戦場の上から真実を暴露する
私は森にひっそりと住む魔女シーラ。
昔の私は遠い国の王城で魔女をしていたけど、魔女嫌いの貴族の罠に嵌って冤罪を被せられ、国を追放された。
次にたどり着いたのは、薬師が少ない国。
魔女として薬作りは得意だったので、薬師として貢献していた。
けれど、私の薬の効果が高すぎたようで、他の薬師のやっかみを受けて、これまた冤罪を被せられて追放された。
そうして国々を転々としているうちに、人間関係に疲れてしまった私は、誰も来ないであろう森の中で生きることにした。
森には豊富な食料も、優しい隣人である妖精や精霊、聖獣たちもいて、穏やかな生活を送ることができた。
人間の中で暮らすより、こっちの方がわたしにはあっているのかもしれない。
森のなかで隠居生活を満喫して、気がついたら200年ほど経っていた。
私は魔女の中でも魔力が多く、老化がとても遅いのだ。
たぶん殺されなければ、寿命で死ぬことがないくらい魔力が多い。
時々、情報を仕入れに人間の街に降りることがある。
降りるたびに、人間の世界はどんどん様変わりしていた。
世間知らずの魔女には、到底、追いつけなかった。
人間の街に降りた日は、本当に疲れる。
情報が溢れすぎて、何が本当で何が嘘なのかわからない。
人間は、面白おかしく話を変える生き物だから。
こんなことなら、精霊や妖精に聞いた方が、正確な答えをくれるだろう。
そんな穏やかな毎日を、突如として壊された。
いつものように昼食を作っていると、数人の妖精たちが飛び込んできた。
〈大変、たいへ〜ん!〉
〈僕たちの森が、壊される〜!〉
〈燃やされる〜〉
〈助けて、シーラ!〉
「待って、待って、順番に話して。何で森が壊されるの?」
〈人間がこの森の資源を狙ってる!〉
〈俺たちの森だ〜って、二つの国が森の入り口で争ってる!〉
やっぱり人間ってやつは、碌なことをしない。
この森は一種の聖域。
妖精や精霊、聖獣が暮らす聖域だ。
私は幸いみんなに認められてるけど、人間が好き勝手にしていい場所じゃない。
それに妖精たちが困っているなら、私が何とかしよう。
物理的に。
あと、できれば精神的にも。
妖精や精霊たちに、二つの国の情報を急いで集めてもらった。
妖精たちの案内の元、空を飛んで現場に向う。
徐々に聞こえてくる金属音と、木々の焼け焦げる匂い。
何してくれとんねん。
思わず、方言が出てしまうほどだ。
私は戦場の上で停止すると、容赦なく、氷の雨を降らせた。
ついでに消火ができるので、一石二鳥。
「何者だ!?」
生き残った兵士たちは、上空にいる私を見た。
「私はこの森を守護する魔女。勝手は許さない。今引くなら、これで見逃してやろう。」
「ふざけるな!」
「殺せー!」
一斉に魔法が放たれるが、全ての魔法を腕の一振りで無効化する。
残念だ。
これで引けば、恥をかかずに済んだのに。
国の名誉なんて、地に堕ちろ。
中継地点を置き、二ヶ国に映像と声を届けた。
「ワンド国王は国民のためではなく、密かに囲っている愛妾のために、この森を手に入れようとしている。税金は愛妾に注ぎ込み、民の生活を圧迫している。」
戦場は静まり返った。
「まともな王妃は国王に幽閉され、まともな貴族は冤罪で処分された。徴兵により働き手を失った小さな村は、女子どもが餓死している。だが国は何もしない。税金を上げるだけ。こんなところで、遊んでいていいのか?もしかしたらお前たちの家族も、死んでいるかもな?」
『そんな……』
『嘘だ、嘘だ、嘘だ……』
「ラスト国の王は宰相と王妃のお人形。薬漬けで正気を保っていない。宰相は自分勝手に国を動かし、王妃は国庫を食い漁る。」
『王命は嘘だったのか!?』
「まともな貴族はおらず、宰相に阿るものばかり。徴兵により働き手を失った村は、女子どもが奴隷として他国に売られている。村だけでなく、街も王都も貴族にまで、奴隷の手は伸びている。その金で、王妃と宰相は豪遊している。いいのか?帰ったら家族が消えているかもな?」
『あぁぁぁぁぁーー』
『やってらんねぇ!俺は帰る!』
『俺もだ!』
『き、貴様ら!命令違反だぞ!戻れ!』
ここに来た兵士は、大半が徴兵された平民。
こんな話を聞いたら、気が気ではないだろう。
ほとんどの兵士が逃走したため、すでに戦線は崩れていた。
指揮官の貴族だけで戦うのは、まず無理。
あいつらも、すぐに逃げだした。
遺体は、掃除屋のスライムに任せることにする。
私は精霊の力を借りて、森を再生させた。
その後逃げ帰った兵士たちは、魔女の言葉が真実だったことを知った。
徴兵された兵士も、映像を見ていた平民も、怒りに火をつけた。
二つの国では、平民とまともな貴族を中心に、叛乱が起きた。
悪事に加担していたものたちは、平民の手でなぶり殺しになった。
そして新たに、魔女と森に手を出してはいけないと言う、不文律ができたのだった。
当の魔女はというと、今日も穏やかな日常を過ごしていたのだった。




