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三題噺もどき5

雨と夢

作者: 狐彪
掲載日:2026/05/01

三題噺もどき―はっぴゃくろくじゅうご。

 




 窓の外には曇り空が広がる。

 今にも雨が降り出しそうな。

 少し鼻を動かせば、ほんのりと雨の匂いがする。

「……」

 帰宅の時間までは何とか耐えて欲しかったが。

 そういうわけにもいかないらしい。

 天気予報はあてになるようであてにならない。

「……」

 最悪、下校時間だけでも止んでくれていればいい。

 合羽を着るのは嫌いなのだ。

 暑いし、結局スカートは濡れるし、なんだかんだ靴も濡れるし。

 めくれて太ももの部分まで濡れることだってある。風が強いと特に。

「……」

 視界は悪くなるし。

 自転車はなんだか重くなるし。

 鞄は袋に入れても濡れるし。

「……、」

 止まらぬ文句が頭の中を埋め尽くし始めたころ。

 窓に小さな水滴が落ちてきた。

 雨音はしないけれど、それは少しずつ増えていく。

「……」

 徐々に雨音が響きだす。

 ただでさえ聞こえない教師の声が、遠くなる。

 ついにはザーザーとノイズのように響きだし、声は聞こえない。

「……」

 もっと大きな声で話してほしいものだ。

 そんなんだから、生徒はすぐに船をこぎ出すのに。

 ロングホームルームでさえ眠くなるってどういうことだろう。

「……」

 担任の教師が教壇でやっていることは、明日から始まるゴールデンウィークについての話。

 その間に出ている宿題とか、プラスで出されるやることとか。

 一応、3年生なので、それなりにやることはあるのだ。

「……」

 今は、連休明けに提出する、進路についての紙。

 進路希望調査だ。

 第三希望まで出してきてくれという事らしい。

「……」

 夢だとか、なりたい仕事だとか。

 そんなものがはっきりしている人は、それに向けての進学ないし就職ないし。

 選択肢はそれなりにあるんだろう。

 某野球選手は、二刀流という夢を叶え、世界中から注目されるようになったように。

 はっきりとした夢をひとつ持ち、それに向かってどう努力していくべきか、どう道を進んでいくべきか、どう、生きていくべきか。

 そんなものがはっきりしている学生が、果たしてここに居るのかどうか。

「……」

 私には無いだけで、皆にはあるのかもしれないけれど。

 大抵、夢なんて、あってないようなものだろう。

 そりゃ、幼いころにはたくさんあったかもしれないけれど。

 中途半端に社会を知ってしまえるこのご時世に、夢見がちなんて……。

「……」

 まぁ、大抵の生徒は。

 進学するか、就職するにしても公務員だろう。

 田舎だし、選択肢は限られているし、県外に出るのがそう簡単に出来る人ばかりではないだろう。

「……」

 あの子とは。

 なんか、あまりそういう話はしない。

 未来の話をするのが、あまり好きではないから。

「……」

 でも確か、どこの大学に行きたいかは言っていた。

 やりたい仕事があるのだとも言っていた。

 夢という感じではない、もっとはっきりとした目的目標として。

 それが県外で、あの子のどちらかの祖父母の家がその辺りにあると言っていた。

「……」

 だから私は。

 一緒に過ごせるのは今年が最後だと思っている。

 連絡を取り合うくらいはするかもしれないけど、今でさえそんなに頻繁にはしないんだから。

「……」

 もうすぐ授業が終わる。

 放課後あの子の教室に行こう。











 お題:二刀流・夢・太もも

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