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午前二時~三時にかけ

作者: 羽田恭
掲載日:2026/03/01

午前二時

産まれそうで産まれない子牛を親牛の産道から引っ張る

予定日より一週間半過ぎ、難産の恐れがある中

社長も誰も彼も寝ていて、対応できるのは自分一人だ


両前足が出て、鼻先も見えてきた

ただ親牛が立ち上がったまま、座ってくれない

足を引き、顔が出てくる

粘液でぬめる子牛を抱きしめつつ

着ている服は容赦なく汚れる


かけっぱなしのラブソングが流れてくる

きれいにデコレーションされた言葉は

下手したら子牛が死ぬこの状況下

どこまでも空虚だ


社長も皆、眠りこける夜中

子牛は外に出たり、親牛の内へ戻ったり

親牛の力みに応じて外気に触れる

それに合わせて、抱きしめこっちに引き寄せる

舌が動き、目が見えている

親牛は立ったままあ

子牛の事を考えていない

子牛を地面に叩きつけないよう

なおも子牛を抱く

今の有様はバケツでかけられたようなローションまみれで

ラブソングの中では恋人同士が抱きしめあっていた


一旦、子牛を腹まで出して止める

飲んだ羊水を吐かせるため

産道の収縮で締め付ける

ドロリと吐いたのを見て

再び引く

大量の液体共に流れ出た

倒れそうに放しそうになりながら、地面に横たえる

顔を上げ息を吸った

安産だ


子牛を専用ヒーターがきいたハッチへ運び

諸々がようやく終わった


あの子牛はオスだった

死にたいと言葉を弄ぶ人がいる中で

二年後には食肉になっている牛のために真夜中に一人戦う奴もいる


証明を消し

家路へつく

一向に流れ続けるラブソングは

寝ている牛の耳に入り

何かを結実することなく

虚無に消え続けている


下手したらあの子牛は死んでいたかもしれない事を

ラブソングは伝えもしない


今、午前三時

一時間後、仕事が始まる


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