アー?! ABC ~血液型診断はでたらめだ~
「ねね。智子はB型でしょう? マイペースだもんね」「AB型」うっそ。
「そう言うアンタはA型だろ。そうに違いない」残念。C型です。
そう言うと智子は莫迦にしたように笑いました。
「Cなんてないし」「うっさい」私たちは結局紺野さんのお店にいます。
「最近バイトサボる子がいたから忙しかった」と微笑む店主が淹れる優しい香り。
珈琲に遠慮なくミルクと砂糖をブチ込む智子にうんざり。
「ちょっと。インスタントじゃないんだから」「え~。アンタだって飲めない癖に」最近はちょっとだけなら飲めるのよ。カッコいでしょう。
そういって飲み込んだ私は一気に急き込んでしまいました。
に、にがっ?! あつぃ?! 熱いっ?!
「ぎゃはは」笑う彼女にはいつものぶりっ子な姿はかけらもありません。
「ABCが気になる美夏ちゃんはお盛んですなぁ」
不思議そうな紺野さん。
一気に耳が熱くなった私はむきになって彼女を抑え込みにかかります。
「い、いだいいだい。紺野さんみかっちが苛める」「苛めは良くないよ。浅生がそう言ってた」ええい?! こういう時にかわいこぶるな? この元爆弾パーマ?!
話を聞くと珈琲の最後の一杯は苦味と臭みが出るので別のカップにしていたのをうっかり出してしまったそうで。なーんだ。
「で、Bくらい行ったか? お前のおっぱいは凶器だからな」
そういってオッサンのような笑みを浮かべる奴ににらみを利かせます。
こんにちは。知らない人。私の無念。もとい胸についてここは乙女の守秘義務を行使させていただきます。それは黙秘権だって? どうでもいいでしょう。
ちなみに智子は胴体そのものが小さいせいで普通に見えますが脱ぐと妙に大きいので普段はつけていないとお教えしましょう。
体育もかわいこぶりって仮病使ってはサボるし。落第になっても知らないぞ。
ABC? ABCが何かって? えっと。その。
Aがその、せ、接吻……キスで。
Bが。Bが。恥ずかしいから聞くなぁ?! 悪かったなぁ?!
「でも、抱き合うのがBなら前にやってなかった? なんか変な夢見たとか言ってごまかしてたけど」「夢に決まっています。紺野さんが私を抱きしめるとかあり得ませんから。この人には美少女に興味がないのです。きっと浅生さんみたいな男が好きなんです」
吐き捨てる私に智子と紺野さんが同時に呟きました。
その鼻先から湯気が少し出たのは珈琲のおかげでしょうか。
『誤解だ』
「で。おっぱいもんだんですか。紺野さん」「していません」
「もう、美夏はいつでもオッケーですよ。ええ。親友の私が保障しましょう。バイト先で手が触れたとかそれだけのことを何度も何度も嬉しそうに」「言うなっ?! 本人の前でっ?!」……は。乱暴な言葉を使ってしまった。いけないいけない。
「処で、血液型診断って言うのはでたらめだよ。そんなことで君たちのステキさを図れるわけがないじゃないか」
紺野さんが申されるには、昔の日本が輸血の関係で国民に己の血液型を周知させるために流布させた盲信の類じゃないか。だそうです。
「でも、そのおかげで皆が輸血の時に困らない。そのことのほうが大事だけどね」そうですよね。
「日本軍っていいこともしたのかなぁ」「学校ではワルイヒトたちって言うけど」
お爺ちゃんたちは苦笑いして語りません。お爺ちゃんたちが悪い人には思えないんだけど。
「過去は過去。過去はさておき、新人類の君たちがステキな未来を作ればいいのさ」
紺野さんの言葉に私たちは「はーい!」と元気よく答えました。
だってケーキですよケーキ?! これって高いんですよ?! 食べ過ぎるとバターがきつくて頭が痛くなりますけど。
私の名前は夢野美夏。
私の好きな人は何でも知っている不思議なヒト。
きっと彼は。宇宙人さんなんです。
「今は普通の古物商だけど」「ふふ」
またねっ♪




