雨と夢
三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅうご。
窓の外には曇り空が広がる。
今にも雨が降り出しそうな。
少し鼻を動かせば、ほんのりと雨の匂いがする。
「……」
帰宅の時間までは何とか耐えて欲しかったが。
そういうわけにもいかないらしい。
天気予報はあてになるようであてにならない。
「……」
最悪、下校時間だけでも止んでくれていればいい。
合羽を着るのは嫌いなのだ。
暑いし、結局スカートは濡れるし、なんだかんだ靴も濡れるし。
めくれて太ももの部分まで濡れることだってある。風が強いと特に。
「……」
視界は悪くなるし。
自転車はなんだか重くなるし。
鞄は袋に入れても濡れるし。
「……、」
止まらぬ文句が頭の中を埋め尽くし始めたころ。
窓に小さな水滴が落ちてきた。
雨音はしないけれど、それは少しずつ増えていく。
「……」
徐々に雨音が響きだす。
ただでさえ聞こえない教師の声が、遠くなる。
ついにはザーザーとノイズのように響きだし、声は聞こえない。
「……」
もっと大きな声で話してほしいものだ。
そんなんだから、生徒はすぐに船をこぎ出すのに。
ロングホームルームでさえ眠くなるってどういうことだろう。
「……」
担任の教師が教壇でやっていることは、明日から始まるゴールデンウィークについての話。
その間に出ている宿題とか、プラスで出されるやることとか。
一応、3年生なので、それなりにやることはあるのだ。
「……」
今は、連休明けに提出する、進路についての紙。
進路希望調査だ。
第三希望まで出してきてくれという事らしい。
「……」
夢だとか、なりたい仕事だとか。
そんなものがはっきりしている人は、それに向けての進学ないし就職ないし。
選択肢はそれなりにあるんだろう。
某野球選手は、二刀流という夢を叶え、世界中から注目されるようになったように。
はっきりとした夢をひとつ持ち、それに向かってどう努力していくべきか、どう道を進んでいくべきか、どう、生きていくべきか。
そんなものがはっきりしている学生が、果たしてここに居るのかどうか。
「……」
私には無いだけで、皆にはあるのかもしれないけれど。
大抵、夢なんて、あってないようなものだろう。
そりゃ、幼いころにはたくさんあったかもしれないけれど。
中途半端に社会を知ってしまえるこのご時世に、夢見がちなんて……。
「……」
まぁ、大抵の生徒は。
進学するか、就職するにしても公務員だろう。
田舎だし、選択肢は限られているし、県外に出るのがそう簡単に出来る人ばかりではないだろう。
「……」
あの子とは。
なんか、あまりそういう話はしない。
未来の話をするのが、あまり好きではないから。
「……」
でも確か、どこの大学に行きたいかは言っていた。
やりたい仕事があるのだとも言っていた。
夢という感じではない、もっとはっきりとした目的目標として。
それが県外で、あの子のどちらかの祖父母の家がその辺りにあると言っていた。
「……」
だから私は。
一緒に過ごせるのは今年が最後だと思っている。
連絡を取り合うくらいはするかもしれないけど、今でさえそんなに頻繁にはしないんだから。
「……」
もうすぐ授業が終わる。
放課後あの子の教室に行こう。
お題:二刀流・夢・太もも




