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かふぇ&るんばっ♪1980  作者: 鴉野 兄貴
愛と勇気を教えてくれるヒト

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35/49

私の胸をゆすぶる重み~水着回だけど残念! ベビーパウダーで砂落としと日焼けにもやっぱり重曹?!~

 いつもいつも思うのですが、水泳の時間は苦手です。

海で泳げるのはなかなか爽快なのですが。その。あの。

私は大きなタオルを羽織り、衆人環視に耐えます。

近くでは今日もサボりの親友が見学を決め込んでいるのですが。

「夢野君。サボると留年だからね」浅生先生。鬼ですよね。

「ワシは座敷童じゃが、浅生は鬼ではない。人間じゃ~」

ちなみにまいなちゃんは浴衣姿で泳いでいます。地味に下に何か着ている模様。

というか。アンタ誰? 紺野さん以外は見るなぁ?!

って、言えないのが最近の私です。ええ。


「夢野。ぼいんぼいんだな」「……」


 頬が熱くなるのは暖かいからでもなく、手が震えるのは怖いからでもなく。

歯ががちがちいうのは寒い訳でもないですし、舌が震えるのは別に喋れなくなったわけでもないです。

無理に笑顔を浮かべてがまんがまん。大魔神な顔を人に見せるわけにはいけません。

 無謀な男子に思わず手が出そうになりますが我慢我慢です。

ちなみにボインという言葉は朝丘雪路さんの若いころの姿だそうで。

男子よ?! 深夜に何を見ているのだ?! だから溺れるのだ。あーあ。

「男子ってどうしようもないね」「だねぇ」近くにいた同級生と共にため息。

この水着、注意しておかないと横から胸が半分出てきます。

破けるのかと可也怖いです。おしりとかすぐ食い込みますし。

とてもじゃないけど泳げる状況ではないのですが、

英語のオールドミスはなぜか華麗なクロールを見せています。

しかもビキニ。大胆!?

「なんだろう。夢野なみにイイ体なのにすっげー残念な気分」「あはは」

笑いあう男子に大きめの布で身体を隠す私。

真面目に一言呟いたのは学級委員の真面目な子。

「俺は良いと思う」うん。浅生さんがもう一人いた。ちょっと彼を見る目が変わりました。

というより、英語の授業はどうされたのでしょうか。

「あの人、もともと水泳の選手らしいよ」「へぇ」

今度は華麗なバタフライを見せて、すいすいと波を気にせず泳いでいます。

「プールにしてほしい。どうして男子と」「プールを去年壊したバカがいるからだろう」しっ?! その話は禁止です。浅生先生?! それを話されたら私は退学になってしまいます?!

「ああ。プールが割れたアレか」「誰がやったんだろうな」「人間の仕業じゃないよね」ほ、ほほほ。どなたでしょうね。

ああ。親友のにやけた視線が痛いです。お前ばらすなよ。ぶっ殺すからな。

「ああ。私はラーマソフトだから」はい?

視線を寄越す私に「軽い。スベル。とってもやわらかい!」と微笑む彼女。

しっかりしろ。私の進退はお前が握っているのだぞ?!

それに肌がぴりぴりしますし、まだ初夏とはいえちょっと肌もいたいかも。

「知ってる? きゅうりを貼ると日焼けしてもいたくないって」「俺はレモンって聞いた」なんか紺野さん出てこないからなぁ。出てこないだろうなぁ。

水泳帽子をかぶり直し、周囲を見回すとどうしても男たちの視線が。ううううう。

「お、おいっ?! 目を合わせるなっ?! あいつはミカドンの夢野だっ?!」何時のまに変なあだ名が追加されたのでしょう。

「あいつが人間ピカドン?! 超マブいのに?!」「いや、見た目に騙されるな?!」

「あれか。あいつが尾道の大魔神?!」「視線だけで人を殺せるって言うぞ」

厭らしい視線を私たちに向けていた柄の悪いオジサンたちが逃げていくので女子の皆が不思議そうな顔をしています。

「夢野さん。知り合い?」不思議そうな顔をする小柄な女の子。うーん。なんて名前でしたっけ。

私は取り敢えず首を振ってそれを返答とします。


「ねね。まいなちゃん」「なんじゃ?」


 ぴょんぴょんと浮き輪を持って浅生先生に抱き着こうとしていた自称妖怪の幼女は不機嫌そう。

「ねね。肌がピリピリしない方法教えて」「ふむ?」

楽しそうな笑みになると彼女は一言。『重曹じゃな』また重曹?! 出鱈目でしょ?! この間お母さんに叱られたしっ?!

「日焼けはやけどじゃ。まずは重曹水で簡単な処置をするのじゃ」なんでも肌の汚れからくる黒ずみにも有効だそうです。

「というか、身体を冷やすのが普通じゃ」

やけどというのはまず火照り。そして体の中にこもる熱からくるやけどがあるそうです。

「きゅうりパックっていいのかな」そういうと彼女は首を振ります。

「確かに体は冷えるとおもうがのう。きゅうりやレモンやパセリには『そらーれん』なる物質がはいっとる。肌についたまま太陽の光を浴びるとしみになるぞい」げげげっ?! そんなことどの本にも書いていないよ!?

「喰ってもそうなるぞ」さ、参考にします。

とはいえ、あまり気にしすぎないのが一番だそうです。

「そりゃそうじゃ。ビタミンEとかもとるべきじゃし」は、はい。

ちなみに、肌を冷やし終わったら紅茶入りの水風呂とか、牛乳をしみこませた綿で身体を拭くのがよいそうです。

でも、茶渋がついたらお母さんに叱られそう。あと牛乳は……まぁなんとかなるか。給食で余るし。

「あと、とっておきを教えておこう」「はい?!」


 砂だらけになったらベビーパウダー。

これで水着や足の裏を処置するのが楽になるそうです。

これは良いことを聞きました。

「では、まいなちゃん」「なんじゃ?」

「綺麗に泳ぐコツは?」「わしがこなき爺並に重いことを知ったうえで言っておるのか」

そういって膨れる彼女の顔は、年相応にかわいかったです。

「夢野! なんだその犬かきは?!」「はいぃぃ?!」


 私の名前は夢野美夏。

ばちゃばちゃと海でもがく16歳女子高校生。

私の好きな人の名前は紺野塊山さん。

とっても素敵なヒトなんですよ。

ちょっと、妖怪並にかわっていますけど。ええ。

今回はお休みですけど、次回は塊山さんのかっこいいところを。

見せれたら。いいなぁ。無理だけど。だってあの人残念なヒトだもの?!

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