表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/21

清潔な建物

 建物に入ると、意外にもシンプルな内装だった。

 目立った装飾品もなく、無地の赤いカーペットが敷かれており、シンプルながらに高級そうな家具が並んでいる。

 窓は大きく日の光が入ってくるような造りで、天井も高い。

 壁や床、天井の色は紫で統一されていて派手な印象だが、掃除が行き届いていて清潔さを感じる。

「すみません、突然お邪魔してしまって」

 私はやっと笑いが収まり、顔をあげて声を発した。

「いや、こっちもラブが世話になったみたいだ。気にするな」

「ラブ?」

「ああ、この子だ」

 相手はそう言うと、さっきの犬を見せてくれた。なるほど、ラブって名前なのか。

「可愛いですね」

「ありがとう。そこに座って少し待っていてくれ」

 相手はソファを指差し、奥へと歩いていった。

 私はソファに座り、ホッと息をつく。

 やっと休めた安心感からか、どっと疲れが出てきた。


 10分ほどで相手は戻ってきた。手には何かを持っている。

「これを飲んでくれ」

 手渡されたのはコップ1杯の虹色の液体。

 何か見たことがあるような。そうか、昨日の夕食の甘いデザートと同じ見た目だ。

「は、はい。いただきます」

 私は恐る恐るそれを手に取ると、口につけた。

 甘い。

 砂糖を煮詰めてシロップをかけたものを凝縮したような甘さ。

 思わず「ゴフッ」とむせた。

「大丈夫か?無理はしなくていいからな」

 優しい言葉に流されそうになるが、飲み切らないと失礼かとも思った。

「あ、いえ、だ、大丈夫です」

 深呼吸をして、一気に飲もうとした。それが失敗だった。

 甘すぎる飲み物を身体が受け付けるはずもなく、盛大にむせた。

 それはもう豪快に。

「ゲホッゴホ、ウエッ」

「お、おい一回置け」

 コップを取り上げられ、背中をさすってくれた。

 横では心配そうな顔のラブがいる。

「お前、人間じゃないのか?」

 困ったように見える顔に向かって、私は何とか微笑む。

「人間です”よ。そ”れより、こぼしてし”まってすみません。何か”拭くも”のを貸し”ていただけませんか”」

「そんなこと気にするな。それより、お前について聞かせてほしい。その前に何か欲しいものはあるか?」

「み、水をくださグフッい」

「わかった。すぐ持ってくる。動くなよ」

 慌てたように奥へと走っていったその背中に安心感を覚えたのは間違いない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ