命の危機?
「さあさあどうぞ、こちらへ」
ニコニコの隊長に連れられ、食堂のような場所へ通された。
隊長は丁寧に椅子を引き、私が座るのを待っている。
周りは男だらけで逃げられる雰囲気でもないため、とりあえず座った。
「ご馳走を用意してまいりますので、少々お待ちください」
そう言うと、隊長は部屋を出ていった。
そういえば僧侶もいない。
占い師は青い顔をして周りの男たちと一緒に立っている。
することもないので、とりあえず待つことにした。
待つこと1時間ほど。
「お待たせしました」
うやうやしく頭を下げる僧侶の後ろから、コック帽を被った男性が澄ました顔で料理の乗ったカートを押してやってきた。
1つ1つ丁寧に料理を並べていくコック。
毒でも入っているのか?と見ているが、そもそも何が何の料理なのかもわからない。
「召し上がれ」
コックがナイフとフォークを差し出してくる。
周りの視線に耐えられず、とりあえず受け取った。
スパイスのよく効いた香りがする。
お腹の虫が鳴った。そういえば会社から帰る途中だったもんなあ。
「料理が冷めないうちにさあ!ほら!」
コックの後ろにいた僧侶が、目を大きく見開いて怒鳴ってきた。
「はあ」
私は思い切って目の前の料理に手をつけた。
美味しい。凄く美味しい。
唐辛子やガーリックの程よい辛さとチキンのようなお肉のハーモニーがたまらない。
そういえばいつぶりだろうか、出来立ての唐揚げなんて食べたのは。
一人暮らしを始めてからもう随分経った。
その間実家に帰る余裕もほとんどなく、彼氏もおらず、友達も違う地域に就職して会っていない。
出不精な私が良いレストランへ行くはずもなく、良くて会社の飲み会で、普段はコンビニ飯かお惣菜、レトルト食品ばっかりだ。
不健康な食生活だなあと思いながら、気がついたらかなり食べ進めていた。
何だか妙に甘い料理だけは避けたが、結局ほとんど食べてしまった。
「如何でしたか」
近づいてきたコックに問われ「美味しかったです」と返すと妙な顔をしていた。
ふと周りを見ると、誰もいなかった。
「お疲れでしょう」
コックは1つの部屋へと案内してくれた。
シンプルな家具が一式揃ったアパートの一室のような場所で、正直今の私の部屋より綺麗で広かった。
「それでは」
とコックは出ていった。
「疲れたなあ」
伸びをした後、さっさとお風呂に入って、歯磨きをし、ベッドへ潜った。フッカフカの布団が気持ちいい。
最初の待遇が嘘のように、今はいい気分だ。
「おやすみ」
誰もいない部屋で独り言ちると、そのまま安眠した。