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かふぇ&るんばっ♪1980  作者: 鴉野 兄貴
守ってあげたい

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日暮れまで土鍋もって豆を炊いた ~ 節分の豆の有効活用 ~

 ん。なぁに。おかあさん。

え? なによこれ? 木刀なんて娘に持たせないで。

無理に持たせようったってだめだからね。

お弁当をつるすのに便利? 赤胴鈴の助じゃないのよ?!

どうしてナナハン持ってくるのですか。今はもう乗りません。

整備が得意だった話ですか。確かに今でも○○組の組長さんに頼まれますが。

もう! 行ってくるから! 今日は遅くなるから先にご飯食べておいて!

え? 今日のごはんはあなたの好物のひじき煮と大豆だって?

あっちで食べますからたぶん大丈夫だと思いますがお父さんによろしく。


 学校指定のローファーがせわしなく動き、娘の足音が遠ざかる。

はぁ。ため息。『可能なら。可能なら自分が』

「無駄じゃ菅原の」『……』

「もう。おぬしの娘は自分の物語を歩んでおる。お前があやつを案ずるあまりそれにでしゃばるのは無粋だしあの娘のためにはならん」

『無事に帰ってきてね。お母さん。あなたの大好きなものを用意してまっているから』

そして、こういってあげる。思いっきり何事もなかったかのように。

『あら? 早かったのね。紺野さんとは今日はうまくいったの?』と。

……。

 ……。


 こんにちは。知らない人。

え。あなたはわたしを知っている?

そうね。あなたは私が好きな人と同じくらいハンサムかもね。

でも。あなたは私が知っている人じゃないわ。

「みかっちっ!」間一髪。境内を駆け上がる爆音。

焦げたガソリンの香り。それは私がかつて操っていた。

それが私を覆いかぶさる前にぶつかり、その乗り手は『いたた』とほほ笑む。

怪我しているのにどうしてこんなに無謀なんでしょうね。麻生先生。

「のれ! 菅原の娘!」後部座席に乗る娘と自称妖怪の女の子の声が重なります。

そういえば智子、いつから和服に? もうどうでもいいけど。

「どけ!」私は麻生さんと智子からかつての愛車を奪う。

境内の石灯籠を砕いて突き刺さっていた木刀を抜き、アクセル全開にして。

「もう貴様らが滅ぶのは確定しているのだが」紺野さんにそっくりな赤い機械の塊に私は打ちかかっていきます。


 私の好きな人はあんたみたいに弱くない。強い? 何処が? 笑わせないで。

8000年生きていて16の女の子の気持ちから目を逸らすほどあの人は弱くない。

誰かを好きになることが辛くて嬉しくてドキドキするほど全て変わっていく事だって。

それが生きていることなんだって教えてくれた。

愛も勇気も知らない? 知らないのにどうして私に教えてくれることが出来たのかしら。

「それに。あなたが教えてくれたのよ」「?」

未来のこと。ここで負けたら……いちご大福だって食べられないじゃないッ!

『今日のごはんはひじきと豆の煮物』ふとお母さんの言葉が脳裏をよぎります。

 ああ。族時代夜中に何度か星一徹の真似をしてひっくり返したっけ。

ごめんね。お母さん。心配してくれていたんだよね。

お母さんは節分の煎り豆を餅屋さんやお菓子屋さんからたくさんもらっておいてそれを上手に保存してそれで炊き豆を作るんです。

普通に豆を炊くとそれこそ日暮れまで炊かなくといけないって。

こんどお小遣いをためたらお母さんに圧力鍋買おうかなって。

「あれはひとつの可能性に過ぎない」「なら、私はそれを守る」

お母さんが作る料理ができる未来。それが積み重なって。

私はあの生意気だけど内心に巣食う不安で押しつぶされそうな子と弱気な自分を嫌う少女を思い出す。

未来からやってきたというのはまいなちゃんの戯言だと思ってたけど今なら信じられる。


 私は知っているわ。

どんなことにも負けない心を。

何より怖いものを。愛すべきひとたちを失うかも知れない怖さを知った。

私にもわかったの。勇気を持って抗う大切さを。

生きていることの喜びを。未来。ともだち。家族。たいせつなひと。

全てが好きになることを。

「私は。あなたを全力で否定するわ。

かえしてよ。かえせよ。私の紺野さんを返しなさいッ!!!!!!!!」

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