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密やかに想う  作者: 水城雪見
本編
56/109

39.開店直前




 迷宮から帰還後、全員で掛かり切りになって、無事に貴族向けの試食会も終わった。

 着物も問題なく着付けできたし、料理も好評で、さっそく予約を入れてくださった方もいらっしゃった。

 ご夫婦で来られた方がほとんどだったけれど、中には貴族のお嬢様も混ざっていて、ピアノを弾く鳴君は、熱い視線を集めていた。

 さすがラルスさんとエリーゼさんが選んだだけあって、こちらが平民だからと見下したような態度を取る人は、一人もいなかった。

 それはとても凄い事のようで、後でアルさんが、とても驚いたと教えてくれた。


 この国の貴族は、上位になるほど領地を持ち、自分で治めている。

 王都の王宮で働いたり、他の貴族に仕えたりするのは、跡継ぎではない貴族か、下級で領地を持たない貴族だ。

 ティアランス国では、相続は長子相続のところは珍しく、実力主義らしい。

 王家でも例外はなく、王子の中から、一番王に相応しいとされる人が王になる。

 というのも、王家や上位貴族ほど、不測の事態に備えて子供を多く持つので、長子と限定してしまうと、色々問題があるからだ。

 跡継ぎ以外は、王宮や他の貴族に仕えたりするので、長子相続にすると、家の役に立つ能力のある子供を、結果的に家から出してしまうこともある。

 それを防ぐための実力主義らしい。

 王位争いが激しくなるのではないかと思ったけれど、スキルのある世界で、実力や能力はわかりやすいので、意外にすんなりと決着がつくそうだ。

 似た様な能力の場合は、先に生まれたほうが後を継ぐことが多いらしい。


 ラルスさん達が招待したのは、普段はラルスさんに仕えている貴族の人がほとんどだった。

 そういう人たちは、家を出て領地を持ってはいなくても、爵位だけは持っていることが多いそうだ。

 隣接する領地から、エリーゼさんの親友だという伯爵夫人も参加してくださっていたけれど、その方のご主人は領主の仕事が忙しい時期だそうで、不参加だった。

 気候が穏やかになる初夏から、夏の終わりに掛けては、社交シーズンで、普段は領地にいる貴族も王都に移動することが多いそうだ。

 ほとんどの貴族は夏の終わりまで王都で過ごし、その後、領地に戻っていくらしい。

 国中の貴族の屋敷があるので、王都の貴族街は、ランスの街全体よりも広いそうだ。

 ランスは辺境にあって土地に余裕があるから、かなり大きく街を作ってあるそうだけど、それよりも大きい貴族街とか想像もつかない。

 王都は3重構造になっていて、中心に王城と貴族街、それを囲むように学園と裕福な平民の屋敷や商家があって、更に塀を挟んでその外側に下町があると、礼儀作法を習っていたときに教えてもらった。

 

 社交シーズン前になると、魔物に対処できるように、王都近辺の街道の警備は強化され、集団で移動するそうだ。

 だから、この時期、コテージは良く売れるらしい。

 育ったコテージが出回るようになったら、きっと、飛ぶように売れるんじゃないかと思う。

 どの領地にも騎士がいるけれど、王都への移動には冒険者を護衛に入れることも多く、この時期の冒険者は稼ぎ時らしい。

 アルさんも指名依頼がいくつか入ったらしいけれど、全部断ったと言っていた。

 街道の魔物からの護衛なら、Sランクソロのアルさんよりも、Aランクのパーティの方が向いているので、毎年、滅多に受けないと言っていたけれど、もしかしたら、お店が開店するから、長期の依頼を受けずにいてくれているのかもしれない。


 貴族向けの試食会を開いてみて、足りない部分がいろいろとわかった。

 貴族がたくさん集まるとなると、どうしてもその護衛などで、人数が増える。

 予想以上に、受け入れ場所の余裕をみておかないといけない。

 ラルスさん達が気安いから忘れてしまいがちだけど、他の貴族の人達は、護衛や御付の人に囲まれているのが当たり前で、外に出るとなれば、そういった人数は更に増える。

 試食会のときは、テラスにテーブルを出して、テラスと、以前は貴族を一度待たせるための部屋だった場所で、待機してもらうことで対応したけれど、今後は4組の予約客が、同時に全部貴族にならないように、気をつけた方がよさそうだ。


 ちなみに、ラルスさんは前王の弟とはいっても、歳がかなり離れていて、甥である現王の方が、ラルスさんより年上らしい。

 子供をたくさん持つといっても、エリーゼさんのように、一人で5人の子供を産む貴婦人はほとんどいなくて、複数の妻に産ませることがほとんどだそうだ。

 現王の子供は王子が3人と姫が1人で、全員母親が違うらしい。

 仕方のないことだとわかっても、結婚相手に他の女性がいることが当たり前というのは、私には耐えられないと思った。

 何にしても、私には関係ない遠い世界の話だ。

 今は、恋愛どころじゃないのだから。




 



「桜庵開店直前の最終会議を始めますー。拍手ー」



 居間にみんなで集まって、開店前の最終話し合いをすることになった。

 リンちゃんがいつものように開始宣言をして、ぱちぱちと拍手をしている。



「さて。開店は明日だが、まだ何か決めていないことがあったか?」



 リンちゃんの開始宣言後は、すぐに亮ちゃんが引き継ぐのも、いつもの流れになっている。

 もうリンちゃんは、拍手がないことを突っ込む事すらしない。



「開店日は明日。営業時間は12時から夜の10時前後。ラストオーダーが一応9時半。昼も夜も初日の予約はすべて埋まっています。料理の値段は決まりましたし、料金の受け取り方法も決まりました。飲み物の仕入れルートも決定して、既に仕入れ済み。後は、何がありますか?」



 鳴君が決まっていることを一つ一つあげていく。

 私も書き込んだノートを見ながら、決め損ねた事がないか考えてみた。



「あの、お店と直接は関係ないかもしれないんですけど、一月ごとのカレンダーを作りませんか? お店のお休みの日が、一目でわかるようにするといいと思うんです。3日営業して1日休むんでしたよね?」



 結花さんが、遠慮がちに切り出す。

 確かに、こちらにカレンダーはないから、あると嬉しいなとは思う。

 手持ちの物を加工して、何とか作れないだろうか?



「それで、元の世界から持ち込んだ荷物で、使えそうなものをそれぞれ持っているかもしれないから、一度出してみませんか? カレンダーにできそうな用紙とか、書き込み用の筆記用具とか、それぞれ持っている物に、使えそうなものが混ざっているんじゃないかと思うんです」



 確かに、結花さんの言う通りかもしれない。

 私も、雑貨屋さんで買った千代紙とかあったから、あれも使えそうだ。



「あ、それいいね。僕達、結構色々持ってるよ。同じ班だった御曹司が100円ショップに行ってみたいって言い出して、修学旅行なのに何故か行ってきたんだよね」



 みぃちゃんが、アイテムボックスから旅行バッグを取り出して、ごそごそと漁りだす。

 御曹司というのは、確か亮ちゃんのクラスにいた大きな会社の次男君だ。

 名前は覚えていないけれど、そういう人がいるのは知っていた。

 毎日、車で送迎されていたので、とても目立っていたのだ。

 あの人ならば、100円ショップ未体験でも驚きはしない。



「御曹司(笑)も、役に立つ事があるのね」



 辛辣なことを言いながら、カンナさんも旅行バッグを取り出す。

 何が使えるかわからないので、私もバッグごと、出してしまうことにした。



「(笑)とか、つけるなよ。あれはあれで、味があるいいキャラなんだよ」



 尊君は笑いながら庇って、広いテーブルの上に、使えそうなものを並べていった。

 みんな同じ班だったから、色々買い込んでいたらしい。

 テーブルの上に、たくさんのアイテムが並びだす。



「何で100円ショップとは思ったんだが、結構面白かった。俺もそんなに行った事はないからな」



 亮ちゃんは、それなりに楽しめたらしい。

 取り出した袋の中からは、文具が色々と出てくる。



「お前らの世界には、面白そうな物がいっぱいあるんだな」



 アルさんは興味深そうにみんなが取り出すものを見て、使い方を聞いたりしている。

 私は雑貨屋さんで買った数冊のノートや、千代紙等をテーブルに並べた。

 筆記用具もあったので、とりあえずそれも出しておく。



「100円でたくさん入ってるのが不思議で買ったんだけど、我ながらよくやったって感じ? これ、使えるよね?」



 みぃちゃんが自慢げに、30色ほど揃ったサインペンのセットと、色鉛筆を取り出す。

 どちらも100円とは思えないほどの品質だ。 

 


「え? それ、100円なの?」



 とても、100円には見えなくて、驚いてしまう。

 考えてみれば、私も100円ショップには、そんなに行った事がなかった。



「カレンダー、作れそうね。大槻君のそのルーズリーフに数字を書き込んで、一ヶ月分のカレンダーにしたらどうかな? 紙の色が水色だから、それだけでもこっちでは珍しいでしょ? お休みの日は赤で数字を書いて、営業日は黒にするの。私、押し花を作ったから、それを飾りでつけてもいいし、美咲さんの千代紙で折り紙を作って、それを飾り付けてもいいし、もしよかったら、カレンダー作りは任せてくれる?」



 結花さんがわくわくとした様子で、カレンダー作りを申し出てくれる。

 何か考えがあるみたいだし、楽しそうだから任せてみるのがいいかなと思った。



「結花ちゃん一人だと大変だから、僕も手伝うよ。細かい作業は好きだからね。美咲ちゃん、可愛いノートなのに悪いけど、一冊もらってもいい? ついでに予約帳みたいなのを作っちゃうよ。カレンダーにも書き込めるようにするけど、別に控えがあったほうがよさそうだし」



 みぃちゃんに言われて、まだ何も書き込んでないノートを差し出す。

 一冊はレシピノートにして、一冊は予備で置いておきたいけど、残りは好きに使ってもらってもかまわなかった。



「じゃあ、結花と和成は、端っこでカレンダー作りしててくれ。他、話し合うことがあるなら、話し合って決めておこう」



 亮ちゃんが仕切って、結花さんとみぃちゃんは、端っこに移動した。

 すっかり、意識がカレンダーに逸れてしまったから、ノートに目を通して、頭を切り替える。



「持ち帰りの主力商品は、今の所はサンドイッチだけど、開店したら持ち帰り用のお菓子も出すんだろ? 値段は決めたのか?」



 尊君に言われて、持ち帰り用に作ったお菓子の詰め合わせを、アイテムボックスから出す。

 既にお菓子はかなりの量を作ってあって、以前は、毎晩のようにコテージで包装をしたりしていた。

 今はコテージがないので、代わりに私の部屋で作業してたりする。

 場所はここでもいいんだけど、女の子だけで話をする時間も欲しくて、寝る前に私の部屋に集まることも多い。

 ただ、お店が始まったら、閉店は遅いし、その後ご飯を食べて、お風呂に入ってとなると、寝る前に集まるのは無理かもしれない。


 竹の節を利用して器にしたものに、焼き菓子を入れて、上から布をかぶせて紐で結んだものと、竹籠のものと、2種類作ってある。

 竹籠は中に布を縫い付けて、籠の隙間からお菓子の屑が落ちないようにした。

 これも、毎晩4人で、内職のように頑張った。

 男子は男子で、この部屋に集まって、みんなで竹籠を編んだり、竹ひごを作ったりしてくれていた。

 みんな、迷宮に通ったりもしているのに、できる範囲で色々と手伝ってくれた。

 全員で迷宮に長く篭っていたあの時も、夜になると、それぞれができることをやって、開店に備えてくれていた。

 あのまま、私一人だったら、ろくに準備もできないままだったと思うから、本当にありがたい。

 人を雇う話もあったけれど、みんなのおかげで雇わずに済んでいた。

 お店の経営以外に、雇った人をきちんと使い、レシピなどは秘匿するという、ストレスがたまりそうなことを、やらずに済んでよかった。



「こっちの、籠の方は貴族用で少し高めにするつもりなの。もちろん、貴族じゃなくても欲しいって言われれば売るけれど。それと、毎日大量にお菓子を作ると、売り物にならない形の悪いクッキーとか、ロールケーキやパウンドケーキの切れ端とか、たまっていくの。みんなのおやつにしてもいいんだけど、これって需要はないかしら? 味自体は同じなんだから、安いほうがいいっていう人もいるんじゃないかと思ったんだけど」



 一応、種類ごとに分けて、売り物にならないお菓子も残してある。

 捨てるのはもったいないし、かと言って、いつもこれがおやつじゃかわいそうだし、何とかならないかと思っていた。

 形が崩れたクッキーとか、焼き色が微妙なクッキーとか、ひびが入ったタルト生地とか、ふくらみが微妙なシューやマカロンとか、お菓子作りにはどうしても売り物にならない物が出てくる。



「安くてたくさん食べられる方がいいって奴もいるだろうな。その竹の器に入れて、上にかぶせる布を他と変えて、区別がつくようにして、売りに出せばいいんじゃないか? さすがに貴族は買っていかないだろうが、冒険者なら買っていく奴もいると思う」



 アルさんが賛成意見を出してくれると、ホッとする。

 この世界の人や冒険者のことは、アルさんがやっぱり一番よくわかるから。



「一人一つ限定にして、値段も格安にすれば、別の意味で目玉になるんじゃないか? 福袋っぽくて面白いかもな」



 亮ちゃんも同意するように頷いてくれる。

 売り物にならないものを売るということに、少し抵抗はあるけれど、食べられるものを捨てることには、もっと抵抗がある。

 売り物にならないじゃなくて、福袋的な考え方をすれば、いい商品になるのかもしれない。

 


「福袋みたいに、当たりも少し混ぜておくといいかもしれないわ。売れるかどうかわからないけれど、売りに出してみましょうか。売れなさそうなら、そのときにまた違う方法を考えてみるわ」



 今夜もまた、女子4人で、お菓子の包装をすることになりそうだ。

 でも、4人でお喋りをしながら、お菓子を焼いたり包装をしたりするのは、とても楽しいから、楽しみだ。

 元の世界にいた頃は、あまり自分の時間がなくて、友達とゆっくり話をするとか、そういうことさえ出来なかったから、貴重な時間のように感じる。

 


「とりあえず、初日は全員で店に出るだろ? アルフはどうする? Sランクに給仕をさせるのも、悪い気がするんだが」



 一応、アルさんの着物も作ってあるけれど、亮ちゃんの言う通り、Sランクの冒険者に給仕をさせるのは、申し訳ない。

 かといって、アルさんだけ仲間はずれみたいにするのは、もっと申し訳ない気がする。

 貴族の試食会のときは、いつもの格好で護衛代わりに参加してもらっていた。



「そうだな。俺が料理を運ぶと、落ち着かないって客もいそうだしな。せっかくキモノも作ったんだし、初日は着替えて、客の出迎えでもするかな。初日の予約は、カグラも知ってる貴族ばかりみたいだが、俺が出迎えに混ざってれば、箔がつくだろ」



 領主夫妻の後見がある上に、Sランクの冒険者であるアルさんも肩入れする店だとわかれば、無理なことを仕掛けてくる人は、ほぼいなくなると思う。

 年若い私が店を持つことを、苦々しく思っている人達も、直接何かすることはできなくなるだろう。

 アルさんがいてくれるのは、警備という面でも、大きな意味がある。

 アルさんには何の得もないことなのに、親身になって手伝ってもらえて、どれだけ感謝してもし足りない。



「アルフが協力してくれるのは助かる。予約客がきた時だけでもいいから、頼むな」



 亮ちゃんの言葉に、アルさんは気安く頷いてくれる。

 アルさんにはお世話になってばかりだ。

 何か恩返しが出来ればいいと思うのだけど、返しても返しても、それ以上に与えられてる気がする。



「あ。結花さん、あまり凝らなくていいから、この部屋に貼るカレンダーも作ってもらっていい? みんなの誕生日には印をつけておいて、お祝いしましょう?」



 人のお祝いだけでなく、家族のようなみんなのお祝いもしたい。

 カレンダーが貼ってあれば、わかりやすいと思う。



「それいいね。美咲ちゃんのケーキ、楽しみだ」



 みぃちゃんが真っ先に同意してくれる。

 日々の生活の中に、小さな楽しみとか、メリハリは必要だと思う。

 こちらでは、季節ごとの行事のようなものは、あまりないようなので、できるだけそういう事を忘れずに、疎かにしないようにしたい。



「じゃあ、カレンダーができたら、みんな、自分の誕生日に丸をつけて、名前を書いておくこと」



 亮ちゃんがきちっとまとめてくれる。

 私は、どこかのお店でもらった簡素なスケジュール帳を取り出して、結花さんに差し出した。



「家の分のカレンダーを作る時に、行事の予定も書いてくれる? こちらも四季があるみたいだし、季節ごとのお祝いは、できるだけ続けたいなって思ったの」



 菖蒲はみたことがないけれど、柚子はある。

 だから、冬至に柚子湯にしたり、かぼちゃを食べたりはできるし、節分に恵方巻きを作ったりとか、そういうこともできる。

 31日が暦にないので、ハロウィンは30日にやるしかなさそうだけど、内輪で楽しむのなら問題はないだろう。



「いっそ、5月の連休の頃は、まとめて休みを取るか? 今なら、予約の調整もできるから、決めるなら今のうちだろ」



 亮ちゃんは私のやりたいことはわかったみたいで、連休を提案してくる。

 この世界では、休もうと思えばいつでも休めるけれど、言い換えれば、休もうと思わなければ、働きっぱなしになってしまう。

 みんな、ローテーションを組んで休みを取って、お店の手伝いをしながら迷宮にも行くようだから、連休も作った方がいいかもしれない。

 余裕を持ってお店をやらないと、疲れすぎて失敗しそうな気もする。

 いくら、領主夫妻の後見があるといっても、取り返しの付かないような失敗はできない。

 ラルスさん達に迷惑を掛けることになってしまうのは、絶対に嫌だ。



「5月と夏と冬は、ちょっと長めの連休をとりましょう。仕事も大事だけど、みんなで遊んだりもしたいから」



 先生がいつ来るかわからないから、ランスの街を離れるのは不安だけど、ランス以外の街や王都にも行ってみたい。

 今、一番気になっているのは、南の島々だ。

 旅行ついでにお魚の仕入れをしに行きたくて仕方ない。

 後は、アルさんの故郷であるミシディアで、調味料やお米の仕入れもしたかった。

 一応、アルさんの実家と直接取引をすることになって、定期的にお米や調味料が手に入るようになったけれど、珍しい食材があるかもしれないので、いつかは直接仕入れに行きたかった。

 遊びにと思ったのに、考えがすぐに仕事寄りになってしまうのが悲しい。



「夏は海に行きたいね。水着、こっちにもあるんだよ」



 南の島々を旅していたみぃちゃんが、水着の存在を教えてくれる。

 ディアナさんの店に水着はなかったから、教えたら、製作を張り切りそうだ。



「ミサちゃんのビキニ姿みたいー」



 リンちゃんが笑顔でリクエストしてくれるけど、ビキニはちょっと露出が多すぎて落ち着かない。

 着ることを想像するだけで恥ずかしい。



「ミズギとかビキニって何だ?」



 アルさんが興味を持ったようで尋ねてくると、みぃちゃんやリンちゃんが、楽しそうに説明し始める。

 そこから、お店会議のはずが、水着談義になって、夏はみんなで旅行に行く事が決まった。

 今から、夏が楽しみだった。




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