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居酒屋、幼馴染。



--・ ・--・ ・・-・- ・・・- 



「だめだ…………好きすぎる〜〜〜〜〜!」



「え。なに、突然。照れるやん」



「…………なんで、(りつ)が照れんのよ」



「"美紅(みく)"が、"俺に"、"愛"を告白したから」



「はい残念。"真ん中"だけ間違ってマス」



「あ、[俺"へ"]ってこと?厳しーね」



「チガウ。助詞の問題じゃない」



「そら残念」



「いや、絶対思ってないじゃん。

もー。何の生産性もないこと言うのやめてよ。

お互いにとってさ」



「……ほんま、酷い奴やなぁ」



「はい?なんで私が責められてんの。

ワケ分かんないこと言う律が悪いんじゃん。

ご存知でナイなら、改めてお伝えしましょうか」



「いいえ。マジで結構です」



「そんなそんなー、遠慮なさらずに。

私のお慕いしている殿方はねぇ…………」



「……………………」



(アンタ)……のお兄ちゃんの(けい)くん(27)だよ♡

あ、"好きピ"ってやつ?」



「…………もうええわ。何億回聞けばええねん」



「わー。見事に"聞き飽きた"って顔。悲しいなぁ」



「いつまでも『圭兄(けいにい)、圭兄』って定型文から、アップデートされへんからやで。

定期メンテ、足りてないんとちゃう?」



「いやいや。ちゃんと持続可能だもん。SDGsだよ」



「言いたいだけやろ、それ。

あ、美紅。もうそろ、グラス空くやん。

どーする?俺、生おかわりするけど」



「揚げ芋食べたい」



「ドリンクちゃうんかい」



「む。文句言うなら私がやる。

タッチパネルを貸したまえ」



「はい残念。もう注文済」



「え、早。ありがと」



「どーいたしまして」



「うーん。

やっぱり律さぁ、昔と比べて(たくま)しくなったよね」



「え、そう?

多少は筋肉ついたけど。まだまだヒョロない?」



「いや、体型の話じゃなくて。内面ね。

幼少期の頃は、泣き虫だったじゃん?」



「いつの話やねん」



「えー?あ。思えば、"あの時"もそうだったよね。

小学校あがりたての時のさぁ……覚えてるでしょ?」



「………………忘れた」



「えぇー??

ほら、私たち3人だけで海まで行ってさ。

海岸で探し物……を…………あれ。

よく考えたら、あの時なにを必死に探してたんだっけ」



「……………………」



「まぁ、とにかく。

"何か"を探してた時にさ、私が盛大にコケちゃって。

その時……ナゼか私じゃなくて、律が泣いたんだよね〜。

膝から流れた血が、コワかったのかなぁ」



「…………………………」



「そ・し・て!

そんな律の隣で、圭くんは柔らかく微笑んで……。

痛みを(こら)える私に、"オマジナイ"をかけてくれたのデス……!

『痛くなーい・痛くなーい、忘れちゃえ〜』って!!」



「……まーじで無責任なマジナイよな。

俺も言われたことあるけど、全然痛かったもん」



「あは。ユルユルだよね。

それでもなんか、その言葉と表情でさ、

フワァっと……優しい風が、心を吹き抜けるような感覚がしたんだよなー。

それから私は、圭くんのトリコなのっ」



「ハイハイ、さいですか……」



「いやー。圭くんってば。

昔から、優しくて思いやりのある人だったけど……

まさか"お医者さん"になるとは思わなかったよ。

はっ。今や、この町のミンナにオマジナイをかけているということね……?!素敵……!」



「"歯医者"やけどな」



「あ、きーてよ!今日の定期検診でさぁ。

圭くんに『美紅ちゃんの覚悟が決まったら……一緒に親知らずを抜こう』って言われたの!!」



「嬉しいか?ソレ」



「私の覚悟を待ってくれる圭くん、優しい。

口内見られる恥を超えて、さすがに愛」



「救えんな、もう」



「これが、"沼"……か…………」



「…………なぁ。その話、いつ終わる?」



「えー。まだ序章の中盤だよ」



「こっちはもう、

開幕からお腹いっぱいやて言うてまんねん」



「ま……"まんねん"…………???

いやー……律。流石にそれはエセっぽくない?

THE 関東生まれ・関東育ちでも分かるレベル」



「……うるさ」



「うーん。やっぱり、

たった4年間留学したくらいじゃあ、マスター出来ないってことかぁ」



「いや俺、関西弁学びに大阪の大学行ってたわけじゃないから……ん?留学?」



「まだまだ違和感しかないよ。関西弁の律」



「聞き慣れてへんだけやろ」



「もうそろさぁ、律と"タクマくん"が関東帰ってきてから1ヶ月経つよね。早いなー。

みんなと再会できた?」



「まぁ、ぼちぼち」



「あ、そうそう。

大事なこと聞き忘れてたんだけど」



「大事なこと?何?」



「律さぁ………大阪の大学、受かった時……」



「うん?…………あ」



「『就職も関西(向こう)でする』って言ってたよね???」



「き…………………気のせいやろ」



「いやいや。気のせいなんかじゃないよ。

だって、それ聞いた時……結構寂しかったもん」



「え」



「でさ……ちょっと聞きにくいんだけど……。

律が関東(コッチ)帰ってきたのって、

もしかして……さ………………」



「え、え……」



「えっと……その………」



「ちがっ……べ、別に美紅のためじゃ——」



「——落ちちゃったの?」



「………………へ?」



「行きたかった会社(トコ)



「………………………ちゃうわ。失礼な」



「え。じゃあ、なんで?」



「……なんでもええやろ」



「え、アヤシイ。そんな隠さなきゃいけない理由??」



「違う。"気が変わった"。それだけ」



「えー。絶対ウソでしょ?本当は?」



「…………」



「あ、言う気ないな。これは」



「おー。珍しくカシコイやん、美紅ちゃん」



「うわ、むかつく。

……まぁ、いいや。

とにかく、戻ってきてくれて嬉しいよ」



「…………そう?」



「うん。だって……

律以上に私の話聞いてくれる人、いないもん」



「………………"圭兄の話を"、やろ」



「えへ。ウン。それもある」



「……ほんま、良い性格してるよなぁ」



「ねぇ。遅くなったけどさぁ」



「んー?」



「おかえり、律」



「……………………ただいま」



——————→→→→←——————


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