物凄く怒られた。

『お前よりも大事な物はない』と、桔梗経由で伝えられた言葉は、とても嬉しかった。 



『こちらは、明日の午前中に王都から仕立て屋がくるそうなの。ドレスなんてすぐにできるものではないと思うから、日数的にはまだ少し余裕があると思うわ。結花さんは絶対に守るからって、みぃちゃんに伝えて欲しいの』



 みぃちゃんが、どれだけ結花さんを心配しているかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 きっと亮ちゃんも、また私のことを守れなかったと傷ついてる。

 何が何でも無事に帰らなければ、亮ちゃんの傷を深めてしまう。

 警戒して、結花さんとはできるだけ時間をずらして寝たりしているけれど、もっと気をつけることにしよう。

 王都が近いとわかると、先生がすぐ傍にいるのだと、落ち着かない気持ちになるけれど、それは後回しだ。

 この件が解決しない事には、先生に逢うどころではないのだから。



『和成様が、美咲ちゃんのことも心配なんだよ。って、怒ってるって伝えてって。亮二様が、絶対に無理をしないようにって言ってる。みんなで体を休めてから、作戦会議して、方針が決まったら、また連絡するんだって。んと、ラルス様が大激怒なの。悪い人の名前を聞いて、馬で追いついてきちゃったの』



 桔梗が直接ラルスさんと対応しているわけではないのに、伝え聞きで慌ててしまうほどに、大騒ぎになっているみたいだ。

 状況を、紙に書いて結花さんに伝えながら、すぐ近くにみんながいることに、勇気をもらう。

 心強いね。って、紙に書いて、結花さんと顔を見合わせて微笑んだ。

 まだ早い時間だけれど、先にベッドに入って眠ることにする。

 途中で結花さんに起こしてもらって、交代で睡眠をとるのだ。

 不安はあるけれど、でも、大丈夫って思えた。

 警戒は怠らないけど、敵地で結花さんと二人きりとは思えないほどに、心は穏やかだった。



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