表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

帰路、幼馴染



--・ ・--・ ・・-・- ・・・- 



「————美紅っ」



「えっ……り、律!

そんなに走ってどうし……まさか、追いかけてきてくれたの?」



「……なんで置いて行くん」



「いやー……ちょっと……歩き出したい気分でして」



「………………そう。

良かったわ、追いついて。あっつ……」



「だ、大丈夫?

見るからに暑そうだもんね、スーツって。

あ、ちょっと座る?そこのベンチにでも」



「……ん」



「ええっと……ごめんね?先に出ちゃって。

あれ、タクマくんは?」



「別で帰ってもらった」



「そうなんだ……悪いことしちゃった」



「…………結局、泣かんかったな」



「え。あ……うん。

ちゃんと"お祝いの気持ち"だけ、持ち込んだから」



「…………答えは、出んかった?」



「いや…………多分、出てる。

まだ、まとまってナイんだけど……」



「じゃあ……まだ話せない?」



「うーん…………そうだな…………。

いや、思い切って話してみるか。

まぁ……律さえ良ければ、だけど」



「…………うん。聞きたい。

ゆっくりで、いいから」



「あ。その代わり、文句禁止ね?

『オチがない』とか言わないでよ?」



「言わんわ。関西人じゃないし、俺。

てか関西人だって、いつでもオチ求めてるわけやないし」



「ふふ、それなら良かった。

………………あのね。

朱音ちゃんがさ……余興で、"圭くんの好きな所"を聞かれて、何個か挙げてたじゃない?」



「うん」



「それでね……。

『すぐに拗ねる所と、喧嘩してもすぐに折れちゃう所も好き』って言ってるの聞いた時……

……結構、ショックだったんだ。

圭くんが拗ねてる姿なんて、見たこともないし。

喧嘩するだなんて……想像もできなかった」



「あー……年上ぶってカッコつけたがるからなぁ、圭兄は」



「……ほんとはね、朱音ちゃんにしか見せない顔があること、気付いてたの。

……でも、知らないフリを続けてたんだ、私。

多分、どうしても……"圭くんに恋する自分"を守りたかったんだと思う」



「え」



「一番ツラかった時期を、圭くんが好きって想うことで乗り切れたからさぁ……。

私じゃダメなんだって、気付いちゃったら……

この恋を失っちゃったら、また心の支えが無くなる気がして……」



「………………」



「……うん。やっぱり、答えは出てたな。

こんな拙い、身勝手な恋とは……もうサヨナラするっ」



「…………そっか」



「……ねぇ、律。

これが正しい恋だったのか、わからないんだけどさ。

"圭くんが好き"って気持ちは、本物だったって……思っていいかなぁ」



「……え?」



「私ね……圭くんの、優しい瞳が好きだよ。

周りをよく見てくれて、思いやりの深いところも。

"美紅ちゃん"って呼ぶ、暖かい声も好、きで…………

頼りになる……大きな手……も。

た……たまに悪戯っぽく笑うと、ころ……も……

………あれ?よく考えたら、いつも、横顔ばっかり……見てたなぁ……。

結局、最後まで、届けられなかったけど…………。

たくさん、幸せ……もらったなぁ……わたし………っ」



「………………美紅」



「っ………ご、ごめん。

おかしいなぁ…………今まで、我慢できてたのに」



「いや………………美紅は、すごいよ」



「え……………………そう?」



「うん。

ここまで弱音も吐かずに、一人で決断してさ。

俺なんかより、ずっと強くて……ほんま、すごい。

美紅の気持ちが本物ってこと、俺が保証するよ」



「へへ…………………嬉しい。ありがと。

でも……私、一人じゃ無理だったよ?」



「え?」



「律がいてくれたから……

律が、否定せずに聞いてくれたから。

どんな答えでも、受け止めてくれるから。

ここまで向き合うことが出来たんだよ」



「え……」



「律のいない4年間、

『なーんか足りないな』ってずっと思ってたの。

きっと私にとって……

圭くんが好きって気持ちと同じくらい、

律とたわいもない話してる時間が、大切なんだろうね」



「……………………」



「だから……これからもよろしく、なんてね。えへへ」



「……………………」



「あ…………流石に調子乗りすぎ?」




「————よしっ」




「え、何?怒った?」



「俺も、やめよ」



「え……何を?」




「……"大事にしまっておくだけ"にすること」




「へ?……どういうこと?」



「それは………………今はまだ内緒」



「ええ?まさかの説明なし??」



「そんなことよりさぁ、行きたい所ない?」



「え。い、今から?」



「いや、今度。再来週とか。2人で」



「ええ……いつものカラオケとか?」



「いや、そんなんやなくて……もっとあるやん」



「え……ど、どうしたの?なんか急に変だよ、律」



「リクエストないならさぁ……。

俺、美紅と動物園行きたい」



「ど…………どうぶつえん…………?」



「うん…………あかん?」



「いや……別に、いいけど…………」



「ほな、再来週。空けといてな。帰ろ」



「え。う、うん…………。

…………どうしたんだろ、突然。

見たくなったのかなぁ……パンダ…………」



——————→→・→←——————


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ