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かふぇ&るんばっ♪1980  作者: 鴉野 兄貴
1980年。夢野美夏16歳
4/49

どんなことにも負けない心を ~松竹梅~

「はん。あっけない」


 一人相手に三人と男まで連れてお前たち硬派じゃないよね。

今なら言います。言えます。当時の私は腐っていたと思う。

紺野さんに出逢うまでは私はちょっと悪い子でした。

完結に言います。恋は女の子を変身させるのです。

え。完結じゃなくて簡潔? そんなことどうだっていいじゃない。

あなたは誰よ。私はあなたの事なんて知らないわ。


 あの日以来、私はなぜか用もなくあの坂を登っていました。

坂を登っていく影をみるたびに胸がときめき、生唾を飲み込みます。

ばかばかしいことに、私はその訳が解っていませんでした。

その長い影が私に迫ってくるその瞬間まで。

男の子と喧嘩した時でさえ震えなかった手足ががくがくと震え、いつも啖呵を切っていた舌はおぼつかずめまいすらしますが。

「見つけた。いつぞやのおっさん!」「若いんですけど」


 髪を伸ばし、スカートを引きずり履きつぶした革靴を踏み鳴らしながら私は彼に詰め寄ります。

「えっと、えっと……」というか、どうして私は彼の姿を見て『見つけた』と叫んだのか。

ちょっと落ち着きましょう。ええ。ラマーズ法はイイですけど。

「掌に『人』と何度か書いて飲み込む真似をすると良いよ」「博識ね」

というか、そんなこと聞いていないし?! またしてやられた?!


「えっと、えっと」


 思わず頭を抱える私のそばを通り過ぎた彼。

私の頬から血の気が引くのが自分でも解りました。

自転車のチェーンや剃刀の刃を持った男の子や女の子がうめいていたのですから。

そしてそれは今私が倒した人たちで。

その。あの。

みないで。みないで。


 顔を赤めたり青くなったりしているのが自分で解るほど狼狽している私をしり目に、紺野さんはツッパリの応急手当をしていました。

「うん。大きな怪我はない。君たち自力で帰れる? あれなら救急車を呼ぶけど」

救急車はここには来れないと思う。

そうそう。この坂、九十九段じゃなくて一〇〇段あるからね。



「私って松竹梅の梅だよね」


 警察に突き出されることはなかったけど、

紺野さんに頂いたお菓子をつまみながら柄にもなく自己嫌悪。

解っていたんだ。勉強も落ちこぼれて、喧嘩ばかりで。

私なんていなくても良い子だと思う。そう思うと悲しくて寂しくて。

「どうして梅?」「だって最低じゃない」

最低でどうしようもなくて、紺野さんに恥ずかしい処を見られて。

って。どうして紺野さんにこんなところを見られたくなかったんだったっけ。



 そうかな。

彼は優しく微笑みました。

私の頬がまた熱くなります。

あ。ちょっとめまいが。風邪かな。

「寒い冬に耐え、春の訪れを知らせる梅なんて最高じゃないか」胸が高鳴る。

これは。これはヤバいかも。うん。ちょっと私今イモいかも。

「そもそも松竹梅って言うのは優劣はないよ。良いものを指す言葉だと聞いている」そうなの? 松の部屋とか言うし。

「松が一番で竹が二番ってこと、あるわけないじゃないか」そう。そうかな。

「寒さに耐えてなお輝く梅。春の祈りを咲かせる桃。華麗に舞って命の緑を芽吹かせる桜。どれもすきだ」

『好きだ』という言葉が何度も胸の内をえぐる。


 決めた。

私は。私は……。

この人と一緒になります!!!!!!!!!!

「え?」「えっ?!」

紺野さんの表情は明らかに戸惑っていた。



 私の名前は夢野美夏。

キャピキャピの一六歳新人類。


 私の好きな人は。

「あなたはなんでも知っているのね」

「そうでもないさ。知らないことだってあるよ」

私の将来の御婿さんにするにはトンデモない変わり者なのです。

だから私が頑張らないといけないの。

可愛い女子高生になるために勉強もおしゃれも頑張っています!

「だから、バイト代上げてください紺野さん」「あのね。美夏ちゃん」

こんな私たち夫婦が営む『紺野商店』。ぜひ来てくださいね!

本日はCMでした!!!


「ええと。ぼく等は夫婦では」「将来的にはなります!」

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