第4話
深夜テンション
言わずと知れた状態異常(バッドステータス)の代表格である。おそらくほとんどの人が経験した事があるだろう。
僕は寮生活なのだが、中学、高校の寮生活と言うのは大学生のそれとは一線を画す。
まず第一に寮がある中高というのは基本的に進学校やスポーツの強豪校などで規則が厳しいのである。
よく漫画やラノベにあるような自由な寮というのはほぼ存在しないと言っても過言ではないと思う。少なくとも僕は見た事も聞いた事もない。下宿は別物だ。
規則の厳しい寮では当然テレビやパソコン、ゲームなんかが持ち込めるはずもなく寮監に発見されれば即座に没収され親に連絡されるのである。
そう、遊びたい盛りの中高生にとってそこはまさに監獄と呼ぶのにふさわしい場所なのである。
そんな場所で溜まった鬱憤はどうするのか?寮監にバレずに行動を起こせる時間が深夜である。
ある程度の時間までは寮監が徘徊しているのだが、寮監とてゾンビではなく生きている人間なのだ。当然睡眠が必要である。
寮監室の明かりが消えた時、その瞬間から祭りである。始めから深夜テンション、始めからクライマックスである。
他の部屋に遊びに行くのは序の口で、やめておけば良いのに肝試し(目標は寮監室、オバケより恐い寮監を相手にする)をしたり、他の棟まで特殊部隊のごとく行軍したりとやりたい放題だった。
とにかくやっているときは楽しくて楽しくて止められないのである。
度が過ぎて寮監に発見され寮監室の前で正座をさせられゲンコツと罰掃除をもらったときに「あぁ、なんでこんな事したんだろう…」と思うまでは。
つまり僕が何が言いたいのかと言うと「この台本明らかに深夜テンションで作っただろっ!!!」って事だ。
この台本、表紙をめくってから数ページは世界観について延々と書かれていた。そう、ドッキリでここまで設定を凝る必要があるの!?と驚いて斜め読みじゃなくて割とまじめに読んでしまったくらいなのだ。
が、問題はその次である。
台本の一部を見ていただこう
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召還の間にて 勇者召還される
巫女「アドリブ」
勇者「アドリブ」
舞台変更
謁見の間にて 王と謁見する
王「アドリブ」
勇者「アドリブ」
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ご覧いただけただろうか?
説明するのが面倒くさくなるほどビッチリと書かれた設定に比べての内容の薄さである。
騙される側の僕の台詞が「アドリブ」なのは理解できる。台本を知らない僕が台本どおりの台詞をいえる訳がないのだから。
しかし、他の役まですべて台詞がアドリブっていうのはどういう事なんだ!?
演劇とか最後にやったのは幼稚園のお遊戯会の主役以来だから全然詳しくないけどこれは違うってわかるぞ?
どう好意的に受け止めても深夜テンションに任せて設定を細かくしすぎて途中で力つきたようにしか見えない。
それともアレか?僕を騙そうとする奴らは皆プロの役者なのか!?
落ち着け、落ち着くんだ!
台詞がアドリブで固定と言う事はつまりテンプレで進めれば良いってことだな?
そういう事にしておこう、テンプレはそれが効果的だからテンプレになるんだ。
さて、僕はどうやら勇者らしいからそれっぽい格好しなきゃいけないよな。
召還だからこのままブレザーでも良いのかもしれないけど、そんなの面白くないからな。
僕だって金がかかった鎧とか着てみたいんだよね。
よし、じゃ、道具は勇者っぽい装備頼むか。
「すいませーん、僕でも着れるような軽い鎧と剣、後勇者っぽい道具下さい」




