魔王との食事
私はマオウに呼ばれて奥の部屋へと通された。
そこは綺麗なダイニングといった場所だろうか、たくさんの料理らしいものが並んだテーブルがあり、燭台には火の灯ったロウソクが立っていた。
「口に合わなければ言ってくれ」
そう言うと、マオウは私の対面に座り、食事を始めた。
私も椅子に座ると、ナイフとフォークを手に取り、料理を眺めた。
「いただきます」
見た目でわかる料理がない。
何とも形容しがたいそれらを目の前に、とりあえず手前から手をつけ始めた。
エビチリ、餃子、油淋鶏、レバニラ、春巻き。
うん、めっちゃ中華!
見た目は意味不明なのに、味はとても美味しい。
スパイスは控えめで、そのままで美味しく食べられる。
箸休めの新鮮な葉物野菜もある。
至れり尽くせりだ。
「美味しいです。ありがとうございます」
「そ、そうか。よかった」
マオウはホッとしたように胸をなでおろし、食事を続けた。
しばらくして食事が終わると、マオウは席を立って何かを皿に乗せて帰ってきた。
「よかったらこれも食べてくれ」
「ありがとうございます」
渡されたのは串に刺さった団子状のものに液体がかかったもの。みたらし団子に似ている。
「その細い棒は食べられないから、間違えて食べるなよ」
「わかりました」
串を手に取り、団子にかぶりつく。
うーん、みたらし団子!
めちゃくちゃみたらし団子だこれ!
美味しい。
食後のスイーツは格別だ。
「美味しいです。ありがとうございます」
「そうか、口に合うか。これは私の好物でな。嬉しいなあ」
マオウが嬉しそうにみたらし団子を食べている。
何とも不思議な光景だ。
「ふふ」
「どうした?」
「あ、いえ、何だか楽しいなあと思ったんです」
「ああ、私も楽しい」
ニコニコと笑うマオウとの初めての食事はそうして終わった。