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モンスターハンター  作者: X
アルナ DEAD END
1/5

三度繰り返す

カプOンとは全く関係ありません


仮想世界と呼ばれる世界が出来上がったのは、今から800年前辺りだ。その莫大な大規模ネットワーク。


略称・VRMMORPG。


略さず言ってしまえばVirtualヴァーチャル Realityリアリティー Massivelyマッシブリー Multiplayerマルチプレイヤー Onlineオンライン Roleロール-Playingプレイング Gameゲーム


しかし、わざわざご丁寧にこれを言うやつはいない。みんな当然のように略称を言っている。


発売当初。これは1000万本を売れることを推定された。


もちろん、当然のように売れた。しかし、恐れていた事件が起きた。


ログアウト不可能。


それはゲームからの帰還を不可避とする。そのゲームの名前は≪アルツナイト≫。ギルドを組み上げ、他ギルドを潰す戦争系VRMMORPG。そのゲームで死んだ者は返ってこなかった。帰還方法は残り一つになるまでに潰しあえだった。


生き残ったのは4人だけだった。


そして、その悲劇の惨劇によりVRMMORPGは一気に大赤字。やはり人間は口ではゲームの世界で死んでみたいとは言うものの事実死にたくないものなのだ。


VRMMORPGはまるで売れなくなっていった。


そのまま時は進み7年前。VRMMORPGに革命が起きた。


≪ZERO≫という新たなるゲーム。


誰もがそのゲームに魅了され、VRMMORPGにもう一度時代がやってきたと思われた。だが、≪ZERO≫もデスゲームに姿を変えた。生存者は一名のみだった。


その生存者の名前は……


ぴぴぴぴっ…


そこで俺が設定していた時間になりアラームの電子音が聞こえる。俺は室内に設置されているカプセルへ近づいていく。入口の横に設置されている数字入力ボタンを押す。俺が初期設定で設定したパスワードと合点したためそのカプセルの扉が開く。俺はゆっくりとそのカプセルの中へ入る。


カプセルの中は的確な温度なため熱中症などになることはない。俺は六つのパーツを両腕・両足・胴体・頭に装着する。視界が閉ざされる。何も見えない。


俺はその暗闇の中でただ時間を待った。


VRMMORPG≪モンスターハンター≫。


七年前の惨劇があっても、このゲームはとんでもなく売れた。このゲームをデザインした人物のおかげである。


東郷 秀松。


多彩なMMORPGやオンラインゲームを編み出した天才人物。そんな彼が大不況になると予測されたVRMMORPGのジャンルに挑戦した。誰もが売れないと予測したが俺のような熱狂的ファンはそれを容易く買った。


結果・このゲームは100万本以上の出荷に成功した。そもそも、ログアウト不可能になんてなるわけない。あの東郷の作品だぞ?彼のシナリオ構成力・キャラデザイン・背景彩色は誰にも引けを取らない。それほどまで東郷という男は天の才能を持っていた。だが彼がもっとも優れているのは、ゲームシステム。


説明しきれない莫大なシステム。そこに面白さがある。人を引き付ける力があるのだ。


そして、もう一度アラームが鳴る。俺は手探りで見つけ出していた起動ボタンを押す。真っ暗だった世界は光を灯した。


そこで、俺の意識は切れた。












もう一度、その目に光が流れ込んでくる。どうしても酔ってしまいそうになる。俺は揺れる頭になんとか鞭を打ってその場に立ち上がる。


そこはさっきまでのカプセルとは違う異世界。大草原の真ん中だった。


頭に女性の声が聞こえる。


『ようこそ、≪モンスターハンター≫の世界に』


俺は来たんだ。この世界に。


『キャラクターの名前を設定してください。尚、数字を織り交ぜることや同じ名前を持つプレイヤーがいる場合は確認ができません。』


俺の腹部辺りにタッチスクリーンのような文字盤が現れる。俺はそこで自分の名前を入力する。この世界での俺の名前は。


『ARUNA様ですね』


そして、これでいいですか?という注意書きが出てくる。俺はYESのボタンを強く押す。すると、左斜め前に(プレイヤーの視界から)俺の体力ゲージが表示される。その体力ゲージの上には俺の『ARUNA』の名前が刻まれている。名前の下には緑の長いゲージ。その下に白色のゲージがある。


『承認しました。ようこそ≪モンスターハンター≫の世界に』


そして、俺の視界いっぱいに英語で俺を迎える文字の羅列。


『Welcome Monster Hunter World』


俺は思わず歓喜して拳を握る。


これがVRMMORPGゲーム。


もしかすると、ここで死ぬことは本当に気持ちのいいことなのかも知れない。ここで死にたい、と言っている奴の気持ちがわかった。最初に言ったことを撤回したいくらいだ。


だけど、それは大きな間違いだと俺は後々気づかされる。俺たち≪狩人プレイヤー≫は所詮、GMゲームマスターの掌の上で踊っていたんだ。


GMには誰にも逆らえない。












―サービス開始から半年―

「うぉおおおお!!!!!」


俺はけたたましい雄叫びを叫びながら目の前の犬のモンスターを切り倒す。ダッシュブラストと言われる走り斬りである。モンスターの真上にある体力ゲージのラインが消える。すると、糸が切れた人形のように動かなくなり光の粒となり天へ舞い、消えていく。


「クエスト完了っと」


俺の視界にはCONGRATULATION!の文字が浮かび上がっている。俺は持っている愛刀の太刀。ダークネスサイクロンを背中の鞘に収める。そして、街へ戻りますか?という選択肢に迷いなくYESを押す。俺の体は青い粒に姿を変えた。


もう一度、その目を開くとそこは≪大都市・クララベール≫。


狩人プレイヤーたちの拠点である。今日も大都市は栄えている。何にせよ、この大都市には恐らくこのゲームの80%のプレイヤーが集まっている。RPGであるのだが、このゲームは町が三つしかない。そのうち、絶対的に人が多いのがこの町である。別名・始まりの町・クララベール。


この町は始まりでもあるためとんでもない大きさに設定されている。それこそ、北海道一つくらいの大きさである。一周なんて一日でできやしなかった。


俺がしてみたところ3日かかった。


馬鹿でかく大きいのがこの町。未だに未開拓地があるほどの大きさである。俺の家はこの町の奥地にある。確か値段はあまりしなかったはず。


ただ不満なことを言わせてもらうと、この町のシンボルでもある。町の中央にそびえ立つ巨大な塔。クララタワーと呼ばれる塔が建っているせいで俺の家は光を浴びることはできないのだ。まぁ、現実世界の俺は暗闇のカプセルの中で眠っているだけなのだが。


俺がゆっくりと家への帰路を歩いている時。とある事件が現実世界で起きているようだった。


GM(東郷秀松)が死んだ。


そして、新しいGMがこのゲームを引き継いだ。


これは現実世界で聞くと大ニュースだ。だけど、この仮想世界にいると別にどうでもいいことに聞こえた。それほどまでこの世界ゲームは素晴らしかった。


「さて……ログアウトするか」


俺は左側のゲージの下に設置されている歯車のボタンを押す。すると、視界に歯車が現れてその歯車の歯には各ボタンがある。俺はその歯の中からいつも通りログアウトボタンを探した。


だけど、それだけ歯車を回して探しても。


ログアウトボタンは表示されていなかった。


一瞬だった。俺はその世界の変貌に一瞬で気づいた。


「……そんな、ばかな……」


俺は急いで家の扉を蹴り開ける。誰もこの異常な事態に気づいていない。もしかすると俺だけがこの状態に陥っているのか?俺は深呼吸をしもう一度歯車のメニューを開きログアウトボタンを探す。


何度探してもそれはなかった。


「ウソだろ」


俺は歩いているプレイヤーに声をかける。


「あんた!!ログアウトボタンはあるか!?」


思わず声を荒げてしまう。他のプレイヤーも立ち止まりメニューを開いている。そして、俺が問い詰めた男性プレイヤーもメニューを開く。そして、大きく目を見開いた。


「な…ない…ログアウトボタンがない!!」


俺は少しの安心と大いなる絶望に包み込まれた。他のプレイヤーも困惑を始める。


体が青い光に変わる。


目を開けばそこはクララタワーの中だった。他にも大量のプレイヤーがいた。俺は察した、今ここにいるのはモンスターハンターの現ログイン状態のプレイヤーだ。


今の時間帯は日曜日の9時頃。もっともプレイヤーが集まる時間帯である。モンスターハンターの9割位の人が現在ログインしている。一体、何が始まるんだ。


すると、俺の眼前に巨大な人が現れた。顔には怪しげな仮面をつけており誰かはわからなかった。


「ようこそ、モンスターハンターの世界に」


プレイヤーたちが怒声を発する。


「さっさと出せ!!」


「顔あかせや!!」


「てめぇ!!ぶっ殺すぞ!!」


「私は二代目GMの中山 雄二だ」


俺はその名前を知っている。


≪ZERO≫のたった一人の帰還者。


「君たちにはこれから私が味わった絶望を感じてもらう。今!!このゲームはデスゲームと化したのだ!!!!!」


男は両手を広げ高笑いをした。全てのプレイヤーの表情が絶望に変わった。


「い…いかれてる」


『なんとでも言いたまえ。プレイヤーの諸君。君たちが現実世界へ帰る方法はたった一つ。私が現在導入したクエスト『楽園の龍』をクリアすることだ』


「そんなクエスト聞いたことないぞ!!」


『もちろんだ、今できたのだから。このクエストを受注するには自らのHRハンターレベルを200にしなければいけない』


「200……?おい、半年たってもHR100はいないんだぞ?何年かかると思ってんだ!!」


『そして、仮にこのゲームから死んだ場合。カプセルの空気が一酸化炭素に変わり君たちの自由を奪うだろう』


「そんなの出してもらえば!!」


『もしも、カプセルが外部から開かれた場合君たちの部位部分に付けたパーツが爆発し両手と両足と胴体そして顔を失うことになるよ』


「一体、お前は何がしたいんだ!!」


「俺たちを出せよ!!」


『私はただこの世界ゲームで死にゆく人の様を見てみたいだけなのだよ』


男は悪魔の笑みを仮面からこぼした。


『さぁ、デスゲームの開幕だ』


男は完全にこの世界から消えた。今頃現実世界でニュースになっている頃だろう。


静寂が一瞬訪れる。瞬間、誰かの叫び声が聞こえる。すると怒声・悲声・絶声が一気に上がりそれは混声となる。


俺は静かに塔から出る。


そして、暗黒な夜空を眺める。心が曇っているせいか一層暗黒に見えた。


現在の時間


2885年。7月23日。9時34分55秒。


VRMMORPG≪モンスターハンター≫はデスゲームとなった。

開幕のデスゲーム

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