目を合わせて見つめるだけで ~スタインベック 「新聞は世界中で一番便利なものだ。読むことは出来ないが、他のことなら何にでも使える」~
新作アニメが続々と発表され、子供たちの期待を膨らませた1980年。
一人の青年と一人の女子高生が出逢いひと夏の恋の物語が始まる。
『今時の女子高生』夢野美夏。一六歳。
彼女には悩みがあった。好きになった人がとんでもない変わり者だったのだ。それを矯正するべく美香は奮闘する。
「浅生さあああん?!」「なんだよ。美夏ちゃん。騒がしい」
なんとか雨をかき分け進み、鼻水を飲み込みながらお店で私を迎えたオジサンと女の子は私の知っている人でした。
「ふはははは。雨にやられたか。私が降らせてやったのじゃぞい。感謝するがいい」
感謝できないし?! というかまいなちゃん。悪い冗談はやめなさい?!
ぺくちっ?
最近出てきたバスタオルを放り投げてくれた浅生さんに感謝。
というか、最近の製品なのによくもっていらっしゃいますよね。
「塊山はまだ帰ってこないぞ」「なのじゃ~わしらが留守番じゃ~」
まいなちゃんはさておき、浅生さんはお客だし。お客に接客させるなら給料を上げて欲しいですよね。
ところであなたはだあれ? 私はあなたの事なんて知らないから!?
さて、この時期はまだまだ寒いので年代物のストーブを燃やしてパンや焼き芋を焼き乍ら私たち三人はこの店の主人である紺野さんを待ちます。
雨宿りしようと思ったら浅生さんに会いました。これは低層の危機かもしれません。
「貞操じゃな。美夏」「私、なんか言いましたっけ」「ククク」
この子、変な笑み浮かべるからちょっと気持ち悪いんだよね。それが無ければ文句なしに可愛い子なんだけど。
「わしは美夏がバカでなければ最高に可愛いのじゃ~」こらえろ。私。相手は子供だ?!
靴、ぐっちゃぐちゃ。
革靴でないだけましだけど、今日は厄日だ。
最近かった靴は結構なお値段がしたそうです。ちょっと解らないけど。
西洋手ぬぐいを浅生さんに返します。
このバスタオルって便利ですよね。普通の絞った西洋手ぬぐいで拭いてから乾いた西洋手ぬぐいで拭かなくていいですし。
「ただいま……ってみんな濡れ模様だね」誰のせいだと。いや、紺野さんの所為じゃないのは解っているのですが思わずそう言いたくなります。
変態と変な子と火を囲むのはちょっと妙な体験です。
「ああ。靴、濡れているね」そうなのです。これすっごく困るの。
靴ブラシで洗うと手間だし、すっごく臭いし?!
「じゃ、洗濯機に放り込んで、新聞紙を突っ込んでおく」え?!
「えっと、ぼくの下駄を貸すから、それで帰ればいいよ」ええ?!
なにそれ。すっごく汚いし?! 洗濯機に靴?! ありえない?
「脱水する分、普通より早く乾くし綺麗になるよ?」えええ? 汚い?!
「塊山は『ケガレ思想』って知らないんだったっけ」「なんでしたっけ浅生先生?」
首をかしげる紺野さんの頭の中をちょっと疑いたくなる。
洗濯機って。それも脱水機つきって。
普通手で絞らないといけないから?! それって高いですから?!
そんな高いものを靴なんて汚いものを洗うのに使わないでください?!
「高い。かなぁ。省力化を考えたら美夏ちゃんの勉強時間を減らせると思うけど」私、勉強なんてそこそこ手を抜きますから?!
「ダメダメ。学生は勉強が本分」「なのじゃ」変態と幼女はさておき、私は一つの事を今日は学びました。
確かに、新聞はとても役に立ちます。読んだことはないけど靴の水を吸わせるには抜群の力を発揮します。汚いと思ったけど仕方ないし。
でも、インクが多いのは勘弁してほしい処です。
ガラスを磨くにはとっても良いですけどね。
私の名前は夢野美夏。
キャピキャピの一六歳新人類。
私の好きな人は紺野塊山さん。
わたしの『アルバイト』先の店長さん。
「あなたはなんでも知っているのね」
「そうでもないさ。知らないことだってあるよ」
紺野さんはトンデモない変わり者なのです。
だから恋人の私が頑張らないといけないの。