思われ日記 ~分厚い肉をたった5分で解凍する方法~
・分厚い肉をたった5分で解凍する方法
1.底が上にくるように鍋をひっくり返して置く。
2.鍋底の上に肉を置いて、もうひとつの鍋でサンドする。
3.上の鍋に水をいれ、そのまま5分放置。
熱伝導ってやつのおかげで凍った肉の冷たさが大気中に一気に逃げる。らしい。
そんなこと知ってどうするんだか。凍った肉を解凍した時の臭さってないから。
でも猛さん。浅生先生は将来的には臭くない凍った肉が出来るって言ってた。
そんなもんかねぇ。
当時はそう思ってたけど。
まぁ私も歳をとるもんさね。
娘が今度結婚する。らしい。
相手見て本気で驚いた。女じゃないかと。
娘が言うには性同一生涯。これじゃ美夏っちだ。
青銅一。それはブロンズ聖闘士だ。
慌てすぎだ。私。でもなるべく平静を装ったつもりだよ?
なんか最近の漫画にも私詳しくなっちゃったな。
みかっちのお母さんが車田正美のファンだったからねぇ。
良い人だったな。総長。
葬式のときちょっと騒ぎになったけどさ。はは。
しかも。じゃなかった。そうそう。
娘だけど聞いて驚け。デキ婚らしい。あの生真面目な娘が?!
『妊娠させた』のはうちの娘。はい?!
性同一障害だか両性具有だか言うらしくてすっごい美人さんを連れてきた。
『鬼のサイトウです』と聞いてわたしゃにんまり。
だって『知り合い』だったからねぇ。
え? 意味わかんないって? まぁ知らないほうが世の中良い事もあるさ。
なんで女が孕ませたんだとか言うと遺伝子の学問の話をどうとかこうとか説明受けたけど私だけではなく娘も多分解っていない。
なんでも『酔っぱらっていてその日の事はさっぱり』らしい。
娘よ。お母さんは悲しいぞ。おめでとう。もげろ。
不出来の娘の事はさておき。
ああ。本当は自慢の娘だからね。
……何から話そうか。
そうだね。えっと、猛さん。
つまり当時で言えば浅生先生だね。
結論としてやっぱり逝った。
最後はすい臓がん。壮絶な最後だった。
誰より娘の花嫁姿を楽しみにしていたのにね。
まさかタキシードを着ているとは思わなかった。
どうなのだろうそれって天国の猛さん?! ふふ。
まぁ。世の中は色々変わっていくものだし、そうなのかもしれない。
変わらないものだってあるし、未来の事はきっと。
娘のことだが猛さんたちの見守りもあって。ごほんごほん……。
……苦学しながら娘は神戸のお嬢様学校に通ってそのままそこの教師になっちゃった。
血は争えないもんだね。
私は必死で広島で仕事。
とはいえ、猛さんの影響で私も教師になっちゃったけど。
あはは。実家の仕事はほどほどにやってる。
教師は本当は副業禁止だからナイショってことで。
いや、親が死んでもやってるけどさ。人に任せながらだけど。
夕立の去った香りに気付き、思わず外を眺める。
きらきらと輝く露の元、今日もあの人が愛した花が。朝顔の花が咲いている。
私も老いたなぁって口にするたび同級生の皆が嘘つけって。ははは。
地元に住んでいると色々大変でさ、同窓会ではいつも幹事を押し付けられて。
まぁ『紺野商店』に住んでいるどっかのだれかさんほどアレじゃないけど。
あんなお化け屋敷、よくお洒落なブティックにしたもんだよ。まったくあいつは。
今でも同窓会になると俊一君と優君の姿を探してしまう。
いるわけないのに。でもどこかで笑って過ごしていてほしい。
短い間でも愛してくれた。思いは受け取れなかったけど……そんな大切な人たち。
誰も覚えていなくても私たちはちゃんと覚えている。忘れられない。
珈琲を飲むとダメだね。二人の事を思い出して鼻がツンとしちゃうんだよ。
「浅生の家にはとってもかわいい座敷童がいるんだよ」「うっそ~」
孫も大きくなったし、最近口答えもするようになった。お母さんの苦労を想ってしまうよ。
「幸せに気づかせてくれる。ステキな素敵な守護神様なんだよ」「お婆ちゃん出鱈目言っちゃダメ」
生真面目な娘の子供らしくぶうと頬を膨らませる様子に笑っちゃう。
今幸せかって? 多分幸せなんだろうね。
え? 紺野さんと美夏っちのその後?
ははは。私が語ることじゃないよね。それって美夏っちが言わないといけないでしょ。
私はね。その場にいただけだから。美夏っちがいうには私のお蔭らしいけど。ないない。
この日記も紙面が尽きてきたなぁ。
未来のことを書く日記だけどだいたい実現している。
気合が入るんだろうね。こういうのを書くと。
これって紺野さんが教えてくれたことなんだよね。
メモと手帳とノートの使い分けとか、色々教わったけどね。
ああ。傑作な話もあるんだよ。でもその前にみかっちの話をちょっとだけ聞いてね。
このお話はみかっちのお話。私の話はタダのオマケ。
でも聞いてくれてありがとう。私も天国にいいお土産が出来たよ。
だから。
『もうちょっとだけつづくんじゃよ』
これも最近の漫画の真似……ってそれってスゴク古い? かも。
じゃ、美夏っちのお話、もうちょっと聞いてあげてね。
不幸は幸せのパスポート。
不幸を呼ぶ座敷童とその一族。
神の末裔のお話。か。
蛇足だった? ごめんね。
じゃ、美夏っちにお話をつなげます。
ではでは。
~智子ちゃん編 おしまい~
引き続き『かふぇ&るんばっ♪ 1980』をお楽しみください~




