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お出迎え

 マオウの家に帰ると、ラブがキュンキュン言いながら出迎えてくれた。

「こんな声は初めて聞くな」

 考えている様子のマオウを横目に、私はラブを撫でた。

「きっと寂しかったんですよ。マオウさんってあんまり家を空けることって無いんじゃないですか?」

「そうなのか。寂しかったのか。すまなかった」

 マオウもラブを撫でた。

 ラブはやっと落ち着いたのか、いつも通りの様子に戻った。

「家を空けることは確かにほとんど無いな。ずっと家の中だ」

 表情の読み取れないマオウの顔から何とか表情を読み取ろうと、私は顔を覗き込む。

「ど、どうした凛」

「お出かけはどうでしたか?」

 そう聞くと、マオウはプッと吹き出した。

「何で笑うんですか!?」

「い、いや、凛がラブと同じ表情をしていて、つい、な。お出かけは楽しかったぞ。今度はラブも一緒に行こうな」

 マオウはラブを抱き上げて家の中へと入っていった。

 私もマオウに続いて家の中へ入った。

 それにしても、私ってそんなに悲しそうな顔をしていたのだろうか?


「座って少し待っていてくれ」

 いつも通り、食事はマオウが用意してくれる。

 今日は何だろうか。

 ラブも口を開けてご飯を待っている。

 しばらくして、料理が机に並べられた。

 今日も見た目では何かわからない。

 でも今日のは汁物がある。中には麺が入っている。

「マオウさん、お箸ってありますか?」

「おはし?どういうものだ?」

「こう、細長い棒が2本セットになっている食器です」

 マオウは考えを巡らせている。

「あー、あったな、そんなの。ちょっと待っていてくれ」

 マオウはすぐにそれを持ってきてくれた。

「これで合っているか」

「合っています。ありがとうございます」

 マオウから渡されたのは、紛れもなくお箸だった。

 汁物に入った麺ならラーメンかそば、うどん辺りだろう。

 それならお箸で食べたい。

 スープスパゲティならちょっと違うってなりそうだが。


「いただきます」

 食事の支度が終わり、全員が席に着いたところで食べ始めた。

 うん、やっぱりラーメンだ。

 あっさりした醤油ラーメンに胡椒が効いている。

 他の料理は、シナチク、チャーシュー、焼き海苔、餃子、チャーハン。

 餃子とチャーハン以外はラーメンに乗せてほしかった。

 でも美味しいからいいか。


 もぐもぐと食べていると、マオウからの視線を感じた。

 ふと見ると、マオウは私の手元を見ているようだ。

「マオウさんどうされました?」

「いや、器用に食べるなと思ってな。そうか、それはそう使うものなのか」

 どうやらお箸に感心していたようだ。

 家にあるのに1回も使ったことがないのだろうか。

「マオウさんはお箸を使ったことないんですか?」

「ああ。使ってみようとしたことはあるんだが、何に使うものなのかわからなかったんだ。たまに来る人間も使っている様子はなくてな。家にあって食器スペースにあるのに使い方がわからなくて、少しもやもやしていたから助かる」

 どうやら役に立てたようだ。

 食事をしていただけなのに不思議なものだ。


「私も使ってみようかな」

 そう言うなり、マオウは自分の分のお箸を持ってきて握ってみせた。

 お箸をグーで握ったまま、ラーメンを食べようとして食べられていない。

 どこからツッコめばいいのだろうか。

「マオウさん、お箸の使い方違います」

「そうみたいだな。これじゃ食べられない」

 シュンとした様子のマオウが少し可愛い。

「こうです、こう。ペンを持つように1本持ってもらって」

「ペン?何だそれは」

「んー、お箸は今度にしましょう。料理が冷めちゃいますよ」

「そうか、そうだな」

 マオウは諦めたようにフォークで食べ進めた。

 今度お箸の使い方を教えてあげよう。

 家にあるなら、ペンの使い方も。

 少しの優越感を感じつつ、その日の食事を終えたのだった。




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