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お出かけ

「そうだ」

 私は手をポンッと叩いた。

「お出かけするってことがよくわからないんですよね?」

「あ、ああ」

 マオウはキョトンとしている。

「じゃあ実際にお出かけしてみましょう。こういうのは経験です」

 にっこりと笑って言うと、マオウは驚いた表情をしている。

「で、でもそれは付き合ってからするものではないのか?」

「付き合ってなくてもできますよ。心配ならラブも連れて行きましょう」

 ふむ、とマオウは考え込んでいる。

「そう言ったって出かける場所なんてここには無いぞ。広い森が伸びているだけだ」

「森でいいんです。まだこの森のことをよく知りませんから、是非案内してもらいたいですし」

「でも凛、ここへ来た時体調を崩していたじゃないか。平気なのか?」

 あー、と私は首を傾げた。

「あれは長時間歩いて疲れていただけです。ご飯も食べていなかったし。だから今は大丈夫です」

「そうか、それならまあ、いいだろう」

 そう言うとマオウは立って玄関へと向かった。

「ラブは散歩の後で疲れている。2人で森へ入ろうか」

「はい!」

 私はマオウの後を追って森へと足を踏み入れた。


 森は初めに入った時と同じくスパイシーな香りが漂っている。

「マオウさん。この独特の森の香りはどこから来ているんですか?」

 そう問うと、マオウはうーんと考え込んでいる。

「気にしたこともなかったな。魔物が住む森は大体こういう臭いがする。魔王が住む場所は特に臭いがキツい場所が割り当てられるんだ。体調は大丈夫か?」

「問題ないですよ。じゃあ特定の木の実とかの香りじゃないってことですかね」

「ああ、そうだな。土地自体の臭いかもしれん」

 なるほどなあと納得した。

 そして人間にはスパイシーな香りは毒になると言っていたから、魔王を倒す!となるとこの匂いへの対策が必要なのだろう。

 もう討伐とか諦めて住み分けすればいいのに。

「あ、これ綺麗ですよね」

 私が木に生っている宝石のような物を指差すと、マオウは「ああ」と頷いた。

「この木がたくさん生えている場所に最初に入った時、幻想的な風景だなと思ったんです。ラブと出会ったのもその近辺でした」

「ラブもこの木が好きだな。木を軽く揺らすとシャラシャラと音がして、それも中々良いぞ」

 そう言うとマオウは木を軽く揺らしてみせた。

 1本の木が揺れると、それに呼応するように周りの木もシャラシャラと音を立て始めた。陽の光を浴びた宝石がキラキラと輝きながら揺れる様にうっとりとする。

「こんな景色初めて見ます。綺麗」

「そうか、気に入ったか」

 マオウは微笑んでいるように見えた。

 相変わらず表情が読み取りにくい。

 顔の構造が違うとこういう時に不便だ。

「もっと奥へ進むと、もっと大きな実が生っている。行ってみるか?」

「はい!」

 マオウの勧めで私は森の奥へと進んでいった。





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