プランタマン80 ~プランタ栽培のすすめ~
浅生さん浅生さん浅生さん。
「いま忙しいからちょっとまってね。鵲」「はいよなのじゃ」はいよになのじゃはいらないのじゃまいなちゃん。ってうつっちゃった。
「というか。紺野さん紺野さん! 紺野さんってば」
彼の鼻先にはナメクジがうごめいていました。何をやっているのですか。
こんにちは。知らない人。
ただいま私たちは植木鉢をいじっています。
正確には私はの獣です。
の獣じゃなくて除け者だって? そんなことどうだっていいでしょう。
「お花いじりが好きなんて女の人みたい」「昨日美夏ちゃんが食べた野菜もこれで作ったんだよ」え。そうなんですか。
「ハーブなんて結構放っておいても育つし初心者にはお勧めだね」ふうん。
「ちょっとした節約にもなるし、食卓にも彩が加わるのじゃ」
というか、アブラムシとったりナメクジつまんだりこの子は偉いなぁ。
私は唇を『へ』の字にまげて、なんとか虫をつまむとみんな大笑い。
「大魔神の顔をした娘が虫をこわがっとるのじゃ。愉快じゃの」「鵲。あまり美夏ちゃんをからかわない」「ふふ。ありがとう。美夏ちゃん」
「初心者には水だけやってればいいハーブなんてどうかな」
そうお勧めされた私は、お家に植木鉢を持って行って。
ベランダを泥まみれにしてお母さんに叱られました。
「水を溢れるほど入れたらダメだし、虫だって莫迦にできないのよ?!」
でも、数か月後に咲いた朝顔は。
すっと鼻先を近づけて土の匂いを嗅ぎます。
水気を頬に感じてさわやかな早朝の風が耳の先を通り過ぎます。
昨日プランタっていう植木鉢で取れたお野菜はお母さんと分け合って食べました。ハーブとかなんとかいうのは不思議な香りでおもしろいですよね。ご飯が別の味になった感じです。味は変わってない筈なのに。
ふっと甘い息をお花に吹きかけると胸がときめくのを感じます。
だって紺野さんがくれたお花だもの。
「お花っていいよね」「面倒くさがって見向きもしなかったくせに」
そうお母さんは笑います。「じゃ、浅生さんのとこにいってくる。智子と約束したし」「ふふ」
浅生さんは種をまいたらほったらかしの生徒たちに代わっていつも学校のお花やお野菜の世話をしているそうです。
智子は『あの一件』以来浅生さんに押せ押せでして。
学校に目をつけられないようにするには好都合ですよね。
あのね。知らない人。私はとっても幸せなんですよ。
だってあなたに。紺野さんたちに会えたんだから。
私の名前は夢野美夏。
キャピキャピの高校一年生。
私の好きな人は。
「あなたはなんでも知っているのね」「そうでもないさ。美夏。知らないこともあるよ。いっぱいね」
とっても変なヒトなのです。だから私たちは幸せになるために色々知っていかねばならないのです。




