表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターハンター  作者: X
アルナ DEAD END
5/5

DEAD END

2886年。8月18日。16時33分47秒。


この世界と俺の宿命が終わった日。


「アリス!!」


俺の決死の叫びを聞く前にアリスはわかっていると言わんばかりの構えを見せた。これはアリスの特殊スキルである。


無双乱槍インフィニティスピア≫。


アリスが使っている武器は片手槍ワンハンドランス。その槍は連撃をメインとした軽い槍。重槍や槍楯そして双槍など槍は種類が大幅である。(しかし剣の方が種類は多い)。


その中でもアリスが使っている槍は槍の中で最弱の攻撃を誇っている。いやもっと言えば火力が低い武器ランキングに片手槍ワンハンドランスはワースト3に入っているだろう。そのため遊びでしか使われなかった武器の一つである。そしてデスゲームとなったこのゲームでは好んで使う輩しか使わない。


しかし片手槍ワンハンドランスはその軽さゆえにできることがある。それは連続攻撃。


その軽さを活かして連続で攻撃を繰り出す。まさしく塵も積もれば山となる。その武器にお似合いな言葉だろう。


しかもアリスはその槍にしか使えない特殊スキルを持っている。さっきも言ったが≪無双乱槍インフィニティスピア≫。88の連続突き攻撃である。目にもとまらぬ速さで光のような速さで突く。


部位破壊などするためあるような技だがとてつもなく強い。


だからアリスはここまで上り詰めたのであろう。


「お疲れ様アルナ」


「あぁ」


気が付けばさっきまで戦っていた巨竜は既にデータとして消えていた。


「部位破壊ボーナスやっと出たわよ」


「ほんとか!?」


俺は入手道具アイテムを確認する。そこには巨竜の角の文字が刻んである。俺は思わずガッツポーズを取る。そんな俺を見てアリスは笑った。


こういう光景を見ると俺はこの世界ゲームは死と隣り合わせということを忘れてしまう。


「でもそんなに巨竜の角が欲しかった理由はなに?」


巨竜の角は特に使えるような道具アイテムではない。決して武器を作ろうと思ったわけでもない。防具でもない。


「これがあれば俺の家がまた華やかになる」


「はい?」


ただの飾り用である。


「あなたね。そんなことで私を使わないでくれるかしら?これでも攻略組のギルド長なのよ?」


「悪かったよ。角って俺の剣じゃ破壊しきれないんだよ」


「それで私の攻撃をね」


「あぁ。これからも頼りにしてるぜアリス」


俺がそういうとアリスはそっぽ向いた。


あれ?俺なんか悪いことしたか。やはり巨竜の角取るためにアリスを使ったのは悪いことだったのか。


これは後で晩飯おごれとか言われそう。お金にはまだ余裕があるからそれでいいならいんだけどな。


アリスは大きく深呼吸をした。なんだどうしたんだこいつ。あれか説教する前の深呼吸ってやつかな。


「ね…ねぇ」


アリスの動作がさっきよりぎこちない。さらに声も裏返っている。なんだ俺に言えないようなことなのか?


「よかったらでいいんだけど……」


「なんだよ」


「私と結婚してくれない」


俺は歩く足を止めた。こいつは今なんて言った?


『結婚』。しかしそれはゲームだけの付き合いであることはわかっている。ていうかアリスさんの可愛さはこのゲームでトップ5に入るからな。アリスファンギルドがあるくらいだ。


というか俺はそんなアリスさんに告白された?


「ゲームだけじゃない…もしもこのゲームを一緒にクリアしたら付き合ってほしい。あなたのことがとても……とても愛おしいの!!」


なんだなんなんだ。


「ちょっと考えさせて!!」


俺はその場から逃げるようにクララベルに走って帰った。アリスが待ってとかなんか言ってた気がする。


告白された。人生で初めて。


俺のモテキってやつか。これは嬉しいんだが。


外でも付き合ってほしいか……。現実の俺は腐れニート。恐らくアリスはそんな俺を見ると絶望するだろう。


俺は今人生で一番の難関と出会っていた。


「なんで俺なんだ?」


俺は明日アリスと一緒にアリスのクエストへ行く約束をしている。ここで聞こう。アリスはどうして俺を好きになったのか。


そして時刻は過ぎていった。


眠っていた脳を起こし俺は気合を入れて待ち合わせ場所に10分前に出たぞ。アリスは初デートの乙女のようにそわそわしていた。


ていうか早!


「アリス…は……早いな」


「いや…その…」


2人とも黙り込んで気まずい空気になる。


「い…行こうか」


そう言いアリスは沈黙を破った。俺はコミュだからこういうことは苦手なんだよな。


「そうだな…俺もアリスに聞きたいことがあるんだ」


「聞きたいこと?」


「まぁ歩きながら」


俺は目的地の森へ向かい歩き出した。


そして森の中。ここは神秘の森。木々は青く生い茂り観光地としても有名だ。しかしここではプレイヤーキルが多発している。何故ならその木々による死角を使うからである。ある程度の強さを持ったカップルプレイヤーが多い。


カップル。


俺はその言葉に意識してしまう。


「聞きたいことって?」


「あっ。なんで俺なんか好きになったの?」


アリスは顔を真っ赤にして言った。


「好きになるのに……理由なんかないわ!!!」


すっげぇ可愛い。


「でも現実の俺なんて腐れニートだし」


「私は今の君が好きなの。こっちの君は君じゃないの?私は今のアルナ

が好きなの。私って人を好きになったこととかないから……」


その言葉を聞いて俺は思わず。


泣いてしまった。


「どうしたの!?」


俺はずっと求めていたんだ。


現実いまという時の俺を愛してくれる人を。


「ありがとうアリス……俺も決心がついたよ」


「えっ?」


「俺は……」


体の自由が効かない。ゆっくりと体が倒れた。


「アルナくん!?」


こ…これは…麻痺!?


そんなこの神秘の森に麻痺を持つモンスターが?


そしてアリスもゆっくりと倒れた。


やばい…これはプレイヤーキル。極めて極悪な。


「よぉー」


その声は聞き覚えのある声。俺はこいつを知っている。


「調子はどうだい?って言ってもしゃべれないのか」


そいつの顔を拝む。そいつはエスパンダーだった。半月前に攻略組を止めさせられた。


「俺は今からあんたを殺す」


間髪も入れずアリスに近づいてエスパンダーは巨大な大剣を持ってアリスに斬りかかった。


「や……め…ろ……」


「なに?」


喋ることができた。それはゲームのバクかもしれない。だけど現状のこいつを動揺させることはできた。


「しっかしあんたを殺すのもいいな」


「!!?」


「まず右足ぃいいい!!!」


大剣が俺の右足に繰り出される。右足はデータになって消えた。体力も激しく減少する。


「左足ぃいいいいい!!!!」


体力ゲージが赤くなる。麻痺解除までもう少し。


「じゃあな」


死ぬのかここで。


アリスに何も言わずここで死ぬのか。


俺の人生はここで終るのか。


走馬灯のように流れてくるアリスの出会いから今までの思い出。泣きたくなるほど平和で楽しかった日々。


そうだ……俺もこの子を。


愛していたんだ。


「言わなきゃ…」


「なんで足が!?麻痺は!!?」


「俺はここで死ぬわけにはいかない…」


「まぁいい!!しねやぁあああ!!!」


完全に不可避の位置から振り下ろされる大剣。俺はそれを受けた。


体力は……0。


だが俺は。


ゲームバランスを崩しここに存在していた。


「なんで!!!?」


「死ね!!」


迷わず俺はその首を切った。


「そ…そんな…俺の計画と……や…野望が…し…死にたくな…」


言い終えることなくエスパンダーは消えた。だが俺は存在している。


スキルを確認する。


≪無限の愛≫。


そのスキルを確認しようとすると体が動かなくなる。暖かい光に包まれる。


「アルナぁああああ!!!!!」


アリスが麻痺を解除されて俺に近づいてくる。その表情は涙で崩れていた。


最後なんだから笑って…お別れしようぜ。


「アリス……返事をさせてくれ」


「お願い!!!死なないで!!!」


「俺も…アリスが……」


大好きだ。


そして俺はこの世界からもあの世界からも消えた。


アリスに言えなかったまま。


――――俺は死んだ。

【無限の愛】 死んだ場合30秒間の猶予が与えられる。

       その際は無敵である。


ARUNA HR  157

    武器 太刀

 特殊スキル 絶斬

    命日 2886年。8月19日。13時23分34秒。

       神秘の森の激戦にて死亡。


   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ