表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
密やかに想う  作者: 水城雪見
本編
12/109

10.街の外



 毎日が忙しすぎて、1ヶ月はあっという間に過ぎた。

 6日に一度は休みがあったけれど、ほかの事をする気力もないほどに疲れきっていた。

 エミリアさんが復帰したので、シグルドさんのお店での仕事も終わった。

 こちらの世界の一般的な料理も覚えられたし、食材の使い方も色々と教えてもらったから、かなり有意義な仕事だった。

 商業ギルドについても教えてもらったし、ギルドに登録しなければ入れない市場にも連れて行ってもらったし、シグルドさんには随分お世話になった。

 何かお礼をと思っていたけれど、最終日には反対にお礼を言われてしまった。

 もうずっとレベル3のままだったシグルドさんの職業レベルが4に上がったらしい。

 私のおかげだと、シグルドさんだけでなくエミリアさんにも感謝された。


 忙しくも賑やかな毎日が終わってしまって、少し寂しくなったけれど、疲れてもいたので、しばらくはのんびりと楽な依頼をこなしながら、外でコテージを出して、色々と料理を作ってみようと思っていた。

 ちなみに、ディランさんの腕はさすがで、ミートチョッパーは再現できたし、他の道具も使いやすかった。

 これで、ハンバーグ以外の挽き肉料理も気軽に作れる。

 今、予定しているのは、食パンとクロワッサンを焼いてみることと、生パスタを作ることだ。

 どちらも小麦粉が必要なので、シグルドさんと市場に行けたときに、山ほど買い込んでおいた。

 しかし、そんなことをしなくても、冒険者ならば小麦粉を手に入れる手段がある。

 外に、奇妙な植物が生えているように、迷宮には奇妙な生き物が生息している。

 倒せば小麦粉を落とす魔物がいるらしい。

 牛乳や牛肉、チーズ、バターを落とす牛の魔物もいるらしくて、迷宮に行くのがちょっと楽しみだ。

 ランスの街の市場で売りに出される食材の7割は迷宮産らしい。

 こんな感じで迷宮が生活にも直結しているので、迷宮が近くにある街は栄える。

 けれど、あまりにも近過ぎると、迷宮から魔物が溢れた時に危険もあるので、迷宮から少し離れた位置に街を作ることが多いらしい。

 ランスの近くには二つの迷宮があったので、その中間に街が出来た。

 元々は、小さな村がいくつかあるだけの土地だったと、ランスの街の歴史の本に書いてあった。



「シェリーさん、こんにちは。今日はこの依頼をお願いします」



 冒険者ギルドに行くと、昼前だからか、あまり人はいなかった。

 依頼を受けるには遅く、報告するには早い時間みたいだ。



「一角兎退治ですね。ギルドカードの提示をお願いします」



 ギルドカードを渡すと、いつものように手早く手続きをしてくれる。

 神様はこの世界の説明をする時に中世レベルと言っていたけど、ギルドのシステムって、どう考えても近未来的で中世レベルじゃないと思う。



「依頼を受けると討伐数はカードに表示されますので、最低でも20匹は討伐をお願いします。それ以上に討伐された場合、20単位で一回のクエストとカウントされますので、討伐数にはご注意ください。期限は今日から6日後までになっていますので、報告は早めにお願いします」



 淀みなく説明されて、カードを返された。

 今日は後ろに並んでいる人もいないので、ちょうどいいからお話を聞いてみることにする。



「シェリーさん、この依頼とは関係ないんですけど、迷宮に関する資料みたいなものは、ギルドの中にありますか?」



 図書館にも少しは資料があったけれど、どんな魔物が出るかとか、迷宮内の地図とか、あまり詳しく載ってなかった。

 迷宮に行くのなら、きちんと準備をしておきたい。



「資料室に魔物図鑑は置いてありますので、自由に閲覧していただけます。2階の販売コーナーで迷宮内の地図と魔物図鑑の販売もしていますので、余裕があるのでしたら、個人的には購入をお勧めします。でも、カグラ様はソロですよね? 女性が一人で迷宮に入るのは、魔物以外の危険もありますので、特に注意が必要です」



 気遣うような視線を向けられて、心配してくれているのだと伝わってきた。

 魔物以外の危険ということは、迷宮内はあまり治安がよくないのかもしれない。



「お気遣いありがとうございます。迷宮の挑戦は少し考えてみますね。ただ、資料は欲しいので購入してみます」



 予習する分には問題ないだろうと、資料の購入を決定する。

 私の返事を聞いて、シェリーさんはホッとした様子だったので、やっぱりソロで迷宮に行くのはかなり危険なことなんだと思った。

 


「お気をつけて」と、笑顔で見送ってくれるシェリーさんに軽く会釈をして、2階で迷宮の魔物図鑑と地図を購入した。

 初心者も入れる迷宮の方は、全部で50層まであるらしくて、既に踏破済みだから、地図も出回っている。

 大迷宮の方も踏破済みの65層までは、地図が売りに出ていた。

 本は高いのか、それとも地図に関しては情報料も含んでいるのか、二つあわせて金貨2枚が飛んだ。

 シグルドさんのお店で働いている間に、満足のいくブラが出来上がり、同じものを販売する権利を、ディアナさんに買い取ってもらえたので、懐に余裕はあるけれど、消費するだけではだめだから、しっかり稼ぎに行こうと思う。

 今日の目的は、外での狩りと素材集めと、コテージの中での料理だ。

 今回は材料も色々あるので、依頼の期限が切れない程度に外で過ごそうと思っていた。

 宿屋の滞在期間もちょうど終わったから、一度引き払っておいた。

 外に出てしまえば、寂しくてまたすぐに戻りたくなってしまうかもしれないけれど、街の近くにいるという安心感があれば、普通に一人で過ごせるかもしれない。


 この街にたどり着いたときに入ってきたのは南門だったけれど、東側にも門はある。

 むしろ、通称迷宮門とも呼ばれる東門の方が、冒険者で賑わっている。

 東門を出てまっすぐ行くと小さい方の迷宮、左手に行くと大迷宮があるらしい。

 迷宮と迷宮の間は、小さな森と草原になっているみたいなので、今回は森に近いほうの草原を目指していた。

 一角兎は草原にいるし、森には油の樹も生えている。

 昼間に狩りや収集をして、夜にはコテージを出して油を採取しながら、料理を作る予定だ。

 ギルドカードを提示して、東門の外に出てから、まずは左手の街道を歩き出す。

 大迷宮側に草原、小さい迷宮側に森があるから、途中で道を外れて兎を狩ろうと思っていた。

 時間が昼に近いせいか、迷宮に続く街道を通る人はいない。

 薙刀を取り出して、いつ魔物が出てもいいように備えながら、さわやかな風が吹き抜ける中を歩いていく。

 この世界にも季節はあるみたいだけど、ここはどちらかというと南よりなので、冬でも大雪になったりはしないそうだ。

 かといって、南の島々ほど夏が暑いわけでもなく、過ごしやすい土地のようだ。


 ある程度歩いたところで草原に入っていくと、一角兎はすぐに見つかった。

 以前とは違い、数匹の集団なので、倒す時には気をつけなければいけない。

 鑑定でレベルを見ると、レベル4~8の集団で、今までよりレベルも高いようだ。

 足首が軽く埋もれてしまうくらいの草原なので、火魔法は使わず、水魔法で一番手前の一匹を攻撃してから飛び出した。

 薙刀の刃で急所を狙って払い、突いて、兎の突進を受けないように気をつけながら、屠っていく。

 最初は罪悪感も感じたけれど、生きるために魔物を倒すことを躊躇しなくなってきた。

 角が生えた兎は、大型犬ほどの大きさで可愛いけれど、生きるための糧だ。

 兎の肉は臭みがなくて料理にも使いやすい。

 複数の兎の動きを見ながら、できる限り急所狙いで薙刀を使う。

 3歳の時から、自宅にある小さな道場でお祖母ちゃんに鍛えられたおかげで、この程度の敵なら苦労せずに処理できる。

 しばらく戦って、攻撃を受ける事もなく倒しきり、乱れた息を整えながら手早く解体した。

 ほんの少しの旅で、血の匂いが魔物を呼ぶことを学んでいた。


 この辺りはまた、私が通ってきた道とは植生が違うみたいで、見たことのない植物がある。

 こまめに鑑定をかけながら、後で育成する可能性も考えて、できるだけ根っこごと採取するようにした。

 そのためのスコップや袋もちゃんと手に入れてある。



「これは、里芋?」



 里芋の葉っぱのようなものを見つけて、下を掘り起こしてみる。

 そうすると下から、じゃがいもと里芋を足して割ったような物がいくつも出てきた。

 鑑定してみれば、タロウ芋という名前で、食べられるみたいなので採取しておく。

 市場でじゃがいもは手に入ったけど、これは見たことがない。

 食べてみないとどんな感じかわからないし、どうせ今は和食が作れないから、どうしても里芋が欲しいというほどではないけれど、似たようなものがあるのなら保存しておきたい。


 途中で包み紙のように使われる、大きな笹の葉のようなものも見つけたので、それも大量に採取した。

 こちらでは、屋台などで持ち帰る料理は、基本的に大きな葉で包んである。

 幅も長さもある笹の葉のような形の葉は、屋台ではよく使われているものだった。

 紙も一応あるけれど、それなりに貴重品なので、使い捨てにはしないらしい。


 今、一番悩んでいるのは、料理を作って、それをどう販売するかだ。

 いきなり店を持つには、信用が足りないし、最初は屋台から始めるものらしいけれど、できれば、クッキーなどの焼き菓子も売りたいから、それを葉っぱで包むのは、零れそうで怖い。

 ビニール袋が安価で手軽に手に入っていた日本が、こういう時は懐かしい。

 転生者の内の誰かが、気軽に使える紙を発明できるような職についててくれないかなぁと、つい、思ってしまう。

 紙さえあれば、いくつか販売用に向いた包み方を知っている。

 でも、もし、おにぎりを屋台で出すなら、笹の葉で包むのでちょうどいいのかなとも思う。

 ただ、米は10キロしか買っていないから、売り物にするほどはない。

 色々と前途多難な気がする。



「あ。笹みたいな葉っぱがあるなら、竹もあるんじゃないかな?」



 竹があれば、竹ひごを作って籠が編める。

 最初に浮かんだのは、竹を編んだ籠だったけれど、よく考えてみれば節のある竹のような植物ならば、切るだけでも器のように使うことができる。

 葉の生えた細い枝を辿って探してみると、私の知っている竹よりも随分太い竹が見つかった。

 直径30センチはありそうな竹だから、これだけの大きさがあれば、十分器の代わりになる。

 ただ、切るためには、鉈か小さな斧が必要だけど、今は持ち合わせがなかった。

 のこぎりがあるのなら、のこぎりでもいいけれど、私の知る限り、のこぎりを売っている店はなかった。

 少し踏み込んで調べてみると、森に近い辺りに、竹が群生している。


 私の家は首都圏とはいえ鄙びた場所にあって、そのせいで敷地はかなり広かった。

 薙刀の小さな道場と蔵が二つ、それと裏山には竹林もあった。

 私の知る竹とは随分違うけど、何だか懐かしい感じだ。

 ずっと上の方まで、まっすぐに伸びている竹の合間から、青い空が見える。

 笹が風で揺れて、葉が触れ合う音も懐かしくて、ここが魔物の出る場所だということも忘れ、目を閉じて聞き入った。

 春には筍を掘ったり、笹の葉で笹舟を作って遊んだり、竹林は懐かしい思い出の場所だ。


 コテージに入ってしまえは、外の音は聞こえないけれど、今日はここで過ごしたくなったから、コテージが出せるだけのスペースを見つけて、コテージを出した。

 竹を手に入れる方法は後で考える事にして、まだ少し早いけれどコテージに引き篭もる事にする。


 コテージはレベルが4に上がったので、中に入ると右手に扉が二つ並んだ間取りになった。

 右側の扉、寝室にはロフトができて、設定で、登録した人以外はロフトに上がれないようにできるので、誰かを泊めることがあっても、ロフトにだけは立ち入れないようにすることもできる。

 左側の扉は、寝室より少し狭いくらいの何もない部屋で、勝手に納戸だと思っている。

 ロフトが広々と取ってあるので、納戸の天井は寝室と比べるとかなり低めだ。

 ちょうど、納戸の上がロフトでは一段低くなっていて、そこにベッドがあるので、寝室からはまったくロフトのベッドが見えないようになっている。

 ロフトは天窓もあって、昼間は明るい日差しが入ってくるし、階段を上がってすぐは座り心地のいいソファがあって寛げる様になっているので、コテージの中では一番お気に入りの場所だ。

 キッチンとお風呂も少し広くなっているので、コテージのレベルが上がるに連れ、広くなるのかもしれない。

 けれど、出した時の外観の大きさは以前と変わらないので、そこが不思議でならない。

 

 何も、せっかく作った調理器具を持ち歩く事もないので、全部取り出してコテージのキッチンに収納しておく。

 食材のような劣化するものはともかく、そうでないものは無理に持ち歩く事もない。

 壁に掛けていたエプロンをつけて、今日使う道具と材料を取り出していく。

 作る料理と材料を見ながら、作業順を頭の中で組み立てていくのが私の癖だ。

 より効率よく、手際よく作るようにと、躾けてくれたのはお祖母ちゃんだった。



「まずはパン生地を作って、お米を研いで、から揚げの下味をつけて、その後、他の料理かな」



 確かめるように呟きながら、一つ一つ作業をしていく。

 料理人は醗酵のスキルを持っているから、パンを作る時に天然酵母やドライイーストのようなものが必要なくて助かった。

 粉まみれになりながらパン生地を捏ねていくのは、力がいるけれど、レベルアップのおかげで、以前の体とは比べ物にならないくらい力も体力もついたので、苦にならない。

 前は重たく感じていた油入りのたらいが、軽々と持ち上げられるようになっているのに気づいた時は、物凄く驚いてしまった。

 油は、小さめの樽をたくさん手に入れたので、今回手に入ったら、たらいから樽に詰め替えるつもりだ。


 色々とちゃんと揃えたつもりでも、気がつくと足りないものがある。

 クッキングシートとか、キッチンペーパーとか、当たり前に使っていたものがないのは、とても不便だ。

 布きんも、備えてはあったけど、布の質が気に入らない。

 ちょうどよさそうな布を探して、自分で縫うしかないかもしれない。

 旅行バッグに入っていたタオルを作り変えてもいいけど、こちらのタオルは質がかなり落ちるので、布きんにしてしまうのは惜しかった。

 やっぱり、顔を拭く時とかは、柔らかくてふわふわのタオルがいい。


 スキルのおかげで醗酵はすぐに済んでしまうので、予想外にパン生地を作る時間が掛からなかった。

 2次醗酵まで終えたパン生地を食パンの型に入れて、オーブンで焼いていく。

 こっちのオーブンの方が、余熱がいらないので、よほど優れものかもしれない。

 食パンを焼いている間に、鍋でご飯を炊き、生パスタの生地も作る。

 コケッコの卵は、ランスに辿りつくまでに山ほど手に入ったけれど、たくさん使うのもわかっていたから、買い足しておいた。

 卵の大きさも、いつも使っていたものと同じくらいの大きさだから使いやすい。

 あまりサイズが違いすぎると、分量をどうするのか悩むところだったから、とても助かっている。

 油の樹から取った油もあったけど、オリーブオイルのようなものも手に入ったので、生パスタにはこちらの油を使うことにする。

 まとめて大量に生地を作って、しばらく冷蔵庫で寝かせる。

 キッチンには作業台も備わっているので、その上に、ディランさんに作ってもらった大きい金属製の天板を置き、打ち粉をした。

 麺を作ったり、お菓子を作ったりするのに作業用の天板が欲しかったけど、パイを作る時は生地が温かくならないように冷たい天板の方がよかったから、あえて木ではなくて金属で作ってもらった。

 ふちもつけてもらったから、粉が零れないし、なかなかの優れものではないかと自画自賛している。

 パン屋さんにある業務用の大きなオーブンで使えるサイズにしてあるので、将来、業務用のオーブンを手に入れたら、ロールケーキの生地を焼いたりするのにも使えるようになっている。


 生パスタを作るのは、材料を混ぜて寝かせて、のばして切るだけなので、そんなに難しくない。

 だから、程よく生地を寝かせた後、天板の上でのばして、3つ折りにしてから、細めに大きさを揃えて切っていった。

 料理人の補正なのか、大体で切っても、綺麗に同じ幅で切る事ができる。

 のばして切って、のばして切って、と作業を繰り返して、作った生地を全部切り終えた後、ばらしてから更に打ち粉をして、一回分ずつ小分けにしていく。

 パスタの一人分は大体100gだから、30回分くらいの生パスタができた。

 今日はパスタは食べないので、一回分ずつの固まりにしたものを纏めて蓋付きの籠に入れて、アイテムボックスにしまっておく。

 そうしているうちにパンが焼けたので、取り出して粗熱を取っておいた。

 食パンは、サンドイッチにしようと思ったら焼き立てよりも、一日おいたくらいのパンの方がいいので、アイテムボックスに入れずに放置しておくつもりだ。

 パンをスライスするための、刃が波型になったナイフも作ってもらったし、明日はサンドイッチを作ろう。

 ツナ缶がないのは残念だけど、ベーコンは手に入れたので、刻んだゆで卵とカリカリに焼いたベーコンのサンドイッチにするつもりだった。



「あ、マヨネーズ作らないと……」



 次から次に足りないものが出てくるし、やる事も見つかる。

 けれど、すっかり自分の城になったコテージのキッチンで、料理をするのはとても楽しい。

 食べてくれる人がいないのは物足りないけど、それでも、こうして経験を積む事が、自分を育てる事に繋がっているのだとわかるから、今までとは違う達成感もある。

 シグルドさんのように、料理人のレベルが4になるのはまだまだ遠い先だろうけれど、いつか最高レベルの5に到達できるように頑張るつもりだ。


 見た目外国人の先生が、和風のものを好んでいて和食が好きなのは、家庭訪問のときに教えてもらった。

 学校から遠かったせいもあって、一番最後に我が家を訪れた先生は、純和風の作りの我が家を興味深そうに見ていた。

 茶道や華道も少しだけ習った事があるそうで、2年生の家庭訪問のときは、その話を覚えていたお祖母ちゃんが、お茶室でお茶を点ててお迎えした。

 本来ならば、生徒の家で食事をしたりはダメらしいのだけど、お祖母ちゃんがかなり強引に誘って、一度だけ一緒に食事をしたことがある。

 あの時初めて、私は自分で作った料理を先生に食べてもらった。

 遠く離れていると、故郷の料理というものは懐かしくなるものだと思う。

 だから、いつか先生が私を探し当ててくれた時に、和食を作ってあげられるようにしておきたい。

 

 一通り料理を作ってから、クッキーも大量に焼いた。

 型はないし、搾り出し袋もないので、刻んだナッツ入りのドロップクッキーと、アイスボックスクッキーにした。

 可愛い布を見つけたので、それで包装してシェリーさんとディアナさんにプレゼントする予定だ。

 久しぶりに焼いたクッキーは、さくさくとしていて美味しかった。

 アイテムボックスに、修学旅行のお土産で買ったお菓子も入っているけれど、傷むわけじゃないからと、食べるのを惜しんでいたので、甘いものを食べたのは久しぶりだ。

 これは、エミリアさんとアンさんにも持っていこう。

 焼き菓子を売っているお店はないみたいだから、きっと喜んでもらえると思う。


 やっぱり何か、販売する時にいい方法がないかと悩んでしまいながら、思いつくままにお菓子を作り続けた。

 次はディランさんに、マドレーヌの型を作ってもらおうと思う。



次回、新キャラ登場します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ